『love is alive』インタビュー
mihoro*、感情に寄り添う音楽を届けたい理由 メジャーデビューを迎えた20歳の今、飾らない心境を語る
シンガーソングライターのmihoro*がメジャーデビュー作となる1stミニアルバム『love is alive』をリリースした。もうすぐ21歳の誕生日を迎える彼女は高校1年生の時から地元・岡山でライブ活動を始め、関西や東京でもステージを重ねてきた。2019年にはAbemaTVの人気番組『白雪とオオカミくんには騙されない』にレギュラー出演したことでも注目を集め、YouTubeのMV再生回数が急増。そんな目まぐるしい日々の中で、曲を書き続け、成長を続けてきた。
オルタナティブなバンドサウンドが不安の波となって押し寄せるような「会いたいなんて言わせないで」で幕を開ける今作『love is alive』は、20歳の揺れ動く感情をエモーショナルかつ丁寧に掬い上げながら、チャーミングで人懐っこい音楽世界の魅力もたっぷりと内包している。連続ドラマ『シェフは名探偵』(テレビ東京系)エンディングテーマとして初めて書き下ろしに挑戦した「ミヤコワスレ」に込めた優しいメッセージも、同世代のファンを中心に、大切な心の音楽として日常に寄り添ってくれることだろう。今回は成長と進化の真っ只中にいるmihoro*に、これまでのことも振り返りながら語ってもらった。(上野三樹)
ずっと変わらない“ライブへの想い”
ーー地元・岡山で高校時代から音楽活動が始まりましたが、メジャーデビューするこのタイミングで今までの歩みを振り返ってみて、いかがですか。
mihoro*:初めてライブをしたのが2015年の3月だったんですけど、そこから高校生の時は月に2~3本、ライブをしていました。岡山での活動だけだと音楽をやっている人や知り合う人も限られるので、東京や大阪に行って知り合いを増やそうと思っていました。その頃はそんなにSNSも上手く使えていなかったので、とりあえずライブを見てくれる人を増やそうと思って続けていたんです。だから、その時から見てくださっていた人たちに「ありがとう」って言いたいし、今回のミニアルバムを聴いて「成長したな」と思ってもらえたら嬉しいです。
ーー当初から「これから音楽活動をやっていくんだ」という強い意志があったわけですね。
mihoro*:もともと体育教師を目指していて、高校では運動部だったんですけど、途中で辞めてしまって。その時は本気で音楽をやっているというわけでもなく、週末にライブハウスで歌ってる程度だったんですけど、「部活に入ってないと体育教師になるのは厳しい」って先生に言われて。体育大学に入ることはできても、ライブを続けながら教師になるのは難しいでしょっていう意味だったんですけど。でも部活にもう1回入るのも気持ち的に無理だったので「じゃあライブやります」と言って、そこからライブを中心に高校3年生の時は過ごしていました。
ーーそこで自分の道を選択したんですね。ちなみに競技は何をされていたんですか?mihoro*:バレーボールをずっとやっていました。
ーーおお、イメージにないですね。
mihoro*:よく言われます(笑)。
ーーライブ活動や曲作りを始めたばかりの頃は、どんな試行錯誤がありましたか。
mihoro*:小さい頃からスポーツをやっていて音楽にそんなに興味もなかったので、最初は何もわからなくて。だから作ったものが、そのまま「完成!」みたいな感じでした。ちゃんと細かく曲作りし始めたのってここ2~3年くらいですね。
ーーちょっと赤っぽい色のアコースティックギター、大事にしているのかなと思うんですけど。
mihoro*:はい、ずっと使っています。高校生の時にお父さんに買ってもらったんです。「先行投資だよ」って言われて(笑)。
ーーそうだったんですね。2019年にはAbemaTVのリアリティショー『白雪とオオカミくんには騙されない』に出演しました。mihoro*さんにとってどんな経験になりましたか。
mihoro*:それまでライブハウスでいろんな人と出会うことはあっても、違う職種の人たち、モデルさんや俳優さんといった人たちに出会うのは初めてで。みんなはカメラが回ってる状態に慣れているけど、自分だけ慣れてないので、結構大変でした。でも3カ月の撮影期間で初めてのことをたくさんやらせてもらって、良い経験になりました。恋愛リアリティーショーの中でも曲を書いたり歌わせてもらったりして、それがあったから私のことを知ってくださる方が増えたし、フォロワーやライブに来てくださる方も増えたので、高校卒業してから活動がしやすくなったなと思います。その時は高校卒業のタイミングでもあったので、出席日数も危ういから学校に行かなきゃいけないし、テストや卒業式の準備もあるし、しかもミニアルバムを作りながらライブを月に10本以上入れてたんですよ。そんな中で撮影していたので、脳みそが忙しくてあまり覚えてないんです(笑)。
ーーめちゃくちゃハードでしたね。メディアに出たことで音楽活動へのフィードバックも多かったですか?
mihoro*:違うことをやってみたことで、「ライブがやりたいな。やっぱり私はライブが好きなんだな」と思いました。
「もうすぐ21歳になっちゃうのが“勿体ない”」
ーー今作『love is alive』は、前作ミニアルバム『Re:』から短いスパンでリリースされるわけですが、どんな経緯があったのでしょうか。
mihoro*:あんまり考えてなかった(笑)。もともと前作は去年の6月にリリースする予定だったんですけど、コロナの影響で延期になったんです。制作中は岡山に住んでいたこともあって東京との往復も難しくなって。でも『Re:』の後に今回のタイミングでミニアルバムをリリースすることも決まっていたので、このスパンが短くなった感じです。
ーーメジャーデビュー作ということへの意識ってありましたか?mihoro*:はい。全部、今回のミニアルバムに入れるぞと思って作った曲たちです。前回のアルバムは20歳の誕生日を迎える6月に出す予定だったこともあって、10代の時に作った曲たちを詰め込んだんですけど、今作には今までライブで歌ってきた曲は1曲も入ってないんです。今までは1回曲を完成させたらどこかを直すということが嫌だったんですけど、今回は部分的に直したりを加えたりしながら作って、レコーディングまで歌詞が決まってないみたいなことも初めてでした。そうやってギリギリまで悩みながら「絶対に良い作品を作りたい!」ってこだわって作っていて。ちゃんとみんなに聴いてもらいたいし、何年か経った後でも「あのアルバム良いよね」と思ってもらいたくて作りました。
ーーでは1曲ずつお聞きしていきたいのですが、まずは「会いたいなんて言わせないで」。1曲目にふさわしいロックでドラマチックなナンバーですが、作る時にもmihoro*さんの頭の中でバンドサウンドが鳴っていたんですか。
mihoro*:はい。今まではずっと1人でライブをしていたので、自分で完結する曲作りをしていたんですけど、今回はバンドのアレンジがある前提で作っていたので、以前と比べたらメロディも全然違うと思います。
ーーなるほど。〈大人になれば変わると思っていたことも/ただ大人になっただけでした〉という歌詞が印象的でした。
mihoro*:去年20歳になって、成人したのに何も変わってないなって思ったんですよね。結局20歳になってもコロナの影響もあって、あっちこっち行けるわけでもないし、友達とワイワイできるわけでもないし。シンプルに20歳になっただけだったんだな、成人式も中止だったし、何もなかったなって。それなのに、もうすぐ21歳になっちゃうのも、勿体なさすぎて……そんな気持ちを書いています。
ーーそして2曲目は「孤月」。物寂しく見える月という意味ですが、この言葉はどういうきっかけで知りましたか。
mihoro*:年末に岡山に帰ってる時に新幹線の窓からの月を見て、めっちゃ綺麗だったので「月の種類を調べよう!」と思った時に「孤月」という言葉があったので、これをタイトルに曲を作ろうと思いました。タイトルから曲を作ることも多いんです。
ーー生活の中にあった恋愛、これまでの日常には確かに存在していた貴方、というのをリアルに描いています。最後の〈たがいを求め合って/生活の一部にしてしまおう〉というのはどんな願いから書かれたものなんでしょうか。
mihoro*:頭の中にこういう物語がもともとあって、「孤月」というタイトルが合うなと思い歌詞にしていきました。好きな人に会った帰り道に思ったことを歌っていて、私は好きでも、あなたは都合がいい時に会ってるだけだって気づいてるけど、日常的に私がいることが当たり前になってくれたらいいなという気持ちですね。別に表面上では幸せかもしれないけど、すごく不安なんですよね。ギターを弾きながら歌詞とメロディ同時進行で作っていった曲です。
ーー3曲目「馬鹿な女」は貴方が吸っていたタバコを吸ってむせてしまう馬鹿な女です、という主人公のひたむきさが切実に伝わってくるようなアレンジが印象的です。この曲を作りながらmihoro*さんが大切にしたのはどういう部分ですか。
mihoro*:私の曲はこういう暗めでバラード調の曲と、速いテンポで早口で喋るような曲、あとはちょっと可愛い感じの曲があると思うんですけど。昨年リリースした「コドモノママデ」が結構聴かれるようになって、ポップなイメージがついてる気がして。でも実際にはこういう重たい感じの曲が多いので、もっと聴いてもらいたいなと思って作りました。
ーー4曲目の「いやいや」もアンニュイなカッコよさが光る曲ですが、こういうタイプの曲は自分を曝け出す自画像みたいなものですか?
mihoro*:これはもうサビの部分が頭に浮かんだので、そこから広げていきました。こういう曲、好きなんです(笑)。お気に入りの曲が作れたらいつも「めっちゃいい~!」と思いながら自分で聴きまくりますね。次の日になって、「あの時間、何やってたんだ!?」っていうくらい(笑)。