秦 基博、アコギと身一つで表現する“等身大の魅力” 弾き語り全国ツアーで作り上げた極上の音楽空間
シンガーソングライターの秦 基博が7月25日、東京・渋谷LINE CUBE SHIBUYAにてアコースティック・ライブ『GREEN MIND 2021』を開催した。『GREEN MIND』は、秦が2008年より5月4日の「みどりの日」に合わせて不定期で開催しているアコースティックライブシリーズ。これまでライブハウスのみならず、芝居小屋や酒蔵、全国各地の世界遺産など様々な場所で開催されてきた。今年は『GREEN MIND』 としては、最大規模となる全27公演に及ぶ全国ツアーという形で開催。全国ツアーとして行われる『GREEN MIND』は『GREEN MIND 2014』以来であり、秦がたった一人で全編弾き語りの全国ツアーをするのは、実に9年ぶりとなる。
筆者が観たのは東京公演の2日目。定刻になると、ピアノとアコギによるシンプルなインスト曲「Theme of GREEN MIND」が流れ出し、会場は一気に『GREEN MIND』の世界へと誘われる。ほどなくして秦がステージ下手から登場、中央に立ちゆっくりとお辞儀をすると、客席からは温かい拍手が鳴り響いた。
アコギを抱え、まずは2007年にリリースされた「僕らをつなぐもの」から今日の公演はスタート。天井から差す一筋のスポットライトが、まるで月明かりのようにステージ上の秦を照らし出し、〈月灯りかと思ってみれば 変わる間際の黄色い信号〉と歌うこの曲の歌詞の世界と見事にシンクロする。まるでドラマの一場面のようなロマンティックな光景と、爪弾くアコギとともに会場いっぱいに響き渡る、のびやかで切ない秦の歌声。続く「Sally」では一転、アコギを軽やかにストロークしながら空に抜けるような美しいファルセットを披露。雲の隙間からいく筋もの光が差し込む空をイメージしたような照明が、〈あなたは鳥になって渡る 地球儀を見下ろす空〉という歌詞と呼応し、聴いているこちらの心もどんどん軽やかになっていく。
「Tell me, Tell me」は、杉咲花が出演する東京海上日動のCM用に書き下ろされた楽曲。セリフが多いドラマ仕立てのCMの中で、秦の歌“だけ”がしっかり聞こえるのは「冒頭の2秒」とCMプロデューサーから伝えられた秦が、「じゃあその2秒で勝負しよう」と思ったことからサビのフックが生み出されたという。そんな貴重な作曲エピソードを自虐も交えながら披露すると、客席は大きな笑いに包まれた。またブギーロック調の「FaFaFa」では、「Tell me, Tell me」に続いてオーディエンスから自然発生的にハンドクラップが巻き起こる。しかもAメロ、Bメロそしてサビとセクションごとにクラップのパターンを変えてくるファンのこだわりに、秦本人も嬉しそうに笑顔で応えていた。