名渡山遼が世界に届けるウクレレの可能性 メジャーデビュー5周年の集大成、音楽家としての将来も語る

名渡山遼が語る、ウクレレの可能性

ウクレレはとてもポテンシャルの高い楽器 新しい奏法にも挑戦

――すごいですね、それは。楽器製作のことだけでも十分興味深いのですが、本題は新作『Sense』のことですので、そちらのお話を(笑)。メジャーでの7作目ですが、今回は全曲オリジナル楽曲ですね。このコンセプトはどこから始まったんでしょうか。

名渡山:メジャーデビュー5周年という節目なので、代表作を作りたいと思ったんですね。代表作ということであれば、全曲オリジナルで勝負しようと考えました。これまでのアルバムにはカバー曲が入っているし、企画物も多かったのですが、この作品に関しては全曲自作曲。だから自分としては、かなり挑戦的なアルバムになっています。

――オリジナルというのもそうなのですが、いろんなタイプの曲が入っていますよね。そして、僕らが考えるウクレレのイメージを大きく超えて、バラエティに富んだアルバムだなと感じました。

名渡山:そう思っていただけたのならとても嬉しいです。とにかく、ウクレレという楽器を自分の演奏で広げていきたいと思って作りました。ウクレレはとてもポテンシャルの高い楽器ですし、様々な可能性があるので、その可能性を世界に届けたいという想いもあります。だから、一般的にウクレレのイメージと結びつかないジャンル、例えばロックやファンクやフュージョンといったサウンドにも挑戦しています。

――たしかに冒頭の「Intro」からアグレッシブなカッティングが聞こえてきて、びっくりさせられます。

名渡山:「Intro」は即興で弾いているうちに曲っぽくなって、個人的にもとても気に入ってしまったので収録しました。

――このオープニングによって、とても元気なアルバムという印象なのですが、本当にいろんな曲が入っていますね。

名渡山:今までのアルバムは、わりと統一性を重要視していたんです。ソロやバンド編成といったサウンドもそうですし、2019年に発表した『Beautiful Island Feeling』だったら、旅をするようなイメージとか。でも今回は統一性がないことがコンセプトなんですよ。自分の代表作にしたかったので、この一枚で僕のすべてを知ってもらいたかったんです。名渡山遼といえば、「まずはこれを聴け」というような作品を目指しました。

――たしかにそこは魅力ですね。ライブ感のあるソロ演奏の「Gonna Be Fine」もあれば、タイトル曲の「Sense」ではバンドスタイルでしっかりと練られた印象があります。

Ryo Natoyama 名渡山遼 / Sense (Music Video)

名渡山:曲調もそうですが、ウクレレという楽器の可能性にも挑戦しているんです。これまでにやっていなかった新しい奏法を取り入れたのも、今作の特徴だと思います。

――奏法ということでいえば、「Absolute Zero」に耳が行きます。この曲はウクレレとは思えない様々な演奏方法を試していますね。

名渡山:エレクトリックベースでよくやるような、スラップという弾き方を取り入れてみました。知り合いのつてで、スラップが得意なベーシストを紹介してもらって、学びながら開発したんです。ベースだとサムピングといって弦を叩くやり方もあるのですが、ウクレレでは出来ないからプルというはじく奏法がメインです。ただ、ベースと同じようにはいかないので、自分なりに咀嚼して追求し、その結果できあがった曲が「Absolute Zero」なんです。

――本当にこの曲は強烈ですね。ウクレレでこんな弾き方は聴いたことがなかったので、びっくりしました。

名渡山:おそらく他にやっている人はほとんどいないと思います。ジェイク・シマブクロさんですらやられてないですし。「名渡山遼ってウクレレをバチバチ弾く人だよね」っていわれるようになるのが目標です(笑)。これを聴いて僕よりも若いプレイヤーが取り入れてくれて、バチバチやり始めたら嬉しいですね。

Ryo Natoyama 名渡山遼 / Absolute Zero (Music Video)

――テクニック的なことでいうと「Islander's Dream」は多重録音のソロというユニークな作品ですね。エフェクトを掛けるなど、音色がとにかく面白い。

名渡山:この曲はインディーズ時代にも録音しているのですが、ライブでルーパーを使いながら演奏する方法を模索して、どんどん曲が成長していったんです。するとファンの方から「ライブのほうがいい」といってくださるようになったので、今回成長した今のバージョンを録音しました。ライブでやっていることに近い演奏が楽しめると思います。

――全体的に躍動感がありますが、ラストに「Five Roses」でしっとりと締めるのもいいですね。

名渡山:コロナ禍でツアーも中止になってしまったから、インスタライブをやっていたのですが、この曲はその時にファンの方と一緒に作ったんです。Aメロが卒業、Bメロが入学のイメージで、ファンの方からいろんなキーワードを送ってもらい、その場でメロディを作っていきました。5本のバラには「あなたに出会えたことに対する感謝」という意味があって、それでこのタイトルになったんです。

――これだけいろんな曲が入っているウクレレのアルバムは初めて聴きました。さっき代表作を作りたいとおっしゃっていましたが、出来上がってみてどう思われますか。

名渡山:もう大満足です。自信を持って代表作になったといえますね。当然、一年後、二年後はどんどん塗り替えていきたいと思うのですが、今での自分にできる最大限のことができたと思っていますし、この感覚で作品を作るたびにどんどん超えていけるんじゃないかなと思える、そんな作品です。

――そこまで断言できるというのは素晴らしい。

名渡山:今回はミックスも自分でやったので、細部に渡るまで相当こだわり抜きました。だから、今まで妥協をしていた部分も解消していますし、本当に自信作ですね。

――ミックスまで自分でやるなんて、本当にこだわり派で凝り性なんですね。ウクレレ製作もそうですが、逆にここまでやってしまったら、次は何をやるんだろうって期待してしまいます。

名渡山:でも、まだまだやりきれてないことはたくさんあるんですよ。このアルバム自体はすごく満足していますが、音楽家としては実現できてないことの方が多いので、そこはどんどん攻めてやっていきたいなと思っています。

――それはファンからしてみるとすごく楽しみな言葉ですね。当面の目標はなんですか。

名渡山:ライブのパフォーマンスを充実させたいですね。例えばストリングスなどいろんな楽器と共演するコンサートや、逆にソロでこれまで弾いたことない弾き方を追求したライブとか。もちろん、ライブもレコーディングも含めて、音楽家としてもっと成長していきたいと思っています。まだまだ伸びしろがいっぱいあるので。

――まだ伸びしろがあるんですか(笑)。

名渡山:ありますよ(笑)。やりたいこともいっぱいありますし。次回取材していただいた時には、どこまで進化しているかを確認してもらいたいですね。

――その頃には、また新しく製作したウクレレが(笑)。

名渡山:完成して、さらに新しい楽器を作り始めているはずです(笑)。

ウクレレ・プレイヤー名渡山遼 - NEW ALBUM『Sense』全曲試聴トレーラー

■リリース情報
『Sense』
発売:2021年7月28日(水)
価格:¥3,300(税込)
収録内容
01. Intro
02. Cheer Up!
03. Early Summer Breeze
04. Islander's Dream
05. Dance with Me
06. Gonna Be Fine
07. Absolute Zero
08. Sense
09. Strings of Lights(BSテレ東「日経モーニングプラスFT」エンディングテーマ)
10. Five Roses

名渡山遼 オフィシャルサイト

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