私立恵比寿中学、メジャーデビュー10周年に寄せて パフォーマンスを向上させることで前に進んできたグループの歩み
安本が復帰を飾った、YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』での「なないろ」の歌唱も実にすばらしかった。安本が279日ぶりにメディアに姿をあらわしただけでも、十分に私たちは感無量の気持ちになれたはず。しかしこの映像の真の良さは、前述したように、安本の居場所をメンバーがさらに大きいものへと作り変えたことをパフォーマンスで証明した点だった。エビ中はどんな困難に直面しても、パフォーマンスを向上させることで前に進んできたのだ。
2020年夏頃からは、TikTokで「仮契約のシンデレラ」(2012年)がバズった。アイドル界ではトップの人気を誇り、また元メンバーの廣田あいかはグループ在籍時からテレビなどでも活躍していたが、エビ中の楽曲がアイドルファン以外の層にまで届いたのはほぼ初めてのことだった。そのことについて真山に話を聞くと、「楽曲の制作意図とはまったく違う捉え方で流行って、びっくりしました。ずっと歌ってきた曲ですけど『そういう解釈があるのか』と嬉しくなりました」(※3)と想定外のヒットに驚いたという。
2021年には小久保柚乃、風見和香、桜木心菜の3名を新しいメンバーとして迎え入れ、同年8月には9人体制初の楽曲「イヤフォン・ライオット」を発表。こちらもストリーミングで1600万回再生を超える大ヒットを記録した。ただこれらのブレイクも、エビ中が立ち止まることなくここまでやってきたひとつの成果ではないだろうか。
3月に筆者は星名、小久保を取材した。そこで星名はここまでの活動について、「山あり谷ありのグループですし、私にとってはエビ中=人生になっていますから」と語っていた(※4)。そういった感情は、きっとメンバーそれぞれが背負っているように思う。
エビ中の活動からは、彼女たちがそこで過ごした証をしっかりと感じさせる。だからこそ、今までも、そしてこれからも「永遠」に愛され続ける理由なのかもしれない。
※1 https://www.lmaga.jp/news/2021/03/230831/
※2、3 https://www.lmaga.jp/news/2022/04/426323/
※4 https://www.lmaga.jp/news/2022/04/426323/