寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生ソロ作品の魅力を再発見 シャッフルカバー盤で堪能する4人の個性と絆
お互いを思い合った時間の長さと深さが感じられる1枚
豊崎愛生が、「I wanted to do」(オリジナル:寿美菜子)を歌ったのは意外性があった。オリジナルはパキパキとした声のニュアンスとメリハリの効いたビートがマッチした、寿らしい元気さや前向きさが込められたソウルナンバー。豊崎は自身特有の空気成分の多いふわっとしたボーカルで、新たに甘さをプラス。オケは同じでも全く違った曲に聴こえるという、このシャッフル企画の醍醐味が感じられる1曲になった。
「こいのうた」(オリジナル:戸松遥)と「たからもの」(オリジナル:高垣彩陽)は、豊崎の声だからこその魅力が発揮された。「こいのうた」は、当時の戸松は豊崎をイメージして歌ったとのことで、ぜひ豊崎に歌ってほしいと今回リクエスト。宝物のように大切な恋の思い出を歌うような優しさが非常に心地良い。13年前の戸松の初々しさを引き継ぎつつ、今の豊崎の魅力が輝いている。また、「たからもの」は卒業をテーマにしたミディアムバラード。最後に合唱になるところはオリジナルの高垣の声も残しており、「ディライト」同様、2人の声の重なりを聴くことができる。ファンにとっての新たな「たからもの」になった。
それぞれソロとしては2008〜2010年にかけてデビューしているため、10年以上前の楽曲も多く収録。戸松遥が歌った「光のフィルメント」(オリジナル:高垣彩陽)もその一つで、高垣の12年前の楽曲。美しく儚さのある世界観を、戸松は真っ直ぐな魅力で表現。切ないサビの絶妙なサジ加減は聴き応えがある。また、ストレートなバンドサウンドに乗せて初々しい恋心を歌った「Startline」(オリジナル:寿美菜子)は、戸松が歌うことで、背中を押してくれるようなエール感が増したものになった。
そしてラストに収録された「Uh-LaLa」(オリジナル:豊崎愛生)は、豊崎らしい可愛さのあるロックナンバーが原曲。戸松の提案で豊崎のオリジナルのコーラスが大きめに出ており、まるで戸松&豊崎のデュエットのように聴こえる。前向きさがより増して、またここから新しく始めようというメッセージも感じられ、今後のそれぞれの活動を楽しみにさせてくれる。
レッスン時代を含めると出会ってから16年近くになるという4人。お互いのことは家族のように全部知っていて、辛い時も嬉しい時も一緒に過ごして来た。そんなメンバーから「あなたには、これを歌って欲しい」とリクエストされた楽曲は、メンバーからのある種のメッセージだ。それを大事に胸に抱きしめるようにして歌ったカバーは、大切な手紙を受け取ったメンバーからのお返事でもある。お互いをリスペクトして思い合った時間の長さと深さが感じられる1枚だ。
3月17日には、シャッフル企画の第2弾として、TrySailとしても活動する麻倉もも・雨宮天・夏川椎菜が、それぞれソロ活動で発表して来た楽曲をカバーし合うアルバム『シャッフル -Bright 3 Waves-』をリリース。メンバー同士のどんな絆が感じられ、どんな思いが込められたものになるのか、こちらも楽しみだ。