CYNHN、アルバム『Blue Cresc.』収録曲から見るユニットの現在地 変化していく“青”と未来を感じさせる内容に

CYNHN『Blue Cresc.』レビュー

 CYNHN(スウィーニー)が2022年2月2日、待望の新作『Blue Cresc.(ブルークレッシェンド)』をリリースした。フルアルバムを出すのは約2年7カ月ぶり。前作『タブラチュア』(2019年6月)を発表してから現在まで、メンバーたちはコロナ禍などの逆境もありながら、“青い未完のヴォーカルユニット”として迷わず走り続けてきたわけだが、その間の成長ぶりは目を見張るものがあった。『Blue Cresc.』は新曲3曲のほか、新たにレコーディングした既発表曲などで構成。シングル『2時のパレード』以降の足跡を振り返りながら、ユニットの最新の姿も確認できる作品に仕上がっている。

 それでは主な収録曲を順にチェックしていこう。綾瀬志希、月雲ねる、百瀬怜、青柳透の4人体制初の楽曲で、疾走感あふれるオープニングナンバー「AOAWASE」に続いて収められた「レア」は、2021年11月に本作の発売に先駆けて配信した楽曲。軽やかなリズムに誘われるように歌い出すメンバーらの歌声はとてもさわやかで、〈上向いたら空も/降らせがいないや〉、〈昼間のこと整理をしても/夜はエンドロールじゃなくて/これからの準備だから〉といった前向きなフレーズによく似合う。

CYNHN「レア」Music Video

 「2時のパレード」はニューレコーディングだが、ベーシックな部分は変わらず。シングルでリリースしてからかなりの時間が経ち、そのぶん他の曲よりも歌ってきたせいか、それぞれの歌唱がより深みを増したようだ。

 青春期における「青さ」を的確にとらえた「氷菓(アイスクリーム)」も同様である。新しく録り直しているものの、オリジナルの良さを大切にしつつ、アップデート。より締まった音像になり、ヴォーカルはさらに切なく響いてくる。

 「夜間飛行」は歌謡曲的なテイストが薄れた再録バージョンと言えばよいのか、こちらも基本は同じだが、ギターやベースなどの音色をクリアにしてロック色が若干濃くなった印象だ。それに合わせてメンバーの歌い方も微妙に変わっている。

 アルバムの中盤には本作の目玉のひとつである新曲が登場。「水の中の」は、高橋國光(österreich / ex the cabs)が作詞・作曲を担当し、アレンジはぼくのりりっくのぼうよみのサウンドプロデュースで有名なケンカイヨシが手掛けた。幻想的かつ希望に満ちた歌詞とアバンギャルドなトラックで繰り広げられる世界はこれまでになかったもの。ケンカイヨシは「イナフイナス」(2020年リリース)のアレンジでCYNHNとのコラボを経験済みだが、J-POPのひな型をぶち壊したような音の衝撃度は「水の中の」のほうが高い。新機軸としてファンはしっかり押さえておきたい。

 もうひとつの目玉は「アンサンぶる」。CYNHNのメインソングライター・渡辺翔の才能&センスをこれでもかと詰め込んだ新曲で、メロディはポップで親しみやすく、歌詞はシンプルな言葉の積み重ねで明るく楽しい。それなのに繊細さも感じさせる作風は彼しかできないだろう。編曲は「水生」や「ごく平凡な青は、」にも参加したebaが担当。ファンキーなギター&ベースのノリの良さは抜群で、今後のライブのハイライトはこの曲で決まりである。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる