石崎ひゅーい、“歌”で牽引したバンド編成ツアー アルバム『ダイヤモンド』にも高まった期待

石崎ひゅーい、歌で牽引したバンド編成ツアー

 歌詞の一部を変えて2021年現在の曲として歌った「メーデーメーデー」。同じく今にリンクするリアルな手触りを感じさせた「夜間飛行」、「僕がいるぞ!」。またもや手で庇を作りながら盛り上がる観客を覗き込む石崎の姿を見て思った。そうだ、人と人が触れ合えない世の中でも、歌ならば駆けつけられるのだ、と。そうして曲数を重ねていき、いよいよ終盤かと思われた頃、アコースティックギターのストローク、同期によるフィドルの旋律が異国の風を呼ぶ。ここで「ジャンプ」が登場。私立恵比寿中学への提供曲のセルフカバーで、『ダイヤモンド』では1曲目に配置されている曲だ。石崎版はケルトアレンジとなっていて、祝祭感溢れるサウンドがライブのクライマックスを彩っていく。

 「愛をこめて1曲歌います。心の中で一緒に歌ってください」。そんな言葉が添えられた珠玉のバラード「花瓶の花」のあと、最後には「アヤメ」が届けられた。曲の始まりは歌と鍵盤とギターのみ(休符のタメ具合まで共有しているような、トオミとのコンビネーションが素晴らしい)で、順に楽器が加わっていく構成。パステルカラーの照明の下、繰り広げられるアンサンブルはじんわり温かい。落ちサビはトオミとの二重奏。石崎はステージのギリギリまで前に出てきて、できるだけ観客に近づいてから歌を届ける。MCで『ダイヤモンド』について「この5年間生活の中にある小っちゃな輝きを見つけて、1個1個削ったり磨いたりしてきたなと思って。自分で言うのも何だけど、素晴らしい、結晶のようなアルバムができたと思っています。ぜひ受け取ってやってください。そしていろいろなところに連れていってやってください」と語っていた石崎。アルバムにも収録される「アヤメ」は、その言葉を象徴する曲と言えるだろう。何気ない日々の尊さを歌ったバラードが、ライブハウスを出たあとも続く生活をさらに大切なものにさせてくれる。胸の中に残った温かな余韻は、石崎が私たち一人ひとりに渡してくれたものだ。

 『ダイヤモンド』について語る際、石崎はこうも言っていた。「最初の頃は何でも1人でできるんじゃないかと思っていました。でもいろんな経験をして、みんなとたくさん同じ時間を共有して気がついた。石崎ひゅーいの音楽はみんなが聴いてくれて初めて完成するものだと」。聴き手と直接顔を合わせ、噛み締めた実感とともに10周年がここから始まる。「まだまだ見せたい景色があるからみんなついてきてください」とのことなので、『ダイヤモンド』の到着を楽しみにしつつ、今後の報せにも期待したい。

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