第2期fripSide、南條愛乃が駆け抜けた13年間の集大成と託したバトン 涙と笑顔の入り混じったPhase2ラスト公演レポ

  “fripSide Phase2”ラストライブは20曲目「We Rise」で再加速。この時点で2時間を優に超えているものの、南條の歌声からは一切の疲れは感じられず、2日連続かつセットリストも大幅に異なる、長時間におよぶ2公演に強靭な体力と集中力で向き合っていることが窺えた。ドラマチックな「Leap of faith」を経て「infinite synthesis」へと突入すると、ライブもついに佳境へ。すると、同曲の後半でステージに見知らぬ女性2人が姿を現す。と同時に、南條が「3期の2人が来てくれました!」とアナウンスし、謎に包まれていた“fripSide Phase3”のシンガー2人がお披露目された。3人で歌い分けた「infinite synthesis」を聴いていると、この日のライブは単に南條の卒業ライブというだけではなく、この先も続いていくfripSideに対して彼女が次世代へとバトンをつなぐための通過点でもあることが理解できた。

 その後のMCでは、3期シンガーの上杉真央、阿部寿世がそれぞれ自己紹介。続いて、苦労を次の世代にさせないために、南條が手ほどきしてくれたこと、南條卒業までは2人のプロフィール公表は控えていたが、こういう機会にお披露目の場を用意したことを八木沼が明かした。そして、南條が一旦ステージを去ると、“fripSide Phase3”のデビュー曲「dawn of infinity」をライブ初披露。ツインボーカルの強みを活かした歌い分けに加え、個々のカラーや声質の違い、ユニゾンやハーモニーなど多様性に満ちたボーカルワークと、ソングライターとして円熟期に突入した八木沼のメロディラインとが相まって、この先の活躍が楽しみになる1曲だったと断言しておく。

 これまでのライブの歴史を振り返る映像に続き、「black bullet」「when chance strikes」と新旧の定番曲を連発すると、“fripSide Phase2”ラストステージはついにフィナーレへと近づく。「早いもので次のブロックで最後です」と南條が口にすると、八木沼は「次の曲、なんちゃん(南條)と俺で相談して、ここでこの曲をやろうと決めました」と語る。そして、南條が「最後まで私、走り切れますように」とつぶやくと、「Heaven is a Place on Earth」のイントロが会場に鳴り響く。ゆったりしたテンポから徐々に加速するこの曲で、フロアは青一色に染まり、一体感がさらに高まっていく。そこから矢継ぎ早に「LEVEL5-judgelight-」が繰り出されると、場内のボルテージは急加速。曲中、何度も遠くまで目線を送るなど、この光景を焼き付けようとする南條の姿が非常に印象に残ったことを付け加えておく。

 すでに3時間を超えたラストステージ、最後の1曲に選ばれたのは八木沼と南條にとって“はじまりの1曲”「only my railgun」だ。ステージ上も客席も、疲れをまったく感じさせない熱気と力強さでさらなる一体感を見せ、正真正銘のクライマックスへと到達。曲後半の落ちサビでは、南條が「心の中で一緒に歌ってください!」と呼びかける場面もあり、実際に声こそ出せないものの、その場には間違いなくオーディエンスの盛大なシンガロングが存在していた。エンディングでは「もうちょっとだけ歌わせてください!」の言葉を合図に、再びギターソロパートからリピートするサービスぶりを見せ、ラストは「最後はみんな一緒に飛びましょう!」の掛け声とともに一斉にジャンプして終了。涙と笑顔の入り混じったラストステージは、こうして幕を下ろした。

 30曲近い楽曲を3時間半にわたり歌い継いだ南條は、「こんな空気になるんだね、卒業式って」と一言。すると、八木沼から南條に向けて、「南條愛乃がfripSideに加入して、僕と一緒にスタッフやバンド、なにより皆さんがいたから13年かけてこの場所まで来ました。そして、南條愛乃さんの影なる努力と頑張りがあって、僕たちは背中を押されて今この場所に立っています。僕はあまり感傷に浸るのは好きじゃありませんが、彼女が残した功績とみんなに与えた笑顔と素晴らしい歌声は、永遠にこの世に残りますし、皆さんの心にも残ると思います第2期fripSide、駆け抜けた13年間、本当にありがとうございました。そして、なにより南條愛乃さん、不甲斐ないプロデューサーでしたが、ありがとうございました!」と労いの言葉を贈る。

 これを受けて南條も「(第2期fripSideが)始まった頃は不安でいっぱいだったし、いくら努力しても足りないと思っていたけど、自分なりに13年間頑張ってきて、こうやって卒業式を開いたらみんなが来てくれて。がむしゃらでも下手くそでも、頑張ることは自分のためにとっても良いエネルギーをもらえるし、それによって素敵なご縁もいただけて。私は業界を引退するわけじゃないので、また何かの機会に皆さんやfripSideのチームと一緒にできることがあるかもしれないし、そのときはまたこういう空気感で顔を見に来てくれるとうれしいです」と感謝を伝え、「皆さんの青春を第2期fripSideに預けてくれて、本当にありがとうございます。今、とても幸せです!」と笑みを浮かべながら“fripSide Phase2”としての活動を完了させた。

 派手な演出に頼ることなく、ストイックに歌を届けることに徹した3時間半。それは間違いなく、13年の積み重ねがあってこその説得力に満ちたものだった。この13年の経験は南條愛乃というアーティストにとって間違いなくプラスでしかないし、ここで得られたものがこの先いろんな形でソロ活動にも影響を与えていくはずだ。と同時に、第1期、第2期での20年を抱えた八木沼が、上杉真央&阿部寿世という新たな才能を迎えどこまで進化していくのかも楽しみでならない。2人のこの先が幸多からんことを祈っている。

■セットリスト
『fripSide Phase2 Final Arena Tour 2022 -infinite synthesis: endless voyage-』
2022年4月24日(日)さいたまスーパーアリーナ
01. clockwork planet
02. The end of escape
03. crossroads
04. pico scope -SACLA-
05. killing bites
06. divine criminal
07. Edge of the Universe
08. under a starlit sky
09. BLACKFOX
10. Love with You
<BAND INST 2021ver.>
11. final phase
12. dual existence
13. legendary future
14. worlds collide
15. endless voyage
16. memory of snow
17. passage
18. late in Autumn
19. Dear All
20. We Rise
21. Leap of faith
22. infinite synthesis
23. dawn of infinity
<VTR>
24. black bullet
25. when chance strikes
26. Heaven is a Place on Earth
27. LEVEL5-judgelight-
28. only my railgun

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる