FOMARE『THE BEST HITS 20』ファン考案のセトリが丸ごと実現 レア曲交えた全身全霊のステージ

 ライブの理想のセットリストを考える。好きなバンドのライブはそれだけで楽しいが、もしも、選りすぐりのお気に入りの曲を詰め込んだセットリストで演奏をしてくれたら、どんなに幸せだろうか。音楽ファンならきっと誰しもが考えたことがあるはずだ。

 ファン投票がセットリストに反映されるライブはあれど、たった1人のファンが考えたセットリストがそのまま演奏されることなんて、ほぼないと言ってもいいだろう。しかし、それを実行したのがFOMAREである。

 彼らはこれまでも渋谷駅地下コンコースにてゲリラで新曲を配布したり、TSUTAYA O-WESTに来場した先着1組の前でライブを行うなど、ファンを驚かせる“実験”をしてきた。そして実験第3弾として行われた、今回のファン考案セットリストでのワンマンライブ。そんな唯一無二の公演をレポートする。

アマダシンスケ

 ファンファーレのようなSEと遊園地のパレードを想起させるアナウンスが流れたあと、リスナーの盛大な拍手に迎えられながらステージに登場した3人。手を高く掲げながら意気揚々と登場する姿には、気合十分であることが目に見えて伝わってくる。初めに奏でられたのは、疾走感溢れるロックナンバー「今」。開演早々オグラユウタ(Dr/Cho)が力強いスネアドラムのサウンドを会場に響き渡らせ、リスナーの気持ちを高揚させていく。そのまま「Frozen」「humanism」とアッパーチューンを連続でドロップ。アマダシンスケ(Vo/Ba)が途中で手を挙げたり自分の服の胸元を掴んだりと、音だけでなく全身で曲を表現していく。彼らの楽曲は全歌詞日本語でストレートに訴えてくる印象があるが、アマダの身体を使ったパフォーマンスも相まって、さらに心に響くようになっているのだと感じた。

 「改めましてFOMAREです、よろしくお願いします!」(アマダ)と挨拶し、この日を楽しみにしていたことを告げる。そして、この日のセットリストはくじ引きにより選ばれたハヤシケンタロウさんが考えたセットリストで進行していることが発表された。

 本ライブのハイライトとなったのは、7曲目に披露されたミドルナンバー「黒髪少女」。本曲は2015年にFOMAREが1000枚限定で無料配布した初のデモCDに収録されている曲だ。バンド初期に小さなライブハウスでやっていた楽曲を、メジャーデビューを経てZepp DiverCityという大きな会場で演奏している事実が、楽曲をよりドラマチックに引き立てた。さらに演奏が終わってからは、アマダが「この曲を書いたときは当時の恋人との時間を乗り越えようとしていたことを思い出します」と呟くように言うものだから、勝手ながらも当時の苦労や葛藤を想像してしまって、なんだか一気にエモーショナルな気持ちになった。

 真っ直ぐだが少し切ない歌声と、落ち着きのあるベースラインで構成されるアマダのソロパートのあと、ギターが重ねられていくというコンビネーションが堪らない「stay with me」で徐々にギアを上げていき、アグレッシブな「悲しいハッピーエンド」に繋げていく。

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