鉄風東京、日常にリンクする歌詞でバイラルチャート好調 起伏豊かなアンサンブルは90年代オルタナの新解釈に

参照:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest

 Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(2月17日公開:2月10日~2月16日集計分)のTOP10は以下の通り。

1位:Rachel Zegler, Ansel Elgort「Balcony Scene (Tonight) - From "West Side Story"/Soundtrack Version」
2位:OCTPATH「IT’S A BOP」
3位:YENA「SMILEY (Feat. BIBI) 」
4位:「America」(From『West Side Story (Original Motion Picture Soundtrack)』)
5位:鉄風東京「外灯とアパート」
6位:ヒグチアイ「悪魔の子」
7位:ASA「オモイアイ」
8位:NEEDY GIRL OVERDOSE, KOTOKO, Aiobahn「INTERNET OVERDOSE」
9位:GOT the beat「Step Back」
10位:Tani Yuuki「W/X/Y」

 ここ1カ月ばかり、楽曲の入れ替わりが激しかったバイラルチャートだったが、ここ2週間ほどは10位以内をキープする楽曲が増えている。アニメのテーマ曲や映画の劇中歌、オーディション番組を機に誕生したグループなど、マスメディアや映像との相乗効果をヒットの一因とした楽曲がランクインしている中、ちょっと変わり種として目立っているアーティストがいる。

 今週5位にランクインしている鉄風東京「外灯とアパート」だ。同曲は2月7日にバイラルデイリーチャートに初登場して以降、着実に順位を上げ、先週のウィークリーチャートでは最高位の3位を記録。今週も5位内をキープしている。

 鉄風東京は、『RO JACK 2020』入賞や学生アーティストの頂点を決める『NAMA2020』オーディエンス賞を獲得した仙台出身の4人組バンドだ。彼らが自ら発信している情報源は、YouTube、Twitter、Instagram、TikTokなどSNSが中心であり、オフィシャルHPもなく、デジタルネイティブ世代ならではのプロモーションでここまで来たバンドと言えるだろう。ライブ活動を精力的に行い、東京へも進出を果たしており、過去のインタビュー記事によれば、2019年で高校2年生だったというから、2022年現在、全員20歳前後の若いバンドである(※1)。

 繊細なギターのアルペジオから始まるミディアムアップチューンの「外灯とアパート」だが、起承転結がはっきりしている。つまり、楽曲の輪郭が掴みやすい。淡々としたシンプルなフレーズを繰り返すAメロから、サビへ向かい上昇するような起伏を見せるBメロ、一転、リズム隊がディスコビートのアプローチを見せ、ボーカルのロングトーンが力強く伸びていくサビ。間奏ではシューゲイザーの匂いもありながら、幻想的なサウンドスケープを見せる。サビを繰り返す後半では、ボーカルはそれまで使っていた高音でのファルセットを封印してシャウトするなど、エモーショナルな展開も垣間見え、テンポはミディアムでありながらも、後半に向け疾走感が上がっていくようなバンドアンサンブルもお見事である。

鉄風東京「外灯とアパート」Official Music Video

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