乃木坂46 大園桃子は“正真正銘のアイドル”になった 5年間の感謝を込めた晴れやかなラストステージ
アンコールではついに“大園桃子卒業セレモニー”と題した、大園をフィーチャーしたブロックへ。オーディションから現在までの成長する姿をまとめたVTRのあと、ひとりステージに登場した大園はファンに向けた手紙を読み上げていく。最初は学校の先輩に勧められ、ノリで乃木坂46のオーディションを受けた大園だったが、手紙の中で彼女は「大人の人の前に立って自分をアピールすることが初めてで、何をしたらいいかわからなくて、本当によくわからないまま時間だけが進んでいき、気づいたら引き返せないところまで来ていました」と本音を明かす。「3期生として加入して、乃木坂を大好きで入ってきた子、覚悟を持って入って来ている子、たくさんいて、申し訳なくて罪悪感でみんなの目をすごく気にしていたのを覚えています」と当時を振り返りつつ、「もともと自信がない私が、本当に押しつぶされそうで、毎日生きることが精一杯でした」「自分のことが大嫌いで目標がない、そんな私が乃木坂として何かできるはずないと塞ぎ込んでしまった時期があります」とその頃の心情を吐露。しかし、「今は5年間、乃木坂にいることができてよかったなと思うことができています。そう思えるのは、家族やメンバー、スタッフさん、ファンの皆様がたくさん励まし続けてくれて、引き留めてくれたからだと思います」と前向きさを掴み、「最初はみんなと違う気持ちで乃木坂に入りましたが、5年間の活動を経て、私は乃木坂46になることができました」と胸を張って明かした。
今では5年間の思い出がすべて宝物だという大園は、「3期生にとって大切な曲」である「三番目の風」を3期生12人で披露。ステージに登場したほかの3期生たちは、すでに瞳を潤ませている。続く「思い出ファースト」でもそれは同様で、大園との一瞬一瞬を愛おしく感じながら、笑顔で大園を送り出そうとする姿に観ているこちらが胸を打たれた。さらに、「夏のツアーで飛鳥さんと披露させていただいた思い出の曲です」と大園が語る「やさしさとは」では1、2、4期生もパフォーマンスに加わり、曲の途中で齋藤が大園にメッセージを届ける場面も。齋藤は涙ながらに「桃子が『乃木坂も悪くないな』と言ったとき、当時ほかの人よりちょっとだけ桃子のそばにいたから、桃子があの言葉を言ったときの気持ちが痛いほどよくわかりました。だけどあのとき、あんなに近くにいたのに、なんで私の力で『乃木坂っていいな』と思わせられなかったんだろうって、ずっと心残りでした。力不足な先輩で本当にごめんね。最近、楽しそうに活動している桃子を見て、すごく嬉しく思っていました。今日ここで初めて言わせてください。桃子、よく頑張ったな。卒業おめでとう」と思いの丈を伝えると、お互い涙を流しながら抱擁を交わした。そして、「孤独な青空」「転がった鐘を鳴らせ!」とアップチューンで場の空気を一変させると、大園はトロッコに乗ってファンに別れの挨拶に回った。
ラストナンバーに入る前に、ほかのメンバーも大園へ挨拶。4期生の筒井あやめは「私は乃木坂に入る前から桃子さんが大好きで、桃子さんがきっかけで乃木坂に入ったといっても過言ではないくらい。桃子さんの周りはいつも優しくて穏やかな空気が流れていて、その空気の中に私もいれたことが本当に嬉しかったです」、2期生の北野日奈子は「私は桃子から、ただ手を差し伸べて支えることだけが愛じゃなくて、心に寄り添ってただ見守ることも愛だと教えてもらいました。ここまで乃木坂でいることを諦めないでいてくれて、本当にありがとう」と、それぞれの気持ちを吐露する。そして、同期の梅澤は「卒業を初めて聞いた日から、何度も何度も止めてごめんね。でも、桃子は私にとって本当にいなくてはダメな存在だったから、これから桃子がいない中、乃木坂で過ごすことを考えるとすごく寂しいけど、私たち3期生は11人になっても頑張るから、ずっと見ていてね。そして、本当に誰よりも幸せになってください」と感謝を伝えた。
最後に、キャプテンの秋元からも「桃子は私が乃木坂に入って10年間で出会ってきたアイドルの中で、一番人間味のあるアイドル。すごくまっすぐで素直な子だったから、気を許してもいいんじゃないかなと思えるタイミングがたくさんあって。そういうところに私はこの活動で、桃子と出会ってすごく救われたなと思っています」「ここまで残ってくれて、乃木坂を好きになるまで続けてくれて本当にありがとう」と労いの言葉を贈られる。そんな先輩からのメッセージに、大園は「先輩方に恵まれていたから頑張れたんだなと、本当に思います」と答え、ラストナンバー「乃木坂の詩」をパフォーマンス。その美しい笑顔は、一人前のアイドルとして成長した大園のラストステージにふさわしいものだった。
「本当にこの景色が今までで一番綺麗だなと思いました」と告げると、観客が一斉に「桃子 5年間ありがとう」と書かれた用紙を掲げるサプライズが。最高のプレゼントを前に、満面の笑みでステージを去り、これで大園桃子ラストステージは終了……のはずだった。しかし、影アナで生田が「もう悔いはない? まだあるんじゃないかな? 曲に乗せたら全部出てくると思うんだよね? もう1回、ステージで乃木坂46の桃ちゃんを観たいですよね?」と話し始めると、ダブルアンコールとして再び「逃げ水」が披露された。「出てきちゃいました~!」と笑顔で、観客に最後の挨拶をする大園。そして、そんな彼女を涙交じりの笑顔で見送ろうとする3期生や先輩・後輩たち、そして大勢のファン。そんな仲間たちに「本当にもう思い残すことがないので。これから先いろんなことがあると思うんですけど、そんなに心配せずに、遠くで『頑張っているかな?』と思ってくれたら嬉しいです。本当に今までありがとうございました!」とメッセージを残し、大園はステージから去っていった。
加入まもない頃から、筆者も幾度となく大園に取材してきたが、本当に裏表のない、嘘のつけない人だった。だからこそ、この世界で生きていくのは過酷ではないか、そう感じる瞬間も多々あった。『真夏の全国ツアー2017』では加入から1年に満たないながらも、与田とともに苦しみながら全国を駆け回る姿も目にしている。しかし、そんな彼女も気づけば乃木坂46に欠かせない存在、正真正銘のアイドルに成長していた。特にそう感じるようになったのは、この1年くらいだろうか。その頃にはすでに彼女の中でひとつの答えが出ていたのかもしれないが、それでも最後の最後にこんなに晴れやかで、こんなに心を揺さぶるステージを見せてくれるなんて。改めて感謝と労いの言葉を贈りたい。
次に乃木坂46のステージを目にすることができるのは、いつになるのだろう。延期となった東京ドーム公演が真の意味での『真夏の全国ツアー2021』のファイナルになるだけに、時間がかかっても必ずどこかのタイミングで無事に開催され、さらにスケールアップした乃木坂46の姿を見せてほしい。その日ができるだけ早く訪れることを、今は心の底から願っている。