ペンタトニックスが彩るホリデーシーズン アカペラの奥深さ際立つXmasソングカバーの魅力

ペンタトニックス、Xmasソングカバーの魅力

 ペンタトニックスの最新クリスマスアルバム『エヴァーグリーン』はホリデーシーズンアルバムであると同時に、非常に意欲的な内容に仕上がっている。ご存知のとおり、彼らは今年2月に最新オリジナルアルバム『ラッキー・ワンズ』をリリースし、さらにLittle Glee Monsterとのコラボ曲「ミッドナイト・イン・トーキョー」など新曲を多数追加した『ラッキー・ワンズ【ジャパン・デラックス・エディション】』をここ日本でも9月に発表したばかり(※1)。『ラッキー・ワンズ』や同デラックス盤でも音楽的進化や新たなチャレンジを随所から見つけることができたが、今回の『エヴァーグリーン』にも結成10周年を迎えたグループならではの貫禄に加え、これまでにない新鮮な要素が豊富に散りばめられている。

 その『エヴァーグリーン』だが、「ウィー・ウィッシュ・ユー・ア・メリー・クリスマス(おめでとうクリスマス)」といったトラディショナルな楽曲や誰もが聴いたことのある往年のクリスマスソングのカバーに加え、セリーヌ・ディオン&アンドレア・ボチェッリ「ザ・プレイヤー」などクリスマスソングではないもののこのシーズンにぴったりなカバーソング、オリジナル新曲「エヴァーグリーン」といった全14曲を収録。この中にはゼッドとの「ステイ」(同曲はペンタトニックスもカバー済み)のヒットで知られるアレッシア・カーラをゲストに迎えた「フロスティ・ザ・スノーマン」、『アメリカズ・ゴット・タレント』出身で近年はYouTuberとしても活躍する有名バイオリニストのリンジー・スターリングをフィーチャーした「オーヴァー・ザ・リヴァー」も含まれており、オリジナル曲中心の『ラッキー・ワンズ』にも引けを取らない仕上がりだ。

 秘密裏に制作が進められたという本作について、メンバーのスコットは「このアルバムでは、クリエイティブ面で一層冒険したって感じかな。リスクを承知した上で。それにペンタトニックスとしてスタートした当時のルーツに舞い戻ったという感じでもあるんだ。1カ月間スタジオを借り切って、毎日スタジオに通って、あれこれ言いながら、みんなでいろんな曲を歌ってインプロヴァイズ(即興・アドリブ演奏)していった。スタジオ内にある物を使って音を出したりとか、ビートを作ったり。すごくオーガニックで楽しい、そしてクリエイティブな作業だったんだ」とコメントを残している。こうした言葉からも、今作が過去のクリスマスアルバムとは一線を画するものであることが窺える。

Pentatonix - "The Prayer" - OFFICIAL VIDEO

 ペンタトニックスはこれまでに、数多くのクリスマスアルバムや関連作品を発表しており、リスナーの中には「クリスマスソングといえばペンタトニックス」と認識している人も多いはず。ジョン・レノン「ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)」やWham!「ラスト・クリスマス」、マライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」など、2021年の今も定番クリスマスソングとして愛され続けている海外ポップスは数多く存在するが、特にペンタトニックスの登場以降は“クリスマスのお供にペンタトニックスのクリスマスアルバム”という声も少なくない。それほど、クリスマスシーズンやウィンターシーズンとペンタトニックスのアカペラアレンジは相性抜群なのだ。

 国内で最初にリリースされた彼らのクリスマスアルバムは、日本デビュー作『PTX Vols. 1&2(ジャパン・エディション)』(2014年7月発売)に続いて発表された『ザッツ・クリスマス・トゥ・ミー(ジャパン・エディション)』(同年11月発売)だった。同作は「サンタが街にやってくる」「きよしこの夜」など伝統的な楽曲に加え「レット・イット・ゴー」のカバーなども含まれており、ウィンターシーズンにぴったりな仕上がり。さらに、日本盤ならではのスペシャルプレゼントとして山下達郎「クリスマス・イブ」の英詞アカペラカバーも収録された、ペンタトニックスの代表的クリスマスアルバムの1枚だ。

 また、2016年10月には2作目のクリスマスアルバム『ペンタトニックス・クリスマス』を発表(ジャパン・エディションは11月発売)。同作はBillboard 200(アルバム総合チャート)で1位を獲得しており、アメリカでの人気ぶりが窺える。このアルバムでは「ホワイト・クリスマス」にて伝説的なコーラスグループのマンハッタン・トランスファーとのコラボも実現。アメリカを代表する新旧コーラスグループによる夢の共演を楽しむことができる。

 ペンタトニックスはこのほかにも上記2作のデラックス・エディションに、『クリスマス・イズ・ヒア!』(2018年11月発売)や『ウィー・ニード・ア・リトル・クリスマス』(2020年12月発売)なども発表。極め付けとして、クリスマスソングのベストアルバム『ベスト・オブ・ペンタトニックス・クリスマス(ジャパン・エディション)』(2019年11月発売)もリリースしているので、初心者はこちらから聴いてみることをオススメしておく。 

ペンタトニックスの画像1
『クリスマス・イズ・ヒア!』

 余談だが、『ラッキー・ワンズ』の日本デラックス盤に収録されたLittle Glee Monsterとのコラボ曲「ミッドナイト・イン・トーキョー」、およびその原曲となる「ミッドナイト・イン・トーキョー」だが、実は「クリスマス・イン・トーキョー」というタイトルのクリスマスソングに仕上げる予定だったという。スコットはこの件について、「実は『クリスマス・イン・トーキョー』というバージョンまで作ったんだよ。かなり前になるけど、実際にレコーディングもやったんだ。でも、アルバム『ラッキー・ワンズ』に収録するってことで、『ミッドナイト・イン・トーキョー』という元のタイトルに戻して、そっちを収録したんだ」とコメント。加えて「これってきっと『クリスマス・イン・トーキョー』もリリースしなさいってことだよね(笑)」とも語っているので、いずれ「クリスマス・イン・トーキョー」と題したクリスマスソングが日の目を見る可能性もゼロではないようだ。

[OFFICIAL VIDEO] Midnight In Tokyo - Pentatonix ft. Little Glee Monster
 

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