「コカ・コーラ」新TVCMで話題、シンガーソングライター ロザリーナの歩み 楽曲「Life Road」に詰まったリアルな思い
2022年1月3日から放送開始した「コカ・コーラ福ボトル」新TVCM、“魔法は、すぐそばにある。”篇に出演している女性に注目が集まっている。彼女はシンガーソングライター、ロザリーナ。ロザリーナはこのCMで、夢を持ったひとりの女性の才能が世界中に広がっていく主人公を演じている。ひび割れたスマホ画面に映し出されたオーディション不合格の文字にため息をつきながらも、気持ちを切り替えるようにコカ・コーラを飲みギターを手に取り歌い出す。〈どんな普通なことでも 鮮やかに変わる〉と歌うマジカルな瞬間そのままに、夢中で奏でるギターがペットボトルにぶつかり、スマホに倒れたはずみでライブ配信がスタートしてその歌声が人々へと届いていくというストーリー。ここで歌われているのが1月19日にデジタルリリースとなる最新曲「Life Road」で、SNSなどでは「曲も声もいい」「早くフルで聴きたい」という声があがり、その歌声に惹かれてロザリーナの他の曲も聴いてみたという人も多いようだ。CMのストーリー同様に、ふと聞こえてきたその歌声に出会った喜び、心を射抜かれた人の高揚感が伝わってくる。
2018年にシングル『タラレバ流星群』でメジャーデビューしたロザリーナは、その歌声でリスナーやクリエイターたちを魅了してきた。健気な少年のようでいて、複雑な感情を溶かした憂いも帯びているちょっぴりハスキーな歌声。誰にも似ていない聴いた瞬間にハッとする声色でありながら、リスナーの心のどこかに住む誰かのような親近感、フレンドリーさもあって、その歌をとても身近なものにしてくれる感覚がある。この歌声に魅了されたひとりがキングコングの西野亮廣。ロザリーナは2016年に西野作の絵本「えんとつ町のプペル」のテーマ曲を大王とロザリーナ名義で歌唱し、2020年12月に公開されたアニメーション映画版『映画 えんとつ町のプペル』ではエンディング主題歌「えんとつ町のプペル」を担当して、歌という形で作品世界を彩った。ロザリーナと西野亮廣の対談で西野は、「こんなにファンタジーが似合う人はいない」とその歌声を評し(※1)、同曲のMVは現在670万回再生を超えて広く愛されている。また「音色」(アニメ『妖怪アパートの幽雅な日常』第二期EDテーマ)、「マリオネット」(アニメ『からくりサーカス』EDテーマ)や「百億光年」(アニメ『歌舞伎町シャーロック』EDテーマ)など、多くの曲がTVアニメやドラマ、CM曲に起用されている。ちなみに筆者のロザリーナとの出会いもこうしたテーマ曲で、深夜つけっぱなしになっていたテレビから「百億光年」が流れて、クレジットを確認してすぐに曲とアーティストを検索したことを覚えている。うまくいかない苦しさや自分の臆病さをセンチメンタルに綴った曲ではあるけれど、その歌声には哀しみだけでない何かがあってとても惹きつけられた。
2020年に1stアルバム『INNER UNIVERSE』、2021年に2ndアルバム『飛べないニケ』を発表し、アコースティックギターを基調にしたシンプルな曲から、ストリングスやホーンの瀟洒なアレンジが施された曲やエレクトロなどアルバムではカラフルにサウンドスケープを広げているが、そこで歌われるのはロザリーナの等身大の思いだ。インタビューで自身のソングライティングについて「嘘は書きたくない」と語り、溢れ出る感情や消化しきれない思いを、繊細にリアルに描く。1stアルバム『INNER UNIVERSE』に収録された「何になりたくて、」は現在、アルバム曲ながら10代の学生を中心に口コミで広がってリスナーを増やし続けている。やらなければいけないことに押しつぶされそうになったり、〈痛くても笑っとこう〉とうやむやにしていた問題が爆発しそうになったり、余裕な顔をしてすれすれを生きていかなければならない感覚を、アコギにのせてさらりと、かつ深く確実に胸を刺す言葉と声で歌う「何になりたくて、」。忙しさの中で自分を見失いそうになる思いを、〈何になりたくてがんばってるんだっけ? こんなになるまでがんばって なりたかったのって何だっけ?〉と直球で描いた曲は、ロザリーナ自身の体験に基づく。誰にも見せないし、見せたくない正直な心の声に丁寧に向かい合っているからこそ、多くの人の心にも寄り添う曲になっているのだろう。