わーすた、生バンド編成を成立させた確かな実力とスキル スタジオライブ映像から伝わる日々の研鑽
わーすたが、来たる10月8日に代々木公園野外ステージにて開催する『わーすた FREE LIVE “ゆうめいに、にゃる!!!!!”』へ向け、7月より毎月YouTubeで公開されているSTUDIO LIVE。名うてのプレイヤーが集まった“NEKONOTE BAND”と織りなすこの競演は、KAWAIIジャパンアイドルカルチャーを世界に発信している普段とはまた違った観点から、彼女たちの新たな魅力を知ることができる。
「楽曲の幅が広がったと同時に、こういうライブしたいな、こういうものを見せたいな、という気持ちが自分の中でも広がっているんです。最近いろんなアーティストさんのライブ観に行くんですけど、私たちも早く生バンドでライブやりたいと思っていたタイミングだったので、ワクワクしてます!」(廣川)
実際、このSTUDIO LIVEの収録現場に足を運び、彼女たちの類稀なるスキルと音楽に対する真摯な姿勢を目の当たりした。(参考記事:わーすた、スタジオライブ企画で見せるグループの真髄 独特な世界観とパフォーマンス力を解説)
収録自体は非常にスムーズで、予定よりかなり早い進行を見せていた。バンドメンバーとの阿吽の呼吸を見ていると、撮影に向けてリハーサルを相当重ねて臨んでいるものだと思っていたのだが、どうやらそういうわけでもないらしい。
「踊っていて、バンドのメンバーさんと目が合うと、ニコッて笑ったりするんですけど、そういうのも“生”感があって良いですね。リハーサル自体はそんなにはしていないけど、音楽を通じて距離が縮まった気がします」(廣川)
適応能力が高い、とでもいうべきか。余談だが、ライブでのスマホ撮影をOKとしているわーすたは、海外でいう“fancam(ファンカム)”、つまりファンが自分のスマホで撮影した動画がYouTubeを中心に多く上がっている。そんな中で、音響トラブルに見舞われてオケが再生されず、自分たちでカウントを取りながらアカペラ状態で始めたライブ動画があった。ここまでは他グループでも見たことのあるような光景なのだが、驚いたのはそのあとである。楽曲も中盤に差し掛かると突如オケが復帰。歌いながらオケの復帰を察して、すぐさま楽曲の場所を確認、動ずることなく自分たちのカウントからオケに移行し、歌い続ける、という見事なまでの離れ業は、何度繰り返し見ても唸るしかなかった。楽曲のキー、BPM、リズム感……何も頼らずとも楽曲のすべてが頭と身体に染み付いているのだろう。抜群の勘の良さとトラブルに動じない度胸が垣間見えた瞬間だった。たとえ悪環境の中であってもいつもと変わらないクオリティでライブを行うことが出来る、そんな気さえした。であるから、オケより歌うことが難しい生バンドでのライブだが、彼女たちにとっては実に歌いやすい環境であり、実力を十二分に発揮できる場なのではないか、そうあらためて思った。
生バンドによるアイドルのライブは昨今珍しいことではないが、誰でも生バンドのライブをやればカッコ良くなる、生バンドでやればいいライブが出来る、……というわけにはいかない。確かな実力とスキルが必要なのだ。
「バンドが入ると、バンドメンバーさんの熱量も加わるから気が引き締まりますね。と言いつつ、バンドサウンドってめっちゃ迫力あるからリズムに自然と身体が乗ったりして、本当に楽しいです!」(廣川)
悠々と音程を置いてくるような歌声に絶対音感すら感じさせる廣川奈々聖と、感情の赴くまま、時として吐き捨てるように声を鳴らす三品瑠香。この鉄壁のツインボーカルを軸に、はにかんだ無邪気さを見せる坂元葉月、とぼけた表情で愛嬌を振りまく松田美里、真っ直ぐな眼差しで凛とした小玉梨々華の3人が寄り添い、支え合っていく。この5人でわーすたの世界は描かれる。
「最上級ぱらどっくす」では、しなやかに突き抜けていくサビで感じられる圧倒的な歌唱力と、そこに向かうまで5人が紡いでいくリズムとグルーヴの渦を存分に堪能できる。「PLATONIC GIRL」は、鉄壁のツインボーカルが気持ち良いほど爆走するロックナンバー。大人の色気を漂わせながら巻き舌気味の廣川と、これぞ“三品節”の真骨頂というべき、斜に構えながらのシャウトが炸裂する三品のコンビネーションがどんどん加速していく。そんな2人の合間を縫うように、キレの良いダンスを見せる坂元、松田、小玉の3人。ライブで歌い抜かれ、やり込んできたからこその余裕と、生バンドならではの迫力も相俟って、音源以上の破壊力を持ったキラーチューンへと変貌している。彼女たちのアーティスティックな側面を引き出し、新たな可能性をも予感させる仕上がりだ。
対して、今回新たにアップされたのは“うるチョコ”の愛称で長く親しまれてきた「うるとらみらくるくるふぁいなるアルティメットチョコびーむ」。タイトルならびに、日本語詞の常識を壊しにかかる〈マジでトリケラトップス強い〉というパワーフレーズが物語るように、一筋縄ではいかないわーすた楽曲を象徴するこのナンバーは、バンドアレンジで聴くと、その予想だにしない楽曲展開が顕著になる。そこに乗る、ジェットコースター的ミュージカルテイストで繰り広げられるボーカルパートに、“カワイイ”だけでは片付けられない匠な妙味を感じることができるはず。リズムやピッチといったボーカルの巧手と、アイドルとして、女の子としての輝かせ方を熟知した合わせ技である。