三月のパンタシア、P丸様。への提供曲も話題 神聖かまってちゃん の子、若者の心を引き付け続ける理由
これらの作品からわかるように、の子は、青春時代を瑞々しく生きる若者という恒久的な美しさと、時代と共に変化する若者の暗部、いわば若者の陽と陰の両方をキャッチし、ソングライターとして楽曲に落とし込んでいる。その才能の根源は何なのか。
神聖かまってちゃんの最新曲である2021年2月リリースの「僕の戦争」は、英語から日本語へ歌詞が切り替わるのをきっかけに、楽曲の描く情景が空想世界から誰もが知る帰り道に変わり、学校を戦場と捉える少年少女の悲哀が現れる。
2020年1月リリースのアルバム『児童カルテ』にも、実際の事件をモチーフにした「るるちゃんの自殺配信」や、ネットとリアルの両方の世界で自分を削りながら生きる少女の姿を描いた「毎日がニュース」など、現代の若者を独自の視点で捉えた作品が複数収録されている。このように自身の学生時代の実体験を元に生み出した楽曲や、今の社会を生きる若者を客観的に描いた楽曲など、視点を自由に移動させながら、の子は若者の美しさや苦悩を楽曲で昇華し続けている。そしてステージでは、学生時代を抜け出してから20年が経過した今も、リストカット痕だらけの腕でエレキギターを掻き鳴らし、〈死ねよ 佐藤〉と、自分をいじめた相手の名を叫んでいるし、その表情は観客に見せるためのパフォーマンスの域を超えた気迫に満ちている。
長きにわたるバンド人生において、音楽性を進化させてきたの子だが、彼の創作における魂は今も10代に生き続けているように見える。それが長年若者の心を引き付ける作品を生み出せる理由であり、神聖かまってちゃんの楽曲が持つ美しさと悲哀の根源なのかもしれない。