乃木坂46の29thシングル曲「Actually…」が賛否両論を呼んでいる。センターを務めるのは5期生の中西アルノ。2月1日に加入したばかりのメンバーが新センターに抜擢される、グループとしても異例のシングル曲だ。ポイントは大きく2つあり、「中西アルノが新センターの楽曲であること」「表題曲としてはこれまでにない曲調であること」になるだろう。

　まず「Actually…」は中西の歌声を軸にした楽曲である。中西は5期生のお披露目イベント『お見立て会』の特技披露で尾崎豊の「I LOVE YOU」を歌唱。艶やかかつ低音の柔らかな歌声を印象付けながら、『乃木坂46時間TV』のラストにて「かつてない歌声」「発見された新しい可能性」「10年目の挑戦」といったキャッチを打ち出し、「Actually…」は披露された。1番のサビにかけてはほぼ中西のソロパートと言ってもいい大胆な構成であり、そこから徐々にほかメンバーの歌割りが乗っかっていく。振付は「インフルエンサー」「シンクロニシティ」で『日本レコード大賞』の2年連続受賞に大きく貢献してきたSeishiro。コンテンポラリーダンスの主体にいるのは中西であり、これは想像の域を出ないが、歌割りとダンスの2つの要素からは“中西アルノありき”で書かれた楽曲とも捉えられる。

　サウンドは打ち込みの強い壮大なダンストラック。公式サイトに書かれたシングルの概要にも「独特な世界観そしてミステリアス感漂う、今までのシングル表題曲にはない楽曲」とある。作曲のNAMITOが坂道グループに曲を提供するのは今回が初めてであり、「中西アルノ」「NAMITO」という2人の抜擢は10周年を迎えた乃木坂46にとっての大きな挑戦だ。

　一方でTwitterトレンドに入るほどの議論を巻き起こしているのが「乃木坂らしさ」についてである。いわゆる「君の名は希望」や「きっかけ」といった『NHK紅白歌合戦』（NHK総合）で披露してきたような楽曲を“乃木坂らしい”楽曲とするならば、一部の否定的な声が上がるのも当然だ。ただそうした意見も運営側はきっと想定した上でのことであろう。清宮レイが歌い出しを担う〈「You know I need to find something, real bad…」〉の皮肉とも取れる英詞は、新たな一面を見つけにいこうとする乃木坂46の決意表明のようでもある。