ヒグチアイ、“真感覚”を刺激した5周年記念ワンマン 新曲「劇場」の披露も

ヒグチアイ、5周年独演会レポ

ヒグチアイ(写真=藤井拓)

 ここからは「お悩み相談」のコーナー。あらかじめ募集していたファンの「お悩み」にヒグチが答えるというもので、「昔、自分をいじめた相手のことが今でも許せない。復讐したい気持ちとどう向き合ったらよいか?」という少々シリアスな質問には、「私にも、“死んでも許さない”と歌っている楽曲(「やわらかい仮面」)がありますからね」と笑いを取って場を和ませたあと、「相手のことを、許さない心も自分の価値だとわたしは思う。別に無理に許さなくてもいいんじゃないですかね。復讐も一気に使うのはもったいないから、自分が幸せになるなどして少しずつ復讐してやりましょう」と、ヒグチらしい「回答」を述べていた。

 他にも「リモート飲みで愚痴を聞かされるのが苦痛。うまく立ち回る方法を教えて欲しい」や、「今、片思いの相手がいるのですが、『好き』を伝える勇気が出る言葉をください」といった「お悩み」が紹介され、独特の視点から切り込むヒグチの、鋭くもクスッと笑える「回答」の数々に会場は大いに沸いていた。

ヒグチアイ(写真=藤井拓)

 ライブ後半は「東京にて」からスタート。東京五輪に向けて再開発が進む渋谷を舞台に、サラリーマンやOL、バンドマン、ホームレスなど様々な立場の人々の視点を描き出す。この曲の、〈見えてるものは一緒でも 違う方法で見つけたものだろ〉というフレーズは、「お悩み相談」のコーナーでも垣間見せたように、一つの物事に対して様々な視点を持たんとする彼女の信念を象徴するものだ。

 高揚感たっぷりのメロディと、予想を裏切るコード展開に胸が熱くなる「mmm(未発表曲)」、3カ月連続リリースの最後を飾った疾走感あふれる「やめるなら今」と続け、ライブはいよいよ終盤へ。高速パッセージが圧巻の「前線」、ヒグチアイの代名詞的な名曲「備忘録」を披露し本編は終了。アンコールでは、新曲「劇場」を歌い、この日のライブを締めくくった。

「一人で生きていても、一人で生きていると思っていても、こうやってライブを通じてわたしとあなたが出会ったことは、もうちょっと先までのわたしを作っていると確信しています」

ヒグチアイ(写真=藤井拓)

 この日、ステージで焚いていたものと同じ香りのするキャンドルを、来場者全員に配布していたヒグチ。香りには記憶を呼び覚ます力があるが、このキャンドルの香りを嗅ぐたび、きっと私たちは今夜のことを思い出すだろう。

■セットリスト
1.ココロジェリーフィッシュ
2.距離
3.悲しい歌がある理由
4.ぽたり
5.縁
6.かぞえうた
7.東京にて
8.mmm(未発表曲)
9.やめるなら今
10.前線
11.備忘録
12EC.劇場(新曲)

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