神宿、デビュー7年の集大成 初の大規模アリーナワンマン公演で掲げた未来への誓い
メンバーのソロ曲は本公演の大きなハイライトであった。低く構えたエレキギターをストロークしながら透明感ある歌声を響かせた塩見、魔法のステッキを片手に客席側から可憐に登場した みき、ハンサムな立ち振る舞いで会場を沸かせた めい。5人による大人の色香醸すガールクラッシュなイメージ映像の直後に、お姫様ベッドからロリータファッションに身を包んで起き上がった小山。一ノ瀬は真っ赤なドレスを纏い、弦楽カルテットの流麗な響きとともに声量たっぷりの美声を響かせる。各々の個性を全面に出した演出と楽曲に、神宿のエンターテインメント性がよく表れていた。さらに、仲良し羽島姉妹によるユニット曲「SISTERS」と、一ノ瀬、小山、塩見による三つ巴ボーカルの表現力が鬩ぎ合う「Erasor」のコントラストが、煌びやかなアイドル性と本格的なボーカルグループとしてのアーティスティックな側面が介在する神宿の魅力を色濃くしていく。
ハッピーでポジティブナンバー「ほめろ」ではトロッコに乗ったメンバーが場内を巡り、たくさんの舁夫が灯したオレンジの光に包まれながら、「Orange Blossom」をベンチに座って歌い、本編は終了した。
舞台裏からダンサブルにステージへと向かうメンバーの姿をカメラが追った、ワンカメショーにて再登場した5人は、「お控えなすって神宿でござる」をいつも通りのオケで披露。ポジティブパワー全開のハイテンションステージに場内の熱が一気に上がる。そのままリクエスト曲「全開!神宿ワールド」、そして「Summer Dream」にはじまり「原宿戦隊!神宿レンジャー」を経由して「Action」で締める、全6曲のメドレーを畳み掛ける。往年のアイドルソングの応酬に、場内のペンライトはお祭り騒ぎ、舞いに舞った。
アコースティックギターとピアノの優しい音色で始まったのは「ミライノウタ」。2周年ライブのアンコールで初披露されたこの楽曲は、〈日本一の舞台でも 心を通わせ 会えたね 君たち 一人も欠けることなく さあこの先へ〉と綴られた、当時の神宿の絆を歌った特別な曲である。しかし、2019年1月にオリジナルメンバーの関口なほが勇退。その後、歌われることはなかった。しかしこの日、〈「ここで生きる」と誓ったあの日 大きな背中 追いかけたくて 429(しづく)溢れて6つの花を咲かせたいから〉と、関口の意志と“緑”を継いで2019年4月29日に神宿6人目のメンバーとして加入した塩見本人によって歌詞がリライトされ、彼女の歌声が加わって新しく生まれ変わった。〈本当の戦いが ここから始まるよ〉と、5人が向き合いながら輪になって歌う姿が印象的だった。
〈これが僕と君のミライノウタ〉〈ナ・ナ・ナナ・ナ 本当の戦いが・・・〉
最後の節を一ノ瀬が優しく歌い閉じると、メンバー一人ひとりが想いを言葉にした。
「これからもメンバーと舁夫さんと明るい未来に向かっていきましょーー!!」と、元気よく叫んだみき。「苦しみは幸せの数より多かった。それでもステージに立てているのは、いつも側で味方になってくれている舁夫さんのおかげです。ありきたりだけど大切にしている言葉を伝えさせてください、ありがとう」と感謝の意を述べる塩見。「7年アイドルをやり続けることができました。それは、ここに来てくれたみなさん、神宿を応援してくれている皆さんのおかげです、本当にありがとうございました!」深々と頭を下げる一ノ瀬。小山は「7年の間、諦めそうになったこともたくさんありました……それでも諦めなかったのはメンバーが助けてくたから、舁夫さんが支えてくれたから」と語り、1人で何もできない自分が嫌になるけど、周りに恵まれてきたからここまで来れたのだと、涙をいっぱい浮かべながら語った。最後にめいが、みんな夢を諦めないでほしいということ、その夢を叶えるための後押しに自分たちがなる、みんなの居場所になると強く言い切った。
最後の最後は「KMYD」。神宿が初めてステージで歌った、自己紹介の意味合いを込めたはじまりの楽曲である。六本木のライブハウスで歌われたこの楽曲が7年の歳月を経て今、ぴあアリーナMMに轟いた。
〈この想い 届いたなら そこから君とはじめたいの!〉
それは、神宿の新たなはじまりを宣言するように聴こえた。
名残り惜しい表情を見せながらメンバーがステージから去ると、スクリーンにはひとつの映画を閉じるようにエンドロールが流れる。応援してくれてきた人たちへの感謝と、〈今度は 私たちが 君のことを支えて見せるんだ〉〈私たち いっしょに進めたら大丈夫だよ〉と、彼女たちから皆へ、寄り添う気持ちを歌にした新曲「君といる」がしめやかに響いた。
5人はこの先どんな景色を我々に見せてくれるのだろうか。