わーすた、坂元葉月卒業前ラストツアー初日公演レポ ステージから伝わってきたメンバーの決意

わーすた、現体制ラストツアー初日公演レポ

 そうしたアイドルらしいステージから一転、ピンスポットに照らされた廣川の艶のある歌声で始まったのは「スタンドアロン・コンプレックス」。情感たっぷりの歌に合わせて、四肢を存分に使った表現で魅せていく松田。シャンデリアに照らされたなか、三品が凛としつつもどこか弱さをも感じる歌を継ぎ、その情緒を小玉、そして坂元が身体全体の躍動で繋げていく。鉄壁のツインボーカルと華麗なるダンサー3人という、わーすたのアーティスティックな魅力がここに極まった。

 ピンク色に染まったステージから、〈オレンジ染まる〉〈蒼く切ない〉と歌詞に合わせて照明が変化していく「四季ドロップス」。指先までしなやかでゆらゆらとした動きを見せながら、細やかな揺らぎを生むメロディを廣川と三品が丁寧にファルセットでなぞっていく「春花火」……季節を感じさせる歌が続いた。それは廣川のMCにあったように、わーすたと過ごした年月を感じさせるような、そんな一幕であった。

 たとえ、この日初めてわーすたを観た人であっても、あたかもずっと彼女たちを観てきたような、そんなどこか懐しい感覚に見舞われたことだろう。そう思っていると、ステージ全面に紗幕が落ち、映し出された絵本風のリリックとともに「ちいさな ちいさな」がやわらかに始まった。自分の弱さを他者に見せず、夢を叶えるために頑張っていくひたむきさを綴ったこの曲は、まさにアイドルの矜持を象徴する歌であり、わーすただかからこそ生まれた歌である。〈私が生まれた奇跡に 今、ありがとうと歌います〉と、カントリーフォークに合わせて歌う彼女たちの姿はなんとも美しく、同時にどこか儚いもののようにも感じた。

 インタビューVTRが流され、場内の笑いを誘いつつ思わぬ展開へ。インタビュー内容はいつのまにか聞き覚えのあるナレーションへ変化し、そのまま「メラにゃイザー!!!!! ~君に、あ・げ・う♪~」に突入する。ステージ中央に現れた、にゃこたんのオブジェとともに、秋冬制服の新衣装にお色直しして颯爽と登場した5人だが、松田ひとりだけ何かが違う。そのことに気づいた4人は、歌いながら何度も松田をいじっていくのだが、当の本人といえば自分がフィーチャーされているのだと勘違いしているようで、ご満悦な表情を見せていた。そのままライブはヒートアップし、なだれ込んだ「PLATONIC GIRL」。いつもであれば廣川と三品のスタンドマイクを使ったアクションが見どころの楽曲だが、この日はハンドマイクでのフリーなスタイルで歌う。2人は、マイクは左手固定というアイドルのセオリーを無視し、ロックバンドのボーカリストさながらの激しい動きでオーディエンスを煽る。それに応えるように客席からいっぱいの拳が上がった。

 ここで、松田が衣装チェンジの折、猫耳だけ前衣装のまま2曲披露していたことを指摘され、恥ずかしがりながらあたふたとはけていく。微笑ましいハプニング、(三品曰く)“リアル猫耳変更タイム”を経て、「雨のキモチ」をライブ初披露。

「私たちが今見てほしいライブを、みなさんの目で見ていただけていることにすごくしあわせを感じています。私たちにとってライブはすごく大切にしている時間で、それを一緒に過ごしてくれているみんなに、言葉にするとありきたりになるけど、この言葉を伝えたいなって思います」

 松田の言葉から、最後に送られたのは「スーパーありがとう」。5人の優しい歌声と大きく振られた右手、そして〈またね〉の言葉で本編は終了した。

 鳴り止まぬ拍手のなか、再びステージに現れた5人。「みなさんクリスマスの予定は空いてますよね(坂元)」「1年でいちばん空いてる日(三品)」と、12月25日に中野サンプラザで行われる坂元葉月の卒業公演の告知と、さらに4人体制初ワンマンライブを来年2022年1月10日山野ホールにて開催することが発表された。

 「アンコールいただいたからね」「どうする??」「やりたい」「やりたーい!」「どうぞどうぞ」とコント混じりで廣川がオチになり、最後の最後に贈られたのは「清濁合わせていただくにゃー」。軽快なロックビートに乗せ、会場全体が揺れに揺れて大団円を迎えた。

「声は出せなくともみなさんの心がすごく伝わってくるようなライブだったと思います。この5人では最後のツアーになりますけど、みんなにとってもすごく大切な記憶になったらいいなと思います」(廣川)

 5人のわーすたが見られるのは、本当に残りわずかなのだろうか。そう思えるほどに清々しく、楽しさに溢れたライブであった。

 この夏、いくつかのイベントに出演する彼女たちを観たのだが、さまざまなグループのなかで観るからこそ、可愛いにもカッコいいにも振り切れる、わーすたの強さを再認識することが多くあった。このまま来年の夏もわーすたメンバーの強さと、はしゃぐ姿が見られるのではないだろうか、そんな風にも思った。しかし、常に最高の輝きを更新し続けてきた彼女たちの、5人での時間は限られている。だが、我々は知っているはずだ。12月25日のラストへ向かって、この5人がこの先もっともっと、最高の輝きを放っていくことを。

※記事初出時、タイトル記述に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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