ザ・ウィークエンドが成功に至るまで【前編】:鮮烈なデビュー、ダークなスタイル確立した2ndアルバムでの挑戦

ザ・ウィークエンドが成功に至るまで【前編】

 ザ・ウィークエンドのキャリアにとって大きな変化となったのが、2ndアルバム『Beauty Behind The Madness』(2015年)であろう。ドラマ『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のサウンドトラックにも収録された「Earned It」は、『第58回グラミー賞』でベストR&Bパフォーマンス賞を受賞(※8)。同アルバムからの2ndシングル「The Hills」は、Billboard Hot 100で1位を獲得し、後にアメリカレコード協会によってダイヤモンド認定されている。さらに3rdシングルとしてリリースされた「Can’t Feel My Face」でも再度1位を獲得(※9)。「Can't Feel My Face」は、後のザ・ウィークエンドのダンスポップス/ファンクのスタイルの礎となった曲と言っても過言ではないだろう。『Beauty Behind The Madness』は、Billboard 200で1位を獲得し、2015年で最もストリーミング再生されたアルバムとなった(※10)。

The Weeknd - Earned It (from Fifty Shades Of Grey) (Official Video - Explicit)

 『Beauty Behind The Madness』は、それまでの作品とは違い、ザ・ウィークエンドにとって新しいサウンドに挑戦した作品となった。内容的は基本的にダークな作風で、自身のドラッグ、セックス、そして人間関係などについて歌っているが、今まで以上にポップなサウンドを取り入れている。同アルバムについても、ザ・ウィークエンドは『The New York Times』にてこのように語っている。

「このアルバムは、今までの自分のスタイルから踏み出して、ここ4年間で感じてきたこと以外を感じようと思った作品だ。アップとダウンのどちらもだ……過去のアルバムには、アップがなかった」(※11)

 また、『Rolling Stone』誌にはこのように語っていた。

「自分にとって慣れていない世界で、このアルバムを作っていた。ドラッグもやっていない状態だ。ある日、とても楽しみたいと思っても、ダークな部分が戻ってくる。そしてダークな部分は気持ちが良い。クレイジーだけど、人々はダークな部分に共感する」(※12)

 ポップスやR&Bでは今までなかった、非常にダークなスタイルを確立したザ・ウィークエンド。自身の暗い部分を赤裸々に表現し、憂鬱や不安などを抱える人々の深い共感を得たのだ。さらに、そのような要素を持ちつつも、自身のスタイルにはなかった“アップ”も表現した『Beauty Behind The Madness』は、ザ・ウィークエンドのキャリアにとって非常に重要な作品となった。そのバランス感覚を掴んだザ・ウィークエンドは、その後さらにコンセプチュアルな作品を作り、世界で最も聴かれているアーティストへとなっていく(後編へ続く)。

The Weeknd - Can't Feel My Face (Official Video)

※1:https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-60569918
※2:https://octobersveryown.blogspot.com/2010/12/introducing-weekend.html
※3:https://www.mtv.com/news/1714103/the-weeknd-reddit-ama/
※4:https://www.thefader.com/2016/03/21/house-of-balloons-rountable-the-weeknd
※5:https://www.vogue.com/article/the-weeknd-musician-profile-met-gala-performance
※6:https://www.billboard.com/music/music-news/one-direction-tops-billboard-200-chart-twilight-debuts-at-no-3-474052/
※7:https://www.complex.com/music/2013/07/weeknd-interview-cover-story
※8:https://people.com/awards/grammys-2016-the-weeknd-wins-two-awards/
※9:https://www.billboard.com/pro/the-weeknd-no-1-hot-100-cant-feel-my-face-one-direction-drag-me-down/
※10:https://www.billboard.com/pro/spotify-year-music-lists-2015-drake-rihanna-major-lazer-ed-sheeran/
※11:http://www.nytimes.com/2015/08/02/magazine/can-the-weeknd-turn-himself-into-the-biggest-pop-star-in-the-world.html?_r=0
※12:https://www.songfacts.com/facts/the-weeknd/the-hills

『ドーン・エフエム(オルタネイト・ワールド)』

■リリース情報
ザ・ウィークエンド
『ドーン・エフエム(オルタネイト・ワールド)』
2022年3月16日(水)発売
購入・視聴:https://umj.lnk.to/TheWeeknd_DawnFMAlternateWorld

【日本スペシャル盤】(初回限定)
CD+DVD / UICU-9107
¥3,850(税込)/ 歌詞・対訳付、MV収録のDVD付

【通常盤】
CD / UICU-1339
¥2,750(税込)/ 歌詞・対訳付

ザ・ウィークエンド日本公式サイト:https://www.universal-music.co.jp/the-weeknd/

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