DECO*27×ピノキオピー、ボカロ全盛時代に問う“個性の在り方” 世間と接続するために必要なバランス感覚

DECO*27×ピノキオピー 対談

両者が惹かれるボカロPは?

DECO*27 - シンデレラ feat. 初音ミク (Giga First Night Remix)

ーーお二人共、ボカロシーンにおいて前例がない世界を常にアップデートし続けられてきたと思いますが、最近ではボカロ曲のあらたなコミュニティーとなっているスマホゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の大ヒットなど、常にフィールドは広がっていますがボカロ文化圏の表現者、クリエイターで気になる方はいますか?

DECO*27:僕がこの人いいなって思うのは角がある人か、考えてやっていないように見せながらも考えてやってるなって思える人。僕が、考えてやっていくタイプなので。そんな人に惹かれますね。

ーーたとえば?

ピノキオピー:具体的に(笑)。

DECO*27:え~、……ピノさんと同じになっちゃうかな。角というか、その人の匂いがある人っていうと。ボカロP、いよわさんかな。

ピノキオピー:あ、かぶってる。

DECO*27:バランスがいいんですよね。

ピノキオピー:めちゃくちゃいい。

DECO*27:イラストや動画のビジュアルもいいし。音楽の王道をいきつつ、そこからの外し方も絶妙で。あ、ご本人は外している意識はないかもしれないんですけどね。なんかストレートな中に、いい感じの違和感があって。それが好きで。

ーー特にどの曲がとかありますか?

DECO*27:ピノさんとは違うかもだけど「きゅうくらりん」が好きで。

ピノキオピー:僕は「アプリコット」が特に好きです。いよわさんは自分で絵も描かれる方なんで、自分と同じ絵も描くボカロPというところでも意識をしていて。絵を描きつつもおしゃれな感じで、なのにめっちゃ匂いもあるんですよ。好きですねえ。ボカロ界隈というか、ボーカロイドって生き物ではないからこそ匂いって大事な要素なんですよ。普通の食べやすい肉じゃなくって、野生のジビエというか。いよわさんは僕の中でいいジビエだなって。

DECO*27:あ、今のピノさんのお話を聞いていて思った。ボカロ曲って例えばミクを使ってもその色になりすぎないんですよ。普通、歌っているその人の色が出るんですよ。それもあって作っている人の個性が前に出るというか。

ピノキオピー:なので、匂いを入れすぎた方が作っている人の色になり、ちょうど良くなるんですね。ミクが受け止めてくれるんですよ。臭みがない状態だと、ミクの綺麗さが勝っちゃうんです。

ーーなるほど。創作における本質ですね。

DECO*27:たしかに。だからこそ、個性の強い曲が受け入れられるんだと思いますね。

「人間の中にあるバグみたいな要素を大事にしていきたい」(ピノキオピー)

DECO*27 - ジレンマ feat. 初音ミク

ーーでは、せっかくの対談なので、お互いがそれぞれ聞いてみたいことがありましたらぜひ。

DECO*27:僕の中では、ピノさんには聞くことと聞かないことの線引きがあるんですよ。仲良く会話するけど、クリエイターとして踏み込んではいけないところがあると思っていて。仲がいいからといって甘えてはいけないことがあるんじゃないかなって。制作する上での細かい話なんですけどね。

ピノキオピー:ああ、そうね。そこはお互いのこだわりのポイントだよね。

DECO*27:曲を作っているときの大きな思想とかは共有したいし、実際上がった曲に対しての感想を言い合うのはありなんですけどね。この歌詞のここの意味とかは聞くまい、と(苦笑)。

ピノキオピー:わかる。

DECO*27:それはこの機会だといっても聞かない(笑)。

ーー(笑)。

ピノキオピー:これは、使える質問かはわからないんだけど、アルバム『MANNEQUIN』で今回初音ミクのキャラクターがいっぱいいるじゃないですか? 彼女たちのライブはあるの?

DECO*27:ピノさん、マジで着眼点が鋭い。DECO*27が、『MANNEQUIN』をあのアルバムで終わらせるか否かってことですよね?

ピノキオピー:僕は終わらせないと思っていて。今後の展開があるんだろうなって。

DECO*27:それでいうと、形は違うけどあります。

ピノキオピー:おおお、それは楽しみですねえ。

DECO*27:実は『MANNEQUIN』にはアイドルグループだけではない側面を込めていて。これはもう話しても良いと思うんですけど、『MANNEQUIN』って、ひとりの女の子が人を好きになって、別れて、自立するまでを描いているんです。「シンデレラ」では、好きな人を見つけてアクションを取りたいけど取れない、みたいな。そしてその後に、付き合います。そして依存します。で、関係が破綻しはじめます。それを受けて自分が強く生きるということを9曲でストーリーとして描いていて。ちょっと「ジレンマ」のMVにあらわれてくるかな。

ーー考察ポイントですね。

DECO*27:ここまでは言っちゃっても良いと思うんだよね。

ーーそれはアルバムの楽しみ方としてワクワクしますね。

ピノキオピー:そういえばDECOさん、Twitterで『MANNEQUIN』に登場するミクたちのオフショットをあげているじゃないですか。あれがめっちゃ好きで(笑)。動画の時はカッコつけていて、オフはそれぞれの性格があらわれるというか。チームのYouTuberもそうですけど、ネット上でメンバー同士の関係値を見て楽しむとかあるじゃないですか? 

DECO*27:そうだね。

ピノキオピー:ボカロの自分の曲で、ミク同士の関係値を見せるって新しいなって。

DECO*27:我ながら、自分のことを怖い人だなって思いますよ(笑)。

ピノキオピー:(笑)。

DECO*27:以前までの自分だったら思いついてもやらなかったと思う。でも、それも「ヴァンパイア」でアクセル踏んだからだろうね。『MANNEQUIN』に関してはいけるところまでいこうと。

ピノキオピー:それもひとつの初音ミクの在り方ですよね。

DECO*27:いろんなものに染まれるよさというか。

ーーなるほど。

DECO*27:ピノさん、すげえな。僕は、ピノさんの新曲がとてもよかったので楽しみです。

ピノキオピー:新曲「魔法少女とチョコレゐト」ですね。2月25日にアップしました。昔作った曲をモチーフに続編っぽく作った曲なんです。ちょうど10年ぐらいたって、そういうことをやっても面白いのかなって。でも、詞もメロディも違うんです。テーマは“ゴシップニュース”で。あらためて今作ったらどうなるかなって。

DECO*27:気持ちがよくわかります。ピノさんとは、ほぼほぼ活動歴が同じなんですよ。自分の昔の曲を、今の人たちにも聴いて欲しい思いってあるんですよね。

ピノキオピー:あるね。その工夫のひとつかもしれません。

DECO*27:「ヴァンパイア」から入って、DECO*27のYouTubeチャンネルに上がっている曲しか聴いたことないリスナーもいると思うんです。そこは積極的に伝えたいんですよね。そういうのがあるとファン同士の交流のきっかけにもなるんじゃないかなって。『新世紀エヴァンゲリオン』とか再構築で発展した『シン・エヴァンゲリオン劇場版』をやることで、当時の作品も観たくなるじゃないですか? テレビ版世代、映画版世代、シン・エヴァ世代がリンクするというか。

ーーいろいろやることが盛り沢山な2022年になりそうですね。

DECO*27:僕はもう今年やることは決めちゃっているので。これ以上で思いつくものは2023年に持ち越しですね。

ピノキオピー:やばっ(笑)。早すぎる。

DECO*27:去年の7月か8月ぐらいにアルバム『MANNEQUIN』のデモや作詞作曲を終えていたんで。けっこう、発売まであるなって思ってたんですよ。新曲をYouTubeにアップしたときにはもうすでに先の曲も完成してたので、不思議な感覚でしたね。なんか未来からやってきた人みたいな(笑)。

ーー(笑)。

ピノキオピー:僕は、まだコロナの状況がわからないんですけど、ライブをやっているので落ち着いたらライブしたいですね。去年、サンリオさんのメタバースなバーチャル空間でのイベントで初音ミクと並んでライブをやったんですよ。ああいう、これまでやっていないライブをやっていきたいですね。曲に関しては、今アイデアを溜め込んでいるので、どんどん形にしていきたいです。

ーー最後に、無茶な質問をしたいんですけど、ボカロ文化圏って、様々な表現者の活躍で話題の絶えない盛り上がり続けている状況だと思いますが、今後の未来はどうなると思っていますか?

DECO*27:無茶な質問ですねえ(笑)。何だろうなあ。僕の話でいうと、僕と初音ミクは次元的に埋まらない壁があるんですよ。

ピノキオピー:うんうん、三次元と二次元でね。

DECO*27:その空間をつなぐ存在としてメタバースはいいなと思っています。そこで、新しい表現とかできたら楽しそうですね。ふわっとした思いですけどね。テクノロジーが進化するときに、その波に乗らないと置いてけぼりにされてしまうと思うので。いろいろ選択肢を考えておきたいです。でもやっぱりこの質問、無茶振りですねえ(笑)。

ピノキオピー:AIとか発展して、レコメンド機能とかある程度こうしたらこうなるみたいなことってあるじゃないですか? AI的な考え方ってコンピューターの方が得意なわけなんで、そんなときこそ人間ならではのクリエイティブに価値が生まれると思うんです。もっとハプニングを起こしたいですね。人間の中にあるバグみたいな要素というか。そんなことを大事にしていきたいと思っています。

■リリース情報
DECO*27『MANNEQUIN』
発売中
初回限定盤[+特典CD]¥3,300(税込)
特典CD:ボイスドラマ「ヴァンパイア」
通常盤¥2,750(税込)

<本編CD>
1.ヴァンパイア
作詞・作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
2.アニマル
作詞・作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
3.状態異常彼女
作詞・作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
4.U
作詞・作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
5.シンデレラ
作詞・作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
6.ケサランパサラン
作詞・作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
7.ギフト
作詞・作曲:DECO*27 編曲:ポリスピカデリー
8.パラサイト
作詞・作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
9.ジレンマ
作詞・作曲:DECO*27 編曲:Rockwell
10.おじゃま虫Ⅱ
作詞・作曲:DECO*27 編曲:TeddyLoid
11.モザイクロール (Reloaded)
作詞・作曲:DECO*27 編曲:Rockwell

<初回限定盤 特典CD>
ボイスドラマ「ヴァンパイア」
[CAST]灰原撫子 (CV: 和氣あず未)、緋山櫻司 (CV: 増田俊樹)、鈴雪真白 (CV: 伊東健人)
[STORY] 内田裕基

■DECO*27 公式サイト
オフィシャルサイト(https://otoiro.co.jp)
 オフィシャルYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/c/DECO27Official/)
 オフィシャルTwitter(https://twitter.com/deco27)

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