あゆみくりかまき、CY8ER、et-アンド-……“解散”と“結成”から見渡す2021年のアイドルシーン
fishbowl、et-アンド-らに見る新生グループの特徴
新型コロナをまたぐ形で活動しているアイドルグループは、その以前と以後で多かれ少なかれ戦略の練り直しが必要となった。一方で、新たに立ち上げられたグループは当然ながら、出口の見えないコロナ禍での活動を見越したものになっているように思う。
コロナ禍でのライブ鑑賞は、以前よりも各メンバーの一つひとつの動きを追い、歌やダンスを堪能するなど、「パフォーマンスをじっくり見る」というスタイルが増え、「こんなに良い歌詞だったのか」という新たな発見も多い。ライブだけではなく、ミュージックビデオなどの映像面を作り込んで魅力をアピールするグループもいる。コロナ禍にデビューしたアイドルの特徴のひとつに、“見る/見せる”に重点を置いたグループの多さがあるのではないか。
象徴的なのは、"しずおかアイドルプロジェクト"のもと2021年から活動を開始した静岡拠点の6人組・fishbowlだ。バンド・ふぇのたす(2015年解散)のギタリストで、数々のアイドルに楽曲を提供してきた静岡出身・ヤマモトショウがサウンドプロデューサーを担当。同じく静岡出身・諭吉佳作/menをゲストに迎えた「深海 feat. 諭吉佳作/men」は聴きごたえ抜群だった。よく静岡県の形が金魚に見えると言われることを受け、そんな金魚(=静岡)を包み込めるアイドルになれるように付けられたグループ名(fishbowl=金魚鉢)にちなんだ、アニメーションのミュージックビデオも好評を集めた。その活動には地元放送局も協力するなど、すみずみまで“オール静岡”が浸透しているところも注目だ。
7月に本格デビューを果たした元SKE48・野島樺乃率いるet-アンド-は、楽曲が実に多彩だ。またミュージックビデオはスマホ鑑賞を徹底的に意識して制作、プロデュース面にこだわりを感じさせる。雑誌『MARQUEE』がバックアップする今年3月デビューのJamsCollectionは、王道系らしい華々しさで見る者を圧倒。BiSHなどヒットグループを次々と放つWACKからは、ASPがデビュー。1stシングル曲「the MAN CALLiNG」は初期パンクを彷彿とさせるナンバーで、こちらのミュージックビデオもビデオカメラで撮影したようなギミックがあり見るものを飽きさせない工夫が施されている。
うすた京介が携わるきのホ。など期待の新グループ
上記グループはその出自にも注目が集まったが、“チーム”としてのユニークさがあるのは京都拠点・きのホ。だろう。『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』(集英社)などの作者で、“ハロヲタ”でも知られる漫画家・うすた京介が携わる同グループ。振付は、=LOVEなどを手掛ける竹中夏海。漫画を絡めた展開がどのように作用していくのか、今後の活動に期待したい。
そのほか2021年デビュー組では、ポップとディープのバランスが絶妙で中毒性たっぷりのYUP YUP、一度聴いたら曲が頭から離れないOn the treat Super Season、デビュー告知映像で流れる曲に類い稀感が漂うBuddha TOKYO 、賑やかなライブパフォーマンスが楽しいHULLABALOO、曲が可愛らしい鳥 very bird、視覚的なセンスが秀でているミソラドエジソン、良質なポップソングで伸び代が十分のalouetteなどは、まだ広く知られた存在ではないがここに付け加えておきたい。
まだまだ続きそうなコロナ禍。一進一退で手探りの状況ではあるが、2021年デビューのアイドルたちがその新鮮さでシーンを盛り上げていってほしい。