『ミラベルと魔法だらけの家』、現実世界も明るく照らすディズニー・ミュージカルとコロンビア音楽の融合

『ミラベルと魔法だらけの家』音楽の魅力

 現在公開中のディズニー映画最新作『ミラベルと魔法だらけの家』は、『モアナと伝説の海』以来、実に4年ぶりとなる新作ディズニー・ミュージカル作品。さらに、ディズニー長編アニメーション60作目という記念すべき作品で、物語の舞台となる南米・コロンビアの音楽が、見る者を笑顔にさせる。また、日本版エンドソング「マリーポーサ 〜羽ばたく未来へ〜」をナオト・インティライミが担当。音楽を通じて、明るい希望と未来へ向かう勇気を与えてくれる。

 魔法の力を持つ不思議な家から、“魔法のギフト(才能)”を与えられたマドリガル家に生まれながら、たった1人だけギフトをもらえなかった主人公・ミラベル。ある日、魔法の力が失われようとしていることに気づいたミラベルは、その危機から家族を救うために奮闘。高揚感溢れるトランペット、鳴り響くアコーディオン、軽快に打ち鳴らされる太鼓のリズム。明るく陽気なコロンビアのホットな音楽が、ミラベルの活躍を彩っていく。

 舞台となるコロンビアは、コーヒーやエメラルド、花の一大産地。ミラベルの姉・イサベラが花を咲かせるギフトを持っているのは、コロンビアが花の産地であることも要因だろう。ヨーロッパやアフリカなど多彩な文化が混じり合うことで、1000を超えるリズムと150種類以上の音楽ジャンルが生み出されたと言われている。ラテン音楽をベースに様々な音楽が融合し、“クンビア”や“バジェナート”といったコロンビア独自の音楽も生まれている。また、シャキーラやフアネスといった世界的アーティストも多数輩出。そんなホットな国であるだけに、その音楽とディズニー・ミュージカルが融合していることからも、本作において音楽は特に重要なポイントなのだ。

 音楽を手がけたのは、ブロードウェイミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(2008年)や、脚本・作詞・作曲・主演を務めたミュージカル『ハミルトン』(2015年)でトニー賞Ⓡ、グラミー賞Ⓡなど数々の賞を受賞したリン=マニュエル・ミランダ。ディズニー作品としては、『モアナと伝説の海』、さらに『メリー・ポピンズ リターンズ』などに参加しており、『モアナと伝説の海』では主題歌「How Far I'll Go」の作詞・作曲を担当。『ミラベルと魔法だらけの家』では全楽曲を手掛けている。

 物語の冒頭、ミラベルがマドリガル家の成り立ちを語る楽曲「ふしぎなマドリガル家」は、賑やかな太鼓のリズムとアコーディオンの音色が印象的な、実に陽気で華やかなコロンビアらしい楽曲だ。ミラベルが家族とその家族に与えられた魔法のギフトを次々と紹介する楽曲で、ミラベル自身もそんなマドリガル家の一員であることに誇りを持っている様子が歌われている。音楽と共に街中を飛び回りながら人々と交流していくミラベルのシーンからは、コロンビアにおいて日常生活に音楽が欠かせない存在であることも伝わってくる。

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 ミラベルは明るく誰にでも優しい性格。しかし、普段は気にしていないふりをしているが、自分だけギフトを与えられなかったことを気に病んでおり、またミラベルの両親もそれを気に掛けている。劇中歌「奇跡を夢みて」には、そんなミラベルの本心が表れている。悲しみと絶望、そして自分も本当はギフトが欲しいんだという渇望。ミラベルの日本版声優を担当する斎藤瑠希は、ラテン調のミディアムバラードに乗せて、ミラベルの魂の叫びのような歌声をエモーショナルに聴かせる。

「ミラベルと魔法だらけの家」♬「奇跡を夢みて」MV60秒

 他にも、パワーのギフトを授かり町の人に頼りにされるミラベルの次姉・ルイーサ(CV:3時のヒロイン・ゆめっち)が、その力を失いかけていることに不安を表す時、花のギフトを授かった美しく真面目な性格の長姉・イサベラ(CV:平野綾)が、実はもっと自由に生きたいと本音を吐露する時に、南米特有のリズムを交えながらキャラクターの心情を表現したサウンドがセリフと共に奏でられる。そしてミラベルが物語の核心に触れ、クライマックスを向かえる時の音楽は、実に壮大で感動的だ。

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