インナージャーニー×SULLIVAN’s FUN CLUB×MINOR THIRD特別座談会:『未確認フェス』で出会った3組が感じるシンパシー

『未確認フェス』出演3バンド座談会

 10代アーティスト限定のロックフェス『未確認フェスティバル2019』のファイナリストとして出会ったインナージャーニー、SULLIVAN’s FUN CLUB(以下、サリバン)、MINOR THIRD。それぞれまったく異なる音楽性を持ちながら、しのぎを削った『未確認』以降交友を深めてきた彼らによる座談会が実現した。お互いの出会いから、6月に開催した3マンイベントで感じたそれぞれの変化と成長、そして奇しくも近いタイミングでリリースされる新曲や新作に込めた思いまで。インナージャーニーとMINOR THIRDがいる東京とサリバンがいる札幌をインターネットで繋いで語り合ってもらった。(小川智宏)

『未確認フェス』を通じて“ライバル”から“仲間”へ

――まずは3組が出会うきっかけになった2019年の『未確認フェス』のことから話したいんですが、当時を振り返って、どう思いますか?

カモシタサラ(Vo/Gt·インナージャーニー):私たちは『未確認』が3回目のライブだったんです。そこでサリバンやMINOR THIRDを観てすごく刺激を受けたのを覚えています。「バンドってこんなにかっこいいんだ」と改めて感じたんですよね。

本多秀(Gt·インナージャーニー):うん。こんなにしっかり音楽やってる同世代ってあんまり見たことがなかったんで。面白かったですね。あのときは、バンドに対して理解がなかったというか、めっちゃ尖ってたんですよ、バンドサウンドというものに対して。だからサリバンはとにかく音が馬鹿でかいバンドだなあってイメージでした。

ヨシダレオ(Vo/Gt·SULLIVAN’s FUN CLUB):ははははは。

本多:MINOR THIRDはなんかかっこいいけどおっかねえバンドって思ってました(笑)。

Kaito(Dr·インナージャーニー):10代のコンテストなんで、とにかくみんな尖ってるというか、怖い人たちがいっぱいだなって思いながらやってましたね。

とものしん(Ba·インナージャーニー):その中でもまず見た目で明らかに尖ってるだろうなって2トップがMINOR THIRDとサリバンでしたね。当時は、あんまり仲良くなれないだろうなって思ってました(笑)。

インナージャーニー
インナージャーニー

――MINOR THIRDは?

長嶋水徳(Gt/Vo·MINOR THIRD):私達もライブは初めてぐらいのレベルで。だから自分のことで精一杯になっちゃってて、発作を起こしたりとかしてみんなにめちゃくちゃ迷惑かけたんですけど……ライブやってる間にもベースが鳴らなくなっちゃったりとかトラブルがあったんだけど、それでもやりきれたことで、仲間意識みたいなものができました。最初はライバルだけど終わった後はみんな仲間、戦友っていう感じがしました。

koudai.(Ba·MINOR THIRD):でも、どえらいすごいバンドばっかで圧倒されました。サリバンはやっぱ怖かった。

とものしん:やっぱり怖いんだ。

koudai.:うちのバンドも怖いって思われることが多いけど、うちはみんなあんまり喋らないから。ぶっちゃけ演奏後とか終演後も全く誰とも喋らなかった。

MINOR THIRD
MINOR THIRD

――あすかさんはどうでした?

田中超あすか(Dr/Cho·MINOR THIRD):私は予選とかからマジ超ビビってて、当日もとにかくビビってました。

長嶋:こんな見た目してるけど、内心はめちゃ……。

田中:赤ちゃんなんですよ(笑)。みんなと仲良くなりたかったんですけど、なれなくてちょっと残念だった。

――今は?

田中:今はバリマブです。

とものしん:ははは、ギャルじゃん、ただの!

――(笑)。サリバンは怖がられてたんですね。

レオ:僕らも東京でのライブは何回かしかやったことがなかったからすごく緊張してたし、東京に友達が1人もいない状態だったから、怖がられるような態度をとってたのかもしれない(笑)。でもとものしんも、THE BLUE HEARTSのTシャツを着たモヒカンのやつがいるっていうのが話題になってましたけどね。

とものしん:おい、言ってんな(笑)!

レオ:インナージャーニーはほぼその記憶しかない(笑)。MINOR THIRDは前のメンバーのやあちゃんとはちょっと喋ったっていう思い出があるけど、現メンバーの3人は、やっぱりめっちゃ怖かった。

――ペイくんがめっちゃ頷いてるんですよね(笑)。

とものしん:あいつ、『未確認』出てなくない(笑)?(※ハセガワペイの加入は2021年2月)

タダカズキ(Dr·SULLIVAN’s FUN CLUB):MINOR THIRDは、俺らの前に出てて。

レオ:そうだ。

タダ:横で見てたんですよ。それがすごい印象に残ってて。なんかめっちゃ悔しかったんですよね、すごくよくて。水徳ちゃんの音楽に対する熱意みたいなものが、すごく伝わってきて。俺はそれに影響を受けたっていうか、もっと音楽に入れ込まなきゃだめだなって思ったんですよね。

――グランプリを取った瞬間はどういうふうに思いました?

レオ:なんか実感はずっとないよね。いまだにないです。本当に最初から一貫してそう答えてるんですけど、「グランプリ、SULLIVAN’s FUN CLUB」って言われてから、いまいちずっと実感がないまま、2年経ってしまったという感じですね。

タダ:あとプレッシャーが来たよね、終わった後に。

レオ:確かに、グランプリにふさわしいバンドにしないとねっていうのは話したかも。

SULLIVAN’s FUN CLUB
SULLIVAN’s FUN CLUB

――逆にインナージャーニーとMINOR THIRDはどうでした? 悔しいという思いも当然あったと思うんですけど。

カモシタ:でも、普通にファンになったというか、こんなかっこいいバンドが存在するんだって思いました。それからバンドとしてやっていく上で、それぞれをすごい意識するようになって、めちゃめちゃ見てきました。バンドってこういう感じでやるべきなんだよなって。

長嶋:優勝したら100万円がもらえるっていうのがあって。私、ジャマイカに行きたかったんですよ、メンバーと。行けなかったのが本当に私は悲しかった。けど、優勝したバンドに対して「いや、俺らのほうがよかっただろう」とは思えなかったし、グランプリがサリバンでよかった。素直に受け止められたから、100万円はあげてよかったなって(笑)。

コロナ禍で向き合った制作/ライブ活動

――そこからさらにバンドとして前に進むぞっていうところだったと思うんですけど、2020年はコロナ禍になってしまって。思うように活動できなかったところもあると思うんですけど、どういうことを感じながら活動してきましたか?

レオ:ライブが一番というわけじゃないですけど、やっぱりサリバンはライブをしてこそのバンドだと思っていたので、いざライブができなくなるとどうしてももどかしい気持ちはありました。ただやっぱり何かしなきゃな、動き続けている様をしっかり見せなきゃなとずっと思っていて、その思いが如実に出た活動をしてきましたね。

――ライブの仕方とかも変わってきました?

ハセガワペイ(Ba·SULLIVAN’s FUN CLUB):そうですね。お客さんも声を出せない状況でも見に来てくれるし、僕としてはとにかく暴れていた方が面白いかなと思って、それは心がけてます。

――MINOR THIRDはどうですか?

koudai.:半年ほどライブ活動ができてなかったんですけど、うちのバンドにとってはいいお休みになったのかなとは思います。個人的な話になるんですけど、俺とあすかが専門学校を卒業して、新生活にも慣れなきゃいけない時期だったし、水徳もいろいろ波があるんで。新しいスタートを切るときもそれがいい方向に行ったんじゃないかなと。

長嶋:コロナ禍で動きが制限されていたので、MVをWOOMAっていうイラストレーターさんに作ってもらったりとか、そういう工夫ができたりして、表現の幅も広がりましたね。

本多:うん。インナージャーニーはYouTubeでカバー動画をやったりしたんですけど、それって人の演奏をちゃんと聴く機会にもなるじゃないですか。そういうのができるようになったんで、久しぶりにスタジオに入ったらむしろみんな上手くなってるじゃんって思って。自分たちのことを見つめ直すことができたのかなって思います。

――コロナの状況が作る曲に影響を与えたりもしました?

長嶋:元から私は宅録で曲を作ってそれをバンドでやるって形でやってるんで、作り方自体は変わらない。でもコロナ禍で、めちゃくちゃ曲ができましたね。日頃の鬱憤だったりとかその自分の心に対して向き合ったときに出てくるものが、かなりありました。

カモシタ:私は水徳ちゃんと逆で、コロナになって音楽との関わり方を考えちゃって。今までは自分の中で完結して作ってたと思ってたんですけど、意外と外と関わることで自分と向き合うことができてたんだなって。だから実はあんまり曲ができなかったんですよ、焦ってしまって。でもそれに気づいたからこそ、外との対話が大事だって思うようになって。考え方が変わるきっかけになったなと思います。

レオ:俺はやっぱりすごく変わったと思います。歌っている内容も曲調も含めて。今度の新作(『Panta rhei』)はわりと1人で自分を追い込んで書いたような曲が多くて。クローズドな感じになったと思います。

『未確認』以来の対バンで感じた進化

――今年の6月にはこの3バンドでの3マンイベントが下北沢BASEMENTBARで開催されましたね。すごく盛り上がったそうですが。

koudai.:僕らはサリバンと会うのは『未確認』ぶりだったんですよね。しかも『未確認』の当日は話してないから。

長嶋:私はサラちゃんとレオとは個人的に連絡を取り合ってたりして、サラちゃんとはごはんにも行って仲良く恋愛トークとかしたりして、友達っていう感じになってたし、レオとも夜中から朝の5時までとかずっと電話したりしてたんです。だからこの2人とは絶対対バンしたいなって思ってて、会場で初めて3人揃ったときには結構盛り上がってました。

カモシタ:うん、水徳ちゃんとはめっちゃ遊んでたりしてたから久しぶり! って感じだったんですけど、サリバンは北海道だからいつも画面の中でずっと見てて、すごいファンだし、「あ、いるわ!」って思って。MINOR THIRDのライブも画面でしかちゃんと観てなかったんで、やっぱり生のライブっていいよなっていう、お客さんみたいな気持ちでしたね。

レオ:俺はそれこそサラちゃんと水徳ちゃんがご飯食べに行ってるのをTwitterで知って、「なんで俺も混ぜてくれないのかな」ってずっと思ってたんで(笑)、2組に会えて、一緒にライブできてめっちゃ楽しかったです。

タダ:なんか、青春の香りがしたよね。18の頃に出会ったっていうのはやっぱりデカいんですよ。そのときの思い出が蘇ってくる感じ。

レオ:本当にそうだね。

ヨシダカズマ(Gt·SULLIVAN’s FUN CLUB):でもなんか、久々に会った感がなかったというか、画面上では見てたし、のしん(とものしん)とはずっと話してたし。

とものしん:そう。夜中に誰も見ていないのにインスタライブで会話するっていうよくわからないことをずっとしてたりしてたんで(笑)。

――お互いのライブはどうでしたか?

レオ:『未確認』終わってからもインナージャーニーとは何回か対バンさせてもらったり、MINOR THIRDもちょくちょく配信ライブを観ていたので、今こういうモードなんだなっていうのはなんとなくわかってはいたんですけど、やっぱり生で、しかも久々に行ったBASEMENTBARで見ると、めちゃめちゃかっこいいなと思って。「やばくない? 俺ら食われちゃうじゃん」っていう話をしたのを覚えてます。

本多:みんな、すごい上手くなってんなあって思いましたね。

Kaito:どう変化しているのかなっていうのが楽しみだったし、実際にすごく感じ方が違ったんですよね。お互いいろいろなことを経験して、一緒にやれたっていうのは大きかったですし、あのタイミングで集まれて良かった。

長嶋:自分たちはメンバーが脱退して今は3人でやっていて、サリバンもメンバーチェンジして新しいサリバンになってて。インナージャーニーはメンバーは変わってないんだけど、でもやっぱり人をちゃんと楽しませるエンターテインメントへの志っていうのがすごい見えて。私達も負けてられないなって思いましたね。

koudai.:正直めちゃくちゃビビってたんですよ。インナージャーニーのリハのときにとものしんがサリバンとMINOR THIRDの楽曲のベースをずっと弾いてて(笑)。これ本番観られて下手くそだなと思われたらどうしようと思ってめっちゃ緊張してました。やっぱり俺らよりサリバンとインナージャーニーのほうが活躍してるなって思ってたし、俺ら対バンしていいのかなと思ってました。だから実は結構自信なく当日を迎えたけど、2バンドとも快く迎え入れてくれたんで、嬉しかった。ライブも楽しかったし、フロアでずっと手挙げてました。

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