ワルキューレ『Walküre Reborn!』の音楽的魅力とは? 堂島孝平、坂本真綾らが引き出す5人の歌声

 一転して「キズナ→スパイラル」は、ポストロックバンドのハイスイノナサでの活動やsora tob sakanaで音楽プロデューサーを務めてきた照井順政による1曲。ドラムスに松下マサナオ、ベースに中西道彦、ピアノに別所和洋とYasei Collective(別所は元メンバー)が揃い、照井もギタリストとして参加している。彼らの細やかなプレイで支えられたバンドサウンドに、エレクトロニカな要素も挿しこみ、そこにレイナΔ東山奈央によるウィスパーな歌声がうまく掛け合わさっている。複雑かつ緻密さに溢れたサウンドは、ミステリアスなムードを描いた1曲になっている。

キズナ→スパイラル

 作編曲:北川勝利と作詞:坂本真綾によって制作された「愛してる」は、ミディアムテンポのラブソング。フレイアΔ鈴木みのりによるボーカルは、明るい歌声を全力でぶつけていた結成当初とは違い、非常に優しいタッチの声をメロディに乗せ、伸びやかに歌い上げている。

 それに加え、〈愛してる〉という言葉を2小節半分に渡り使い強いメッセージを訴えているにも関わらず、しつこさを全く感じない。鈴木のボーカリストとしての成長はもちろん、本作全編でミキシングを担当した高須寛光の手腕も見事である。

「愛してる」

 本作には他にも椿山日南子による「唇の凍傷」をはじめ、これまで「一度だけの恋なら」「ワルキューレがとまらない」などでタッグを組んできた加藤裕介と唐沢美帆による「ワルキューレはあきらめない」「ALIVE〜祈りの唄〜」は、曲調などは違えど5人のボーカルを存分に活かした2曲だ。

ALIVE〜祈りの唄〜

 メンバー5人がシンガーとしてそれぞれ大きく成長し、歌謡曲らしいアクの強いメロディと様々なサウンドがバランス良く組み上げられているワルキューレの最新作。それらをうまく表現するために、作詞・作曲家だけではなく、名うてのプレイヤーをも適所に配したことで素晴らしい楽曲が誕生した。

 『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』の関連楽曲を多く収録した本作だが、アニメカルチャーの文脈から離れてみても、音楽的魅力を多く含んだ1枚である。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる