森山直太朗、リスナーの人生に寄り添い続けた歌手としての歩み デビュー20周年で迎える充実の季節
2021年に森山直太朗がデビュー20周年イヤーに突入。これまで以上に多彩かつ精力的な活動を繰り広げている。
まずは2021年の元旦、YouTubeチャンネル『森山直太朗のにっぽん百歌』を開設。「“ギター1本で、好きな曲を好きな場所で弾き語る」をテーマにした同チャンネルでは、魅力的なコラボレーションも実現。日本各地の様々な場所から「どこもかしこも駐車場 feat.ハナレグミ」「最悪な春 feat.安藤サクラ」、「生きてることが辛いなら feat.瑛人」などが配信された。(個人的おすすめは、コンビニから直太朗が一人で弾き語る「コンビニの趙さん」)
卒業シーズンの3月には、“森山直太朗×カロリーメイト”による「『さくら』を贈るプロジェクト」が行われた。「さくら(二〇二〇合唱)」にのせてオリジナルの卒業記念動画を作ることができるプロジェクトで、コロナの影響で卒業式で歌が歌えない状況のなか、大きな反響を集めた。そして、この夏に放送された門脇麦主演ドラマ『うきわ ー友達以上、不倫未満―』(テレビ東京)に出演。妻の不倫に悩み、会社の部下の妻との微妙な関係に揺れる男性を好演した。
もちろん、音楽活動も充実している。原田知世主演ドラマ『スナック キズツキ』(テレビ東京)のエンディングテーマとして「それは白くて柔らかい」を制作し、9月29日にはデューク・エイセス、森山良子、さだまさし、石川さゆりなどが歌い継いできた名曲「遠くへ行きたい」のカバー音源を配信リリース。さらに第100回全国高校サッカー選手権大会応援歌として上白石萌音に「懐かしい未来」を提供した。また11月1日にスタートするNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で、AIが歌う「アルデバラン」の作詞・作曲を担当したことも話題を集めている。
昨年以降、音楽番組への出演、YouTubeチャンネル、TikTokを活かしたコンテンツの配信、オンラインライブ、楽曲提供などを通し、積極的に“歌”を届けてきた森山直太朗。コロナ禍になり、「さくら(独唱)」「夏の終わり」「愛し君へ」「生きてることが辛いなら」など、これまで生み出してきた名曲に再びスポットが当たっているのは、直太朗の楽曲が“生きるとは?”、“幸せとは?”、“別れとは?”という人間の根本的なテーマを、平易な言葉と豊かな音楽性とともに紡ぎ出してきたからだろう。
その根底にあるのはもちろん、彼自身の歌の力だ。一つ一つの言葉を聴き手に手渡すような繊細さと、大らかな解放やカタルシスをもたらすスケール感を併せ持ったボーカルは、20周年を迎え、さらなる充実を感じさせる。40代半ばになり、彼自身の人生経験もまた、歌を伝える力や説得力につながっている。フォーク、歌謡曲に根差した音楽性もまた、流行に左右されず、幅広い層のリスナーに支持されている理由だろう。