AKB48「元カレです」は「根も葉もRumor」を超えるか? センター本田仁美の存在が変えたグループ全体の意識
呆れるほどダメな元カレ像
「元カレです」というタイトルもまた、その印象としてはアイドルらしからぬ“物騒”なものである。同曲の歌詞に登場する元カレは、〈最高の元カレです〉と胸を張り、元カノが現在誰と付き合っていようが関係ないと言う、一見すると自分を持っているタイプ。
ただ〈いつから付き合いはじめたんだ? 聞いてないよ〉など細かいことを気にしはじめ、〈そんな小さな器でどうする?〉とセルフツッコミをしている姿は、何だかダサくて笑えてくる(あくまで楽曲内で描かれる元カレのキャラクターがダサいだけで、曲はとても格好良い)。
そもそも〈最高の元カレです〉と自画自賛する人間ほど、自分に自信がないものである。自信や取り柄のなさを隠すために、誇張して見せてしまうのだ。そして〈そんな奴なんか イケてるわけがない〉と他人と自分を比べて、マウントをとろうとする。実際の話、そういう風に器の小ささを見せてしまう元カレは意外と多いのかもしれない。
〈あの頃の俺はわかってなかったよ〉と反省しているにも関わらず、次の瞬間〈やっぱもう一度やり直さない?〉と元サヤを希望するあたり、「今も昔もお前は何ひとつ分かっていない」と愚鈍さに呆れざるを得ない。挙句に〈殴りあって決めようか恋の着地点〉とか……少年漫画の読みすぎと思えるほど。
そういった痛々しい元カレを〈DAKARA〉の連呼で突っぱねる元カノ。何度言っても聞く耳を持たない自己中な相手に対して「だからさあ」と粘り強く説明するようにも捉えられ、「だから、何?」と一蹴しているようにも聞こえる。解釈は人それぞれだが、〈DAKARA〉というワードからはそうやっていろんな光景がふくらんでくる。
いつまで経っても「元◯◯」という呼び方に縛られていると、人は一向に前へ進めない。その一方で、周りは知らないうちにどんどん先へ行っているものである。そして、気づいたら置いてけぼりになっている。そういう意味ではいろいろと教訓的な楽曲でもある。
5月18日のリリースに向けて、これからミュージックビデオも公開されるなど、さまざまな展開があるはず。それらがどんな内容になるのか楽しみであるとともに、「元カレです」の次のアプローチが待ち遠しくなった。AKB48は今、はっきりと変わりつつある。