AKB48「元カレです」は「根も葉もRumor」を超えるか? センター本田仁美の存在が変えたグループ全体の意識

 AKB48にとって59枚目となるシングルの表題曲「元カレです」が、3月28日放送『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系) 春の4時間スペシャルで初披露された。番組では“1秒たりとも目が離せないダンスに注目”とテロップが出されていたが、まさにその通りで、ハードかつタイトなダンスに視線が釘付けとなった。

 見どころは“隙のなさ”、“ユルいところが一切ない”という点である。曲冒頭、静から動へと急激に展開し、中腰のメンバーが後方から扇を広げるように立ち上がっていく。そして足を高く蹴り上げる。ダンスアクションという言葉がふさわしく、イントロパートだけでも気持ちが高ぶった。

 以降もメンバーは目まぐるしく、そして激しく動き続ける。アイドル曲の振付によくある“曲中、フリーに動ける箇所があり、メンバーがじゃれあったり、見つめあったりする”といった定番のパターンが見られないのだ。そういった隙やユルさもアイドル曲の醍醐味であるならば、「元カレです」は明らかにそれとは一線を画しており、グループとしてネクストレベルへ向かっているように感じられた。

岡部麟「細部まで振り付け揃え、迫力を出すことにこだわった」

 ステージを最大限に使って横に目いっぱい広がり、また地を這うような姿勢から一気に伸び上がったりするなど、縦横の運動を意識したそのダンスは、大人数であればあるほど圧倒的なものとして映る。それはいかにも、テレビというメディアを意識した見せ方であった。カメラはまず、メンバー単体の動向を追って“タメ”を作る。そして全員が横へ広がったとき、待ってましたとばかりにカメラは引いてその全体像を映し出す。大人数グループだからこそ、横の広がりは壮観で見入るものがある。

 振付を手がけたのは、BTS「Butter」(2021年)の振付制作にも携わった世界的ダンスアーティスト、GANMI。“どえらいダンス”と話題になった前作「根も葉もRumor」(2021年)を超えることをテーマにしていたそうだが、GANMIの振付はまさにAKB48のポテンシャルを引き出したものとなった。総監督・向井地美音もTwitterで「根も葉もRumorからちょっと大人になった私たちの、新たな魅力を伝えられるように頑張ります!とりあえずダンスかっこよすぎる!」とグループの進化に手応えを感じている様子だった。

 ほかのメンバーも自身のSNSなどで「元カレです」のパフォーマンスについて言及。大西桃香は配信で「(振付を)揃えることをがんばった。『根も葉もRumor』を超えなきゃいけないということで、クールな曲でそれをどうするかとなった」と、試行錯誤と奮闘を繰り返したと口にした。岡部麟はInstagramで「細部までみんなで振り付け揃えるのと迫力を出すことにこだわりを持ってレッスンして今日を迎えられて達成感!」と充実感がにじみ出ていた。また福岡聖菜の「たくさん苦戦してみんなで闘って」というInstagramの感想からは、同曲のダンスの難易度の高さを実感することができる。

アイドルから世界水準を目指すガールズグループへ

 「根も葉もRumor」と「元カレです」ではっきりしたことは、ダンスパフォーマンスとステージングを洗練させ、そしてグループのスケール感をアップし、アイドルというよりも“世界水準を目指すガールズグループ”という要素を強めようとしているところだ。オーディション番組『PRODUCE 48』にAKB48グループから参加した面々が、韓国のアイドル候補生たちの実力に圧倒されたエピソードはよく知られている。そういった現状がグループの意識を変えたように思える。

 
 
 
 
 
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 そんな同曲で、センターポジションに初めて立ったのが本田仁美だ。『CDTVライブ!ライブ!』でのパフォーマンスでは、一つひとつの振る舞いがとにかく素晴らしかった。細かい仕草であっても気を抜くところが一切なく、覇気のあるステージングだった。腕や足を上げる角度、首の傾け方、いずれも絶妙なのだ。しゃがんだり、ジャンプしたり、すべてに躍動感と凛々しさが備わっていた。何よりすごいのが、どのポジションに移動しても存在感を放っていた部分。これだけの大人数で、しかも素早い展開のなかで埋もれるところがまったくなかった。この曲のセンターポジションは本田じゃないと成り立たない、とはっきり感じさせた。

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