神宿、デビュー7年の集大成 初の大規模アリーナワンマン公演で掲げた未来への誓い

「私たちは1人でも多くの人に笑顔とか希望とか、そういうものを届けたいと思って活動しています。今日、アリーナでみんなの前に立っていますが、もっともっと大きな場所で、もっともっとたくさんの人にそれを届けるのが私たちの夢です」

神宿

 最後の挨拶で羽島めいが、自分の思いの丈を熱く語った。

「コロナ禍でも何かできることがある……私たちはそう信じて、みんなの前で歌うことをやめないです、届けることをやめないです。みんなが私たちのライブに来ることによって、自由に生きられるように、一歩を踏み出す勇気の後押しになればいいなと思って、こうしてステージに立っています。だから心配しないでください。これからも私たちが必ずみんなの居場所になります。何か迷った、挫けそう、つらい、泣きそう……そんなときは私たちのことを思い出して、音楽を聴いて、会いにきて。私たちがこれからも、みんなのことを守り続けます!」

 その力強く頼もしい言葉に、音楽やアイドルが人を楽しくさせ、幸せにする力があることを、そしてその力を自分たちは持っているのだという、大きな自信が感じられた。『神宿 7th Anniversary Live:WE ARE KAMIYADO』は、それが言葉だけでないことを証明してくれた、そんなライブだった。

 2014年9月28日に初のワンマンライブを開催してから7年、2021年9月26日、神宿はグループ最大規模となる、ぴあアリーナMMのステージに立った。

 この日は事前告知なしの、グループ初となるまさかのバンドセットライブだった。ここ数年の神宿が向いている、ポップミュージックにおける海外トレンドを意識した音楽性に、バンドセットをぶつけてくることに驚いた。しかし、韓国のボーカルグループが、音源とは異なるアレンジでのバンドセットライブを展開していることもまたトレンドであり、神宿がそこに挑戦したことは必然の流れだったのかもしれない。なによりも、生演奏の音を背に受け、ヘッドセットマイクで自由闊達に歌う5人の姿がいつも以上に輝いていた。

 ライブは生のビートの「Trouble」で幕開ける。音源とは一味も二味も違う、初めて耳にする神宿サウンドだ。人間味が溢れながらもタイトにキマるスネアが心地よい。間髪入れずに小気味良いギターのカッティングに誘われ、「Caramel Sweet」へと流れていく。「全員幸せにして帰すのでよろしくお願いします!」と羽島めいが威勢よく叫ぶ。

 5色に彩られた会場のペンライトに迎えられ、5人はステージ中央にせり出した花道をゆっくり歩きながら「CONVERSATION FANCY」へ。伸びやかなメロディと折り重なっていく歌声が心地よい「はじまりの合図」、キャッチーなリズム展開とコミカルな振りが楽しい「春風Ambitious」と、アイドルらしい曲が続く。そんな空気感を一変させたのは、無数の火柱とともにはじまった「全身全霊ラプソディ」だ。エッジィなバンドアンサンブルが猛り狂う。一ノ瀬みかの野太い声が突き抜け、小山ひなの突き刺さるような声が急襲してくるかと思えば、塩見きらの清流のような声が耳にスッと入ってくる。ガーリーなポップスから、硬派なロックナンバーまでバシっとキメてくるのが神宿だ。

 5人はセンターステージへ移動し、舁夫(神宿のファンネーム)に向けて出していた宿題の確認タイムがはじまった。声が出せない状況下、事前にスマートフォンに録音していたメンバーへのコールを再生してもらおうという試みである。オーディエンスが一斉にメンバーに向けてスマホを掲げながら鳴らす光景はなかなかシュールであったが、想像以上に鮮明に聴こえる。スマホを通して、とはいえ、久しぶりに大勢の舁夫から自分の名前を呼ばれる5人は嬉しそうな表情を見せる。最後、羽島みきへの“みーにゃん”コールの中に“ミキティ”コールが混じっているという、綺麗なオチがついたところで本企画は大成功に終わった。ご満悦な5人はセンターステージからメインステージへと帰っていくのだが、途中グリズリーに襲われるという事件が発生。「グリズリーに襲われたら♡」が始まった。MVでもお馴染みのグリズリーが登場し、逃げ惑う5人。「タスケテ ワタシコワクテイッポモウゴケナイヨー」という塩見のセリフが最近は上手くなってしまった残念感もあったのだが、音源通りの見事な棒読みクオリティを再現し、演者としての矜持を見せた。

 ミュージカルテイストの同曲を、原曲のイメージ損なうことなく、バンドアレンジに仕上げたバックバンドの手腕に感服。対して、涼やかなダンスポップチューン「Brush!!」は良い意味でアイドルポップス、J-POPテイストにリアレンジ。この日、本編全曲の演奏を務めたバックバンドだが、どの楽曲のアレンジも聴き応えがあり、演奏もキレよく抜けよく、見事なサウンドを鳴らしていたことを書き記しておきたい。

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