INORANが音楽を通して続ける心の旅 時代におけるミュージシャンとしての役目も語る

INORANが音楽で続ける心の旅

確実にハッピーエンドに向かっている

ーー歌詞についても聞かせてください。前回のインタビューでは、『Libertine Dreams』や『Between The World And Me』に対して「誰かの人生のサウンドトラックを作りたい」とおっしゃっていましたが今作はどうようなテーマで進めたのでしょうか?

INORAN:過去2作の延長線上で、映画やドラマでいったらシーズン3といったところかな。

ーーそのシーズン3に主人公がいるとしたら、このアルバムではどういう人生を歩んでいるんでしょう?

INORAN:まあ、頑張っているんじゃないかな(笑)。もがきながら頑張っているけど、確実にハッピーエンドに向かっていると思いますよ。

ーー使われている言葉や表現というのも、前の2作よりはポジティブなものが多い印象があります。

INORAN:去年の楽曲よりは「旅」感がもうちょっとね、心の旅といいますか、今こそ旅に向かおうという、そういうリアルさが強まっているかな。それこそどの曲の主人公もいろんなことを経て成長しているだろうし、より強くなり、そして優しくもなっている。魅力的で愛すべきキャラクターになっていると思います。

ーー作詞には前2作にも参加していたジョン・アンダーダウン、ネルソン・パビンコイに加え、今回新たにマーク・ステイン、ティム・ウェラードの2名が参加しています。

INORAN:これも縁ですね。紹介してもらったんですが、このタイミングで出会えたことは縁だと思うので、お願いしました。

ーー作詞を依頼するときには、すでに曲のタイトルは決まっているんですか?

INORAN:その時点では、ほぼないですね。サウンドは今とほぼ変わらず、メロディに適当な言葉を乗せて歌っているデモを、違う仮タイトルが付いた状態で渡しています。

ーーでは、歌詞が上がってきてキーワードとなるようなフレーズからタイトルが決まる?

INORAN:大体書いてくれた作家さんがタイトルを提案してくれるので、そこからのチョイスも多いですね。

ーーその届くタイトル案は、INORANさんの中のイメージと合致するものが多いんでしょうか?

INORAN:良い意味で、いつもイメージの外かな。

ーー自分の想像を超えてくると。

INORAN:それを願ってオーダーしているし、そもそもイメージ通り/イメージ通りじゃないという思考がないかな。ちょっと強い言い方をすると、バックトラックを作ってメロディがある時点で、僕は彼らに対して仕掛けているわけなので、それを受けて戻ってくるものがどんなものであれ自分を映し出した鏡なわけだし、それに対してネガティブなことは思わないですね。

 こういう作業は僕にとって、バンドでセッションしているのと変わらないというか。ライブであってもバンドセットのアルバムであっても、自分ひとりでやるのはすごく味気ないですし、ライブなら自分ひとりでドラムを付けてベースを付けてギターを弾いて歌うということもできないので、そういう意味で歌詞を書いてもらうこともセッションなわけで、それが最終的に自分の栄養になっていくんです。

ーーなるほど。『ANY DAY NOW』というアルバムタイトルとアートワークについても聞かせてください。これらは前2枚と比べるとテイストが異なるものですが、どういう流れから生まれたものなんですか?

INORAN:タイトルに関しては、ある映画を観てすごく感銘を受けて、そこで歌われていた歌詞の一部が今の時代に合っているなと思って書き留めておいて。最終的に完成したアルバムを聴いて、このフレーズがぴったりだなと思いタイトルにしました。

 アートワークについては……またパンデミックの話になるけど、結局は人とつながりたい、つながっていたいなという、そういう思いを抽象化できないかなと考えて。例えば旅をしたいと思ったときに、隣に誰かがいたほうが楽しいし、喜びも2倍にも4倍にもなる。そんな尊い思いを表現できたらいいなと思って、このジャケットにしました。

ーー今回の楽曲やサウンドにぴったりのアートワークですよね。そのあたりにも、2020年と2021年の違いが端的に表れていると思います。INORANさんと何度かお話させていただくなかで、常に「旅」というキーワードが出てきますが、これは文字通り移動を伴う旅や、人ひとりの人生の例えでもあるのかなと感じています。INORANさんにとって「旅」とは、どういう存在なんでしょう?

INORAN:ワクワクするものです。それはリアルな旅行や脳内の旅に限らず、うれしいことだったり楽しいことだったり、自分が好きなもの、好きと思えるものだったり。あるいは、目標でもあるのかな。それが先にあるから、自分が成長できるし頑張れるのかなと、今質問されて思いました。

ーーもちろんそこには出会いもあるでしょうし、いろんな発見もあるでしょうし。非常にポジティブなものですね。

INORAN:ワクワクを楽しまないと、旅ってつまらないじゃないですか。強風が吹いていても「風強い! 飛ばされそう! 楽しいなあ!」と思ったほうが楽しいし(笑)。ましてやひとりじゃない旅のとき、何かハプニングが起こったら「最高とまでは言えないけど楽しいね」と口に出して言うことが思い出になるし。それはワクワクする思考の素ですよね。

ーーLUNA SEAを始めてから30数年の間、いろんな旅が続いているわけですよね。

INORAN:LUNA SEAでは特にそうしています。どんな曲をやっていてもね(笑)。

ーーでは、音楽以外で最近ワクワクすることって何かありますか?

INORAN:ないですね(笑)。もうずっと音楽をやっているし、これが自分のすべてなので。音楽から離れてみても、結局は全部音楽に直結してしまうし。決してストイックというわけではないんですけど、根っからの音楽ファンなんでしょうね。

ーー前回のインタビュー以降、LUNA SEAのツアーも再開。ソロでも有観客公演を行ったりと、ライブに関しても少しずつ良い方向に向かっています。コロナ前と状況が変わったことで、改めて気づいたことはありましたか?

INORAN:もちろん以前とは全然違うものになって、当分もとには戻らないとは思うけど、(観客と)一緒に一歩ずつ、残ったもので楽しさを共有できているとは思いました。有観客と言われるライブができることは幸せなことですけど、声が出せない、マスクをしている、あるいはお客さんが立てない、お客さんが半分という状況も続いている。でも、そこに順応している自分がいるし、過去にフルスペックでやっていた頃と変わらない部分もある。だから、決して悲観的ではないですよ。自分の力で今できることをやって、それを観たお客さんに「来てよかったな」という思いを抱えて帰っていただく。そこに関しては一緒なわけですからね。

『ANY DAY NOW』
INORAN『ANY DAY NOW』

■リリース情報
『ANY DAY NOW』
発売:2021年10月20日(水)
完全生産限定盤(LP SIZE BOX) 
¥12,000+税/CD+Blu-ray+写真集
通常盤 
¥3,000+税/CD
<CD>
01. See the Light
02. Wherever,Whenever
03. Feel It In The Air
04. Live it Up
05. Run Away
06. A Beautiful Mess
07. Count Me In
08. No Way But Up
09. flavor
10. Dancin’ in the Moonlight

<BD>
Wherever,Whenever (Music Video)*
Between The World And Me (Lyric Video)*
*High-Resolution Audio 

■ライブ情報
「INORAN 2021-2022 PREMIUM ACOUSTIC LIVE」
11月23日(火・祝) Billboard Live TOKYO
1stステージ 開場15:30/開演16:30
2ndステージ 開場18:30/開演19:30

12月25日(土) Billboard Live OSAKA
1stステージ 開場15:30/開演16:30
2ndステージ 開場18:30/開演19:30

1月16日(日) Billboard Live YOKOHAMA
1stステージ 開場15:30/開演16:30
2ndステージ 開場18:30/開演19:30

オフィシャルサイト
http://inoran.org/

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