一途な愛、不屈の信念……King GnuやEveが音楽で提示する『呪術廻戦』における“呪い”の解釈

 3曲目は、同じくKing Gnuが手掛けた「逆夢」だ。映画公開日の12月24日に、彼らのもう一つの新曲である同曲が劇場版のエンディング曲として起用されることがサプライズ発表され、大きな話題を呼んだ。「白日」直系のメランコリックなバラードで、バンドサウンドとオーケストレーションの結合が美しい。同曲はすでに配信リリースがされているが、何度聴いても、今回の劇場版の壮大な物語を締め括るにふさわしい楽曲であると思う。

 そして、やはり特筆すべきは、『呪術廻戦』と深く共鳴する楽曲のメッセージだ。本来は一つひとつの歌詞を丁寧に紹介していきたいが、ここでは特に象徴的な一節を挙げたい。〈この愛が例え呪いのように/じんわりとじんわりと/この身体蝕んだとしても/心の奥底から/あなたが溢れ出して/求め合って重なり合う/その先で僕ら夢と成れ〉あまりにも鋭く、深く、『呪術廻戦』という作品の本質を射抜いた歌詞であると思う。「愛」とは、つまり「呪い」のようなものであるという考え方は、極めて痛切なもので、悲劇的なイメージをも想起させる。そうした「愛」を貫き通し、守り抜き、そして乗り越えていくために壮絶な戦いに身を投じていく乙骨の心境を、この一節は美しく表している。今回の劇場版のエンディング曲として、これ以上に最適なテーマはなく、非常に幸福な形のコラボが実現したと思う。

 今回は、3つの楽曲を紹介したが、これからも、アニメ『呪術廻戦』の展開が広がっていく中で、新しい主題歌が生まれていくだろう。そしてその中から、社会現象をリードするような新たな時代のヒットソングが誕生すると思う。今回の劇場版の大ヒットを受けて続いていくであろう、2022年以降の展開にも期待したい。

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