L'Arc-en-Cielがファンとともに作り上げた“ミライ” 30周年ツアーを振り返る

L'Arc-en-Ciel結成30周年ツアーレポ

 ベースラインが印象的な「花葬」では、バンドの持つ妖艶さにおけるtetsuyaの重要性を改めて知らしめる。ステージ上に炎が上がり、もちろんペンライトも赤、会場中が轟々と燃えているようだった。一方で、下方のスクリーンには美しく舞う花びら。楽曲同様、激しさと儚さが共存する。「EVERLASTING」では、立ち上る炎はそのままに、スクリーンに雨が降り出した。yukihiroのドラムとtetsuyaのベースの重低音、kenのギターの歪みがグイグイと迫る。けれどかすかに聴こえる、美しいメロディライン。hydeは手や指先、シルエットでさえも歌う。サウンドには、ある種の不穏さとでもいおうかーー調和されない美しさがある。雨はやまず、雷が轟く。炎も消えない。kenが泣き出しそうな音色でギターを奏でる。琴線に触れるメロディだ。次第に激しくなる音が、炎も雨も消し去った。そうして「MY HEART DRAWS A DREAM」。晴れ渡った空のような、爽やかなブルーが会場を包む。音楽と演出で、見事にストーリーを表現していた。

 MCでは、tetsuyaとkenの幼なじみトークでひと盛り上がり。30年目にして「MCをどうしたらいいか」と、そもそもの話を始める彼らが面白かった。

L'Arc-en-Ciel hyde(Vo)

 会場中がクリスマスカラーに染まった「Hurry Xmas」のあとは、大ヒットナンバーがこれでもかと続く。エンジン音に胸が高鳴る「Driver’s High」、hydeがギターをかき鳴らす「HONEY」、「30周年のお祝いしてくれよ」「声出せなくても俺たちならできるよな?」と、大暴れした「READY STEADY GO」。サビでのtetsuyaのコーラスが客席のテンションをさらに上げ、ペンライトの海がうごめいていた。高く掲げる者、振り回す者、踊る者ーー疾走感にいてもたってもいられない。リリース当時、CDを買いに走った日を思い出した。あれから何年も経ったこの日も、同じように胸のどこかが痺れた。

 「ミライ」では、ペンライトではなくスマホのライトをかざす。煌めく星々のような美しさに見惚れていると、歌い終わりにhydeが話し始めた。ライトの一つひとつは「会いたくて来てくれる人の光」だと、一つひとつに意味があるとhydeは思っているという。コロナ禍でライヴが開催できないなか、想いを馳せたこともあったと明かす。

L'Arc-en-Ciel

 1回目にはメンバーのOKが出ず、2回目の挑戦で見事ウェーヴに成功し、無事に聴くことができた「FOREVER」、激しさと美しさが同居する「Blurry Eyes」、「GOOD LUCK MY WAY」では、虹色に包まれた会場でファンが踊り、メンバーも走る。

 「長い未来は想像していなかった。みんなが作ってくれた未来」だと、改めて30年を振り返ったhyde。どんな状況でもあくまで楽しもう、楽しませようとするタフなバンドだ。きっと、だからこそ迎えた30周年。ラストの「あなた」は、大合唱のかわりにハミングを。あの優しく温かい時間も、確かにL'Arc-en-Cielの歴史に刻まれた。

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