KMNZ、パフォーマンスで届けた3年半の軌跡と感謝 開催延期乗り越えた念願のリアルワンマンを観て

KMNZ、リアルワンマンに見た軌跡

VRとリアルが融合した自由で楽しい世界を体現

 2ndアルバム『KMNROUND』からの楽曲を多数披露したコーナーでは、寒い日本の冬を飛び出して、地球の裏側に行った気分にさせた。ダンスホールのエッセンスとEDMが融合した浮遊感あるトラックが実に心地よい「JOURNEY」。ボサノバの「TOKONATSU STYLE」では、ビジョンには風に椰子の木が揺れるサンセットビーチの映像が映し出され、会場は一気に常夏のハワイ気分に。コロナ禍で海外はおろか国内旅行もままならない現在だが、せめて楽曲だけでも旅気分を楽しんでほしいという2人の心意気が伝わった。

 また「DAYDREAM」を歌う際には機材トラブルが発生。「トラブルってつきものだよね。生ライブだし、しょうがないよね」と2人。まさしく旅にはトラブルがつきもの。きっとファンの心に、この日のライブとこの瞬間のできごとが、記念写真のごとく色濃く焼き付けられたことだろう。

 「SKOOL」「PRACTICE」という2曲の新曲も初披露された。「SKOOL」はThe Parliamentsのような派手なファンキーサウンドで、令和のオールドスクールといったところ。作詞をLITAが担当し、「ここからのKMNZを見ておけよという曲に仕上げてみました」とコメント。一方「PRACTICE」は、2018年8月にLITAがYouTubeにアップした最初の動画の曲をリメイクしたもの。作詞をYACAとLITAが担当し、デビューから今日までのことを振り返りながら書いたそうだ。ビジョンには2018年当時の動画も流れ、長きに渡ってKMNZを応援してきたKMNHZ(ファンの呼称)は感慨深かっただろう。

 他にもドラムンベースを取り入れた「RECOAT」、スローテンポのトラックにゆったりとしたラップを載せた本編ラストナンバー「GALAXY」など、ライブを通して感じたのは、DJ/クラブシーンに寄り添いながら、幅広い音楽ジャンルに対応していること。音楽的な懐の深さはほかに類を見ない。実際2人のYouTubeチャンネルには、J-POPからヒップホップ、ロックバンドと、実に幅広いアーティストのカバー動画があがっている。どんな音楽ジャンルやトラックにも、柔軟に対応するフレキシブルさ。確固とした実力とスキルがあればこそだろう。

 アンコールの最後は、KMNZのデビュー曲である「VR」でライブを締めくくった。ビジョンにはエンドロールが流れ、そこには関係スタッフや出演者、クラウドファンディングで支援したファン全員の名前がずらり。その最後には、2人の直筆メッセージが映し出された。

 LITA「活動を始めて3年以上。私たちの活動に意味を与えてくれてありがとう。ワンマンライブを迎えさせてくれて、見届けてくれて本当にありがとう。ここからまたスタートです」

 LIZ「大好きな相方とこの晴れ舞台に立てて本当にうれしいです。今日は最終回でもなんでもなく、デカい通過点に過ぎない。ガチでありがとう。愛してるぞ!」

 かつてlivetuneは、livetune feat. 初音ミク「Tell Your World」で、世界中がインターネットで繋がる未来を示唆した。あれからちょうど10年。KMNZの「VR」は、リアルとVRが繋がっていくことのワクワクとドキドキと、バーチャルが日常に溶け込んだ新しい世界がもう目の前に迫っていることを歌った。〈あと1ビット〉。KMNZを通じて広がるバーチャルとリアルが融合した世界は、すごく自由で楽しそうだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる