miletや映秀。ら支えるクリエイター TomoLow アーティストにとって最善の関わり方を選ぶ、独自のサウンドメイク
milet、映秀。をはじめ幅広いアーティストの楽曲制作に関わる音楽プロデューサー、TomoLow。多くの映画音楽を手がけるドイツ出身の作曲家ハンス・ジマーに憧れ、アメリカ・アラバマ州の音楽大学に留学。帰国後、安室奈美恵の「Hope」(共作・編曲)を手がけたことをきっかけに、作曲、編曲、ミックスまで手がけるクリエイターとして注目を集めてきた彼に、これまでのキャリア、milet、映秀。との制作、現在の音楽シーンのトレンドなどについて聞いた。(森朋之)
洋楽や洋画の音楽に傾倒していた思春期
ーーTomoLowさんが音楽に触れたきっかけは、幼少期に習い始めたクラシックピアノだったそうですね。
TomoLow:2歳上の兄が先にピアノをはじめて、僕もやりたいって言い出したみたいです。幼稚園の時から小学校6年まで習っていたんですが、基本的に楽譜に沿って弾くことが中心で、コード進行などはまったく知らなくて。あとになって振り返ったときに、「あれが基礎になっていたんだな」と気付きましたね。
ーーリスナーとして好きだった音楽は?
TomoLow:洋楽が好きでしたね。『Billboard TOP40』(tvkほか)で流れるような、ポップスを中心に聴いていて。小学生のときはBackstreet BoysやBoyz Ⅱ Men、中学生の時はアッシャー、高校の時はジャスティン・ティンバーレイクなどが好きでした。音楽プロデューサーのティンバランドが手がけた曲もよく聴いてましたね。ブラックミュージックが好きというよりも、それが当時のチャートの中心だったんだと思います。洋画も好きで、映画のサウンドトラックもずっと聴いてました。
ーー特にハンス・ジマー(劇伴の代表作に『レインマン』『グラディエーター』『インターステラー』『DUNE/デューン 砂の惑星』など)に傾倒していたとか。
TomoLow:はい。初めてハンス・ジマーを知ったのは、たぶん『グラディエーター』だったと思います。『パイレーツ・オブ・カリビアン』などもそうですが、思春期の多感な時期にハンスのサントラをずっと聴いていて。アクションシーンに似合う重厚なサウンドはもちろんですが、メロディやコード進行が美しいんですよ。たとえばストリングスの白玉(全音符)でも、響きがすごく美しくて。最近の『DUNE/デューン 砂の惑星』の劇伴もそうですけど、今も最前線でスコアを書いているし、本当に素晴らしいと思います。
ーーその他のサントラも聴いていたんですか?
TomoLow:聴いてましたね。ハリウッド映画が好きなので、有名なところだとジョン・ウィリアムズとか。10代の頃は海外のヒットチャートと洋画のサントラをずっと聴いてましたね。
ーー作曲を始めたのはいつ頃ですか?
TomoLow:高校生からです。高2のときにYAMAHAのモチーフというシンセサイザーとパソコンを親に買ってもらって、Cubase(音楽制作ソフト)で曲を作るようになって、そこから本格的に始めました。劇伴を想定した曲もあったし、頑張ってポップスも作ろうとしてました。
ーー高校卒業後はアメリカ・アラバマ州の音楽大学に進学。どうして日本ではなく、アメリカだったんでしょう?
TomoLow:シンプルに「洋楽が好きだから」という理由もあるし、日本の音大は無理だろうと思ったんですよ。受験のための準備が必要だし、ピアノは小6までやってましたけど、理論を学んだこともなかったので、「日本の音楽大学に入る」という選択肢が取れなかったんです。
ーーなるほど。大学ではCommercial Musicを専攻されていますね。
TomoLow:音楽ビジネス学ですね。カリキュラムの半分は音楽理論やレコーディングなど、技術的なこと。あとの半分は印税やパブリッシングの仕組みなど、ビジネスのことが中心でした。“両方学べる”という学部だったので。当時から「音楽を仕事にしたい」という気持ちがあったんですよね。作曲はやってましたけど、それ1本でやっていける想像ができなかったし、音楽ビジネスを学ぶことで、何かしら音楽に関わる仕事ができたらいいなと。実際、アメリカの大学に行けたのは大きかったですね。マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ(The Rolling Stones、ボブ・ディランなどがレコーディングした名門スタジオ)で録音したり、近くにナッシュビル(カントリー音楽の聖地と呼ばれるテネシー州の都市)があって、色々な音楽に触れる機会があって。僕が住んでいたのは車で5分走ると広大な牧場が広がっているようなところなんですが、行ってよかったなと思ってます。
ーーアメリカの音楽を現地で体感できた、と。
TomoLow:そうですね。家でも車でも、すごい大音量で音楽を聴いてるんですよ。「デカい音で聴かれることを前提に作られてるんだな」と。当時はラジオ文化が根付いていて、自分が好きな曲というより、ラジオで流れている曲を聴く機会も多かったです。
ーー卒業後はすぐに日本で活動を始めたんですか?
TomoLow:22歳で卒業して、地元の名古屋の音楽制作会社に入りました。ゲーム音楽などを作ったり、レコーディングの手伝いなどで仕事を始めて。作家として活動を始めたきっかけは、安室奈美恵さんの「Hope」(2017年/TVアニメ『ワンピース』OP主題歌)ですね。コライトに参加したんですが、その後、声がかかることが増えたので。