adieuの歌はなぜ聴く人を魅了する? TVパフォーマンス、君島大空らの言葉で紐解く”あわい”歌声の秘密
adieuが自身2枚目となるミニアルバム『adieu 2』をリリースした。本作は彼女にとっておよそ1年半ぶりとなる作品集。前作『adieu 1』でも楽曲提供した小袋成彬や塩入冬湖(FINLANDS)らに加え、古舘佑太郎(2)やカネコアヤノらも参加、全編を通してYaffleがプロデュースを務めている。浮遊感が心地よい「春の羅針」(作詞作曲:君島大空)に始まり、愛の本質を語りかけるように歌う「愛って」(作詞作曲:古舘佑太郎)、ギターポップ風の曲調が爽やかな「天使」(作詞作曲:カネコアヤノ)など、バリエーション豊かな5曲の新曲は、adieuの持つ世界観をより拡張し、新たな魅力を感じさせる十分な仕上がりに。女優・上白石萌歌のアーティスト名義という肩書きが野暮に思えるほど、ひとりの表現者として存在感を放っている。
本作のリリースに合わせて、様々な音楽番組に出演し、パフォーマンスを披露してきたadieu。そのたび話題となったのは、何よりもその歌声だ。アーティストが一発録りで歌唱するYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に出演した際は、「歌声がキラキラ輝いている」「まっすぐな歌声」など、歌唱力はもちろん声質に心を掴まれる人が多数現れた。生放送での歌唱となった『CDTV ライブ! ライブ!』(TBS系)や『うたコン』(NHK総合)では、「生歌なのに抜群の安定感」とステージに立つ姿勢も評価された。特に幅広い年齢層に支持される『うたコン』では、女優としての彼女しか知らなかった視聴者も多かったようで、もうひとつの才能に圧倒されたとの声も。さらに、情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)に出演した際は、これまでの歩みを紹介するような形で特集が組まれ、MCの加藤浩次もその声を「音の粒が見えるよう」と絶賛したほか、コメンテーターで出演していた井上芳雄もかつて共演したことに触れながら、その成長ぶりを喜んだ。
視聴者からの「もっとadieuの歌う姿が見たい」という声はとどまることを知らず、音楽特番『THE MUSIC DAY』(日本テレビ系)にて「よるのあと」を歌唱した際も、SNSを中心に「素敵な歌声に癒された」といったコメントが盛り上がりを見せるなど新たなファンの獲得にもつながった様子。TV出演が相次ぐなか、adieuの存在は音楽ファンの枠を超え、確実にあらゆる世代を魅了した。生放送でも物怖じせず、堂々とパフォーマンスを見せることで、アーティストとしての度量も深まっているように感じた。adieu自身、歌う時は「演じる時とは全く違う筋肉を使っている」そうだが、聴く人を魅了するその歌声の秘密とは、一体どこにあるのだろうか。
君島大空は「春の羅針」について「萌歌さんの声が 春の長い暁闇の中から 夜明けの光の代わりになって 夢の中にまで射し込んできてくれる景色を想いながら書きました」と語る。また、「愛って」を手がけた古舘佑太郎は、「いつの日か誰かが、この曲を遠くまで連れてってくれるような気がしていたので、ライブなど人前で自ら歌うことは避けて来ました(中略)adieuさんが歌う『愛って』を聴き、彼女の歌声に思わず、僕の予感は当たっていた!と確信せざるを得ませんでした」と、運命的とも言えるadieuの声との出会いのエピソードを明かした。今回『adieu 2』に楽曲提供をしたアーティストでさえ、彼女の声に特別な手触りを感じ、作品作りに挑んでいる。