高橋李依、永塚拓馬、高塚智人……加速する声優のアーティストデビュー この1年の動きを総括
“声優”という存在がアニメファン・声優ファン以外にも馴染み深くなったであろう2021年も、“声の表現”のひとつとしてアーティストデビューを果たす声優が続々と誕生した。その流れは、年が明けて2022年を迎えても変わらない。そこで本稿では、2021年にアーティストデビューした声優の活動・活躍を振り返ったうえで、2022年にアーティストデビューを控える期待の声優についても紹介していきたい。
自身の表現の場としての音楽活動
2021年のアーティストデビュー組において、「様々なアニメ作品での活躍を経て、新たな表現の場として音楽活動を開始する」という意味での“王道”的なデビューを果たした声優として真っ先に挙げられるのが、高橋李依ではないだろうか。特に2010年代後半以降、数多くの作品で多彩な役柄を演じ続ける彼女のアーティストデビューは、まさに“満を持して”と呼ぶにふさわしいものだった。だがそのメタ的な“王道”さとは対照的に、“夜好性”を志向した楽曲から構成された彼女のデビューEP『透明な付箋』は、音楽シーンにおける流行と敏感にリンクした、従来の声優アーティストの音楽作品とは一線を画した鮮烈な仕上がりとなった。今年2月には初のバースデーイベントの開催も決定しており、2022年以降は視覚面も含めたアーティストとしての深化に期待が高まる。
その高橋と同じく声優ユニット・イヤホンズのメンバーでもある高野麻里佳も、昨年2月にソロアーティストデビュー。こちらは高野自身が志向するグッドソングでもあり、一作目としての王道感にもあふれた「夢みたい、でも夢じゃない」を表題に据えてデビューを飾ると、2ndシングルのタイトル曲「New story」では、同楽曲がオープニングを飾るアニメ『精霊幻想記』(テレビ東京系)の世界に寄り添うなど、楽曲の立ち位置に応じて柔軟にその色を変えた表現を行なっている。1月10日には初のワンマンライブ、2月には1stフルアルバム『ひとつ』のリリースもそれぞれ決定しており、こちらもさらなる活動に期待したい。
そしてもうひとり、ダンサブルなナンバーを集めたミニアルバム『dance with me』でソロデビューした永塚拓馬も、今後さらに注目したい声優アーティストだ。甘い歌声で聴かせる楽曲はもちろんのこと、自身の公式YouTubeチャンネルで公開した表題曲「dance with me」のPerformance Videoは必見。ダンサーを従え、定点カメラを前にワンカットでフル尺を見事に踊りきっただけではなく、王子様感さえあるスタイリッシュなパフォーマンスを披露した。コロナ禍という生のパフォーマンスの機会が限られる状況でも、多くの人を惹き付けるための試みに果敢にチャレンジし、質の高いものを見せてくれた。
その他にも、クールかつフロアライクなナンバーである「Elder flower」が『令和3年アニソン大賞』の新人賞を受賞した大西亜玖璃や、高い歌唱力と聴く者を自然と明るくさせる歌声・パフォーマンスを届けてくれた岡咲美保などの新人声優も、アーティストとしての歩みをスタートさせた。今後も活動のなかで各々の個性を磨き上げ、新たな武器を発見してくれることに期待したい。