乃木坂46はこれからも坂道を登り続ける 想いを受け継ぎ、新たな一歩を踏み出した「結成10周年記念セレモニー」

乃木坂46、10周年の先へ踏み出す新たな一歩

「これから先も、私たちは皆さんを笑顔にし続けていける存在を目指していきます」

 キャプテンの秋元真夏は最後このように口にして、結成10周年記念日に行われた福岡公演初日を締めくくった。節目の1日における彼女なりの、そして乃木坂46の新たな一歩にふさわしい一言だと言える。

 7月14日、大阪城ホールから始まった『真夏の全国ツアー2021』は乃木坂46にとって約2年ぶりに開催される全国ツアーだ。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、やむを得ず開催を断念したが、今年は政府発令のガイドラインに従い、入場者数の制限や感染対策をしっかり取ることにより、ツアーファイナルとなる予定だった9月8日&9日の東京ドームまで全国5都市で10公演が開催されるはずだった。しかし、9月の東京ドーム2DAYS公演に関しては緊急事態宣言下であること、感染拡大の深刻化を受け8月20日に開催延期がアナウンスされたばかりだ。

 となると、8月21日および22日のマリンメッセ福岡公演はツアー地方公演ファイナルという以上に重要なライブになる。さらに、8月21日は乃木坂46結成10周年の記念すべき日であり、翌22日公演は3期生・大園桃子の卒業前ラストライブにあたる。さまざまな意味を含むことになったこと2公演、幸運なことにネット配信も決まっており、今ツアーに足を運べなかったファンにとっては非常にありがたかったのではないだろうか。

 かくいう筆者も、こういう情勢でなければ福岡まで出向いてライブを観覧していたはずだが、今回はやむを得ず自宅にてネット配信で楽しむことにした。本稿では21日に行われた「乃木坂46結成10周年記念セレモニー」について触れていく。

 「今日は明太子の粒の数よりもたくさんの思い出を作って帰りたいと思います!」という山下美月の影アナに続き、本ツアーでは恒例となったご当地クイズコーナーに伊藤理々杏、大園桃子、与田祐希、吉田綾乃クリスティーという九州・沖縄出身メンバーが参加。与田による福岡にちなんだクイズでひとしきり盛り上がった後は、いよいよライブ本編に突入する。オープニングSE「OVERTURE」で一気にヒートアップすると、爽やかなギターストロークとともに「スカイダイビング」からライブがスタート。遠藤さくらが「福岡の皆さん、今日は1日楽しみましょう。盛り上がっていくぞ!」と叫ぶと、特効の爆発音とともに「うわーっ!」とメンバーの歓声が湧き上がる。爽快感の強いサウンドに身を委ね、2年前までは当たり前だった“夏の風物詩”が帰ってきた……そう感じたオーディエンスは少なくなかったはずだ。時期的には少し遅いかもしれないが、乃木坂46とともに夏を過ごしてきたファンにとっては「ようやく夏が始まった!」と強く実感できた1曲だったのではないだろうか。

 その後はライブの定番曲「ロマンスのスタート」や新たな乃木坂46を提示するような「サヨナラStay with me」、人気のアンダー曲「自惚れビーチ」が連発され、ヒットシングル曲「Sing Out!」で最初のクライマックスを迎える。力強いドラムビートに合わせてメンバーが〈LA LA LA...〉と大合唱する様子に、観客はクラップやスティックバルーンで一体感を高めながら、心の中で一緒に歌う。客席から歌声は聞こえてこないが、その“心の声”は間違いなくステージ上まで届いていたはず。そんな中、曲中盤では齋藤飛鳥が華麗なソロダンスを披露し、一際強い幸福感を放出し続けた。

 最初のMCでは秋元が「まずはこのような状況の中、会場に起こしくださって、本当に、本当にありがとうございます!」と感謝の言葉を口にしつつ、前日に告知された東京ドーム公演延期にも触れる。さらに、結成10周年に触れると高山一実&星野みなみがバースデーケーキをステージに搬入。乃木坂46のロゴマークや、メンバーにちなんだイラスト入りプレートが散りばめられたケーキを前に、生田絵梨花は「Happy Birthday to You」の独唱で結成10周年を祝福する。「ここからまた、この会場以上にファンの方も増やして、いろんな人を笑顔にしていきましょう!」という秋元の決意表明とともに、会場は祝福モードの温かい空気に包まれていった。

 ライブが再開すると、事前にリクエストを募った各カテゴリー(シングル表題曲、カップリング曲、アンダー曲、ソロ&ユニット曲)の上位曲を中心とした、今ツアーだけのベストセットリストが展開されていく。与田祐希&筒井あやめは「ざぶんざざぶん」、齋藤飛鳥・星野みなみ・山下美月は「Threefold choice」とピースフルなユニット曲を連発すると、アンダーメンバーは「日常」や「滑走路」といった緩急に富んだ選曲で観る者を圧倒する。さらに、期別を重視したブロックでは、1&4期生が「ひと夏の長さより・・・」、2&3期生が「空扉」がそれぞれパフォーマンスし、乃木坂46の歴史のバトンを先輩から後輩へと受け継いでいくような流れを演出。一方で、1期生は「Against」、2期生は「アナスターシャ」、3期生は「トキトキメキメキ」、4期生は「I See...」と各期にとって重要な期別曲を立て続けに披露する。特に「トキトキメキメキ」では、大園を含む3期生12人でのパフォーマンスはこれが最後になるのでは……と、演者側にも観る側にも特別な感情が芽生えたのではないだろうか。

 ライブ中盤には大園、与田、山下、久保史緒里の3期生4人による「言霊砲」、生田、高山、樋口日奈、新内眞衣、梅澤美波、遠藤、賀喜遥香と1~4期生勢揃いの「せっかちなかたつむり」など注目のユニット曲を用意。ここでは、初期のユニット曲「せっかちなかたつむり」もすでにオリジナルメンバーは高山だけで、その彼女もまもなく卒業してしまうことに気づき、なんとも言えない感傷的な気分に陥ってしまう。しかし、そんな気持ちを払拭するように、山崎怜奈をセンターに据えたハードなアンダー曲「錆びたコンパス」で場の空気を一変。さらに、オリジナル編成ではセンターに立った齋藤を迎えた編成で「扇風機」を披露するなど、新旧の楽曲を並べながらもメンバー構成で“2021年の乃木坂46”を確実にアピールしていった。

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