WACK×AKB48グループコラボ増加の背景は? 共通するアイドル文化へのカウンター精神
実際、『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on』の中で象徴的なのは、西武ドームでのライブ中の光景だ。メンバーたちは過呼吸にもがき、熱中症で倒れていく。舞台裏は戦場。それを裏付けるように、スタッフたちのポケットには、ビニール袋がすぐ取り出せる状態でしまわれている。過呼吸を起こしたメンバーに即座に対応できるようにするためである。
そんな状況を、明るく振り返っていたメンバーがいる。柏木だ。「なんかもう限界を超えてしまった。がむしゃらに、ほぼ気力だけでやっている感じが気持ち良かったです。ここまでやれるんだってことを知りました」。そう笑顔で語る柏木が、『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on』に衝撃を受けた渡辺と組むことになるというのは、約10年を経た伏線回収のようでもある。
しかし、前述したように、本当にAKB48が王道、WACKが邪道なのだろうか? たしかにAKB48はミリオンセールスを連発するグループに成長していったが、そもそも結成当初はAKB48が既存の「アイドル」のイメージへのカウンター的なものであった。AKB48もWACKも、そのスタート時において既存の「アイドル」へのカウンターであり、その意味で両者は本質的には近いはずなのだ。
運営会社で見れば、AKB48が所属するVernalossomは、前身であるAKSの設立が2006年。WACKの設立は2014年。ともに21世紀に入ってから生まれたエンターテインメント業界のベンチャー企業なのである。その間は10年もない。両者のコラボが生みだしものを楽しみにしつつ、実は「AKB48グループの歴史を振り返ると、WACKの未来が見えてくるのではないか?」という仮説が私の中で浮上しているのだ。