Newspeak、再認識した“バンド”であることの価値 『Turn』に反映されたメンバーの新たな関係性

Newspeak、再認識した“バンド”の価値

 新型コロナウイルスのパンデミックという未曽有の事態に見舞われた2020年。Newspeakは、“自分たちにできることを”と宣言し、6月から9月にかけて4連続シングル(「Pyramid Shakes」、「Another Clone」、「Parachute Flare」、「Blinding Lights」)、それら4曲の入ったEP『Complexity & Simplicity of Humanity (and That’s Okay)』をリリースし、ライブ『Weightless 2020_#01』を開催した。リアルサウンドでも特集ページを組み、一連の流れについて取材を行うなかでメンバーは「これで終わりではない」と語っていたが、あれから約10カ月、フルアルバムとしては2枚目の『Turn』をリリース。前EPは、色とりどりのサウンドとともに、外出の自粛を余儀なくされパーソナルな空間のなかでうごめくさまざまな感情と、そこであらためて認識した仲間の大切さを生々しく映し出す言葉が、波紋のように世界に広がっていく様が見えるような作品だった。

 そして今作は、その魅力をさらに一段上に押し上げるより深く大きな内容に。まさにその象徴と言える「Great Pretenders」、インディーダンスやサイケ、古き良きR&Bなどのテイストが混ざり合う「Generation of Superstitions」、4つ打ちのハウス/ディスコにThe Beatlesばりにサラっと3拍子をはめ込んだユーモラスな「Animals」、バンドの現在地と過去が対話しているような「Silver Lines」など、EP/4連続シングルからの3曲(「Pyramid Shakes」、「Parachute Flare」、「Blinding Lights」)とともに、バラエティに富んだ新曲群が躍動。そこにある彼らの新たなメッセージ、そしてバンドであることの価値とは。ぜひ前回の特集も併せて楽しんでいただきたい。(TAISHI IWAMI)

僕は“バンドマン”なんだって

ーー昨年の6月から9月、コロナのパンデミックを受けたリリースやライブの流れについては、リアルサウンドでも特集ページを組んで取材にも協力していただきました。あの頃のことを振り返ってみて、どんなことを思いますか?

Yohey:『Weightless 2020_#01』の配信を観たスタッフや家族、友達がくれたメッセージの内容のなかで、いちばん多かったのが“楽しそう”だったんです。僕らもとにかく楽しかったし、曲をリリースしてライブをやることがこんなにも幸せだったんだって、あらためて認識するきっかけになりました。大幅に人数制限はしながら会場にもお客さんを入れたことについてはいろんな意見があると思いますけど、やってよかったと思えることはたくさんありました。

Rei:コロナ禍によっていろんな計画が頓挫して、ライブにおいてはその時にならないと開催できるかどうかもわからない状況になってしまったことで、あらためて感じたことはたくさんありました。なかでも大きかったのが、僕は“バンドマン”なんだって。

ーーもともとバンドマンじゃないですか。

Rei:僕らはメンバーそれぞれ、コンポーザーやエンジニアとしての顔もあって、“バンドマン”であることが自覚的なアイデンティティではなかったんです。でも、2019年にSurvive Said The Prophetと回った47都道府県ツアーや、その後のパンデミックで先の計画が絶たれた経験で感じたことがあって、今「君は何者?」と聞かれたら「バンドマンです」ってはっきり言えますね。今までは曲を作ることとライブをすることはワンセットだったけど、それが切り離されて曲を作ってもライブができるかどうかがわからない状態になったときに、なんかぜんぜん違うんですよ。「曲は曲でいいのができたし」とは思えない。ライブのためにセットリストを考えてリハーサルをやって本番に臨む。その空間にいるお客さんのレスポンスがあって初めて、僕たちと作品の存在意義があるんだって、自分にとってもっとも大切なことがはっきりとわかりました。

ーーEPについてインタビューしたときに、同作でもラストを飾った「Blinding Lights」は先のことを示唆する曲だと語っていて、『Weightless 2020_#01』でも配信のラストソングに(会場ではアンコールを披露)。その続きが今回のアルバム『Turn』ということでいいのでしょうか。

Newspeak – Blinding Lights (Official Music Video)

Yohey:自分らでにおわせておいてあれですけど、そうと言えばそうですし、違うと言えば違って。

ーーと言うと?

Yohey:もともとは、2020年末か2021年の初めにアルバムを出すつもりで制作していたんです。でもコロナで予定が先延ばしになったので、その間に少しでも何かできることはないかと考えて、すでにできていた曲のなかから4曲を選びシングルとしてリリースしてEPに繋げてガイドラインを設けたライブを開催しました。そんな流れのなかで実は「Blinding Lights」を出してEPのインタビューをしていただいた頃、去年の秋前には曲はすべて完成していたんです。だから、先の流れを示しておいて引き続き作った曲というのはなくて、できていた曲のなかで「Blinding Lights」がアルバムの存在を示すにはもっとも適していたということですね。

ーーそうだったんですね。同じインタビューで、Newspeakというバンド名や作品名の連なりから想像できる、社会との関係性について質問したじゃないですか。

Rei:はい、覚えています。

ーージョージ・オーウェルの小説『1984年』にある人々の思考を制限するための言語“Newspeak”をバンド名にしていること、“どの勢力からも占有されていない土地”という意を持つ“No Man’s Land”から着想を得た『No Man’s Empire』という1stアルバムがあって、人々の思考に迫った作品だと予想できる『Complexity & Simplicity of Humanity (and That’s Okay)』というEPがきた。そこでNewspeakは作品を通してどこに何を語りかけているのかという旨の質問をしたときに、Reiさんは「政治や社会、思想といった大きな場所に曲を放り投げる感覚ではなくて、近くにいる人たちに思いを伝えるために、大きな世界の話をよくするんだと思います」と答えていました。

Rei:はい。そのなかでももっともパーソナルな感情が強かったのが、コロナの影響を受けた『Complexity & Simplicity of Humanity (and That’s Okay)』ですね。

ーーそこで私は、まずは身近な人を大切に想うことがよりよい社会の発展に繋がることにあらためて気づきました。

Rei:“イエスとノー”、“ハッピーとサッド”みたいに感情が割り切れている人なんてほとんどいないと思いますし、それが当たり前の姿。だからパーソナルになればなるほど、心を裸にすればするほどそういう曲/作品になるんですよね。割り切れない感情を抱えた人間が集まって社会ができていて、それは政治のトップにいる人たちも例外ではない。みんな一人の人間。だから、すごくパーソナルな感情を歌ってもけっきょくは社会や世界といった大きな単位になる。逆に言えば、社会に向けてポリティカルなことを歌ったとしても、それは一人の生活やあり方の話になる。ようするに、起点がどこかというだけの話で、社会的なことや政治的なことと一人の日常や直接的な人との関わりを切り離すことのほうが不自然だと思うんです。

ーーさまざまな感情が入り組んださまざまな人がいて社会ができ上がっている。作品とは時代の鏡で、Newspeakはその時々の複雑な社会情勢を映し出しながら、もっとも大切にするべき一人の人生や直接的な仲間の存在について歌い続けてきた。今回のアルバムは、そのスタンスがもっとも強く響く作品だと思いました。

Rei:各々が人生に感じる上がり下がりってあるじゃないですか。それが、コロナという大きな波に世界が飲まれたことで、みんなが大なり小なり一気に下がった。こんなことってまずないですよね。だから今回の作品はそう思われたような気がします。

Yohey:別にコロナじゃなくても誰かの言うことは誰かの何かに当てはまるとは思いますけど、いまはみんながコロナという大きなスポットにはまっているから、Reiがパーソナルになればなるほど、そこから出てくる言葉が普遍性を帯びてくるように思います。

ーーそれはすごく健全な状態だとも言えますよね。ある意味雑音がなくなるわけですから。ただ素直に正直であればいい。

Rei:確かにそうかもしれません。アルバムの構想はコロナ禍前からあって当初は“もっとポップに”とか“もっとモダンに”とか、そんなことも話し合っていたんですけど、もう感情の流れるままでいいやって。そこからまた新たに方向性が見えてきたんです。

ーーこれまでのEP、アルバムから一転して『Turn』というシンプルなタイトルになったのも、そういった変化を受けてのことですか?

Rei:振り返ってみるとそうですね。タイトルが決まらないまま作っていたなかで、終盤に入って「Great Pretenders」ができた時に「これだ!」って。〈What if I turn/Just like we have always come through〉という歌詞があるんです。いろんな曲でいろんなことを言ってきたけど、結局は状況を好転させたいという気持ちに帰結するんですよね。だからその一節からシンプルに“turn”のワンワードでいこうって。

Newspeak – Great Pretenders (Official Music Video)

ーー「Great Pretenders」はこのアルバム、そしてここまで話にあがったことのなかでも特に「パーソナルになればなるほど、そこから出てくる言葉は普遍性を帯びてくる」という言葉を象徴するような曲だと思いました。

Rei:コロナもあって私生活がほんとうに大変で、音楽を作る気持ちになかなかなれなかったんですけど、それでも音楽を作ることしかできないから、とにかく音楽のことで頭をいっぱいにして乗り越えたい、どうしても前を向きたいと思いながら作った、もっともパーソナルな曲ですね。それをYoheyやStevenに聴かせたらどの曲よりも「わかる!」って反応がきて、マネージャーも帰り道かなんかで聴いていたみたいなんですけど、「めっちゃ沁みたわ」って返信をくれて。

ーー老若男女が世界を称えるようなコーラスが入っていたり、もっともパーソナルな感情から始まって、そこにメンバーやマネージャーの共感が重なりもっとも大きな曲へと広がっていったような印象を受けました。

Steven:コーラスは僕と妹のFlorence、先輩のAimeeと3人で入れました。確かに、ゴスペルのような大きなスケール感も意識したし、子供っぽい感じとか、もっとパワフルにとか、いろんな声色を入れたのがうまくいったと思います。

ーー頭から最後までのアルバムの流れとしては、先のことを示唆する要素が最も強いと語った「Blinding Lights」から始めて、5曲目の「Morning Haze」や10曲目の「Summer Wasted」のようなインタールードも入っているので、最終的に物語としてまとめあげたような気もするのですが、いかがですか?

Rei:物語っぽくしようという案もあったんですけど、さっきも話したように感情の流れるままに作った曲ばかりだったので、地続きになっている曲同士もあれば「Animals」みたいな、コロナとかこのご時世とかぜんぜん関係のない曲もあって、バラバラすぎてまとまらなかったんですよね。だから曲順はサウンド重視で組んでいきました。

Steven:“パーソナル”って言葉が何回も出てきたように、メッセージとしては「パーティしようぜ!」みたいな曲はひとつもないんですけど、できあがった曲をあらためて聴いてみたら、自分たちが思っていた以上にアッパーな曲も多くて。そこで、DJにも近い感覚というか、聴いていて気持ちのいい曲順にしたんだよね。

Yohey:それでも、飛躍しすぎる部分が出てきてしまうからインタールードを加えてさらに綺麗な流れになるようしました。

ーー全体的なサウンドの印象としては、Newspeakの曲は情報の抜き差しや予期せぬ展開も多いんですけど、各パーツを拾ったときの手数的にはそんなに難しいことはしていなくて、そこは年々シンプルになってきていませんか?

Steven:ドラムはそうですね。レコーディングで頑張りすぎたらライブがしんどいというのもあって(笑)。初期の頃はそういうガチャガチャした曲も多かったけど、シンプルなほうが叩いていてテンションも上げやすいし、メンバーも「もっとシンプルでいいよ」って。

Yohey:いやいや、「していいよ」じゃなくて「頼むからシンプルにしてくれ」って(笑)。

Rei:ものすごい手数のフィルとか持ってくるから「そういうのじゃない!」とかね(笑)。でもYoheyも僕も含め3人とも歌ものが好きだから、メロディを中心に置いたうえでどれだけおもしろい演奏ができるかに挑戦するっていうのは昔から変わっていないですね。そういう姿勢が段階を踏んでいくことで、音のバリエーションは増えてもそれぞれの手数はシンプルになってきたんだと思います。

Yohey:テク二カルなことをしていたとしても、どこかにユニゾンしているとか、主旋律に寄り添っているとか、だから自然に聞こえるんだと思います。そのなかで、今回のアルバムに関しては、ベースもとにかくシンプルにすることを意識していました。そのほうがライブでも曲の雰囲気や世界観を作ることに集中できるんですよね。

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