Kis-My-Ft2、ドラマ主題歌への連続起用で確信するグループの成長 新曲「Fear」が誘うサスペンスフルな世界
「Fear」ーー恐れ。あまりにストレートなタイトルに狼狽した。「恐れ」とは何か……考え巡らせていると、あの印象的なイントロが頭のなかに流れ始めた。
タイアップシングルが多いKis-My-Ft2(以下、キスマイ)だが、この1年、2020年以降にリリースしたシングル表題曲はいずれもドラマ主題歌に起用されている。
2020年9月16日、夏の終わりにリリースされた「ENDLESS SUMMER」は、ジャニーズJr.内ユニット・美 少年が初のグループ主演を務めたドラマ『真夏の少年〜19452020』(テレビ朝日系)の主題歌として作品を彩り、『ミュージックステーション』出演時(テレビ朝日系)には美 少年とのコラボレーションも果たした。
どうしたって過ぎてゆく一度しかない夏、それでもきっと忘れない夏を、“ENDLESS”であれと願う気持ち。明るくポップな曲調にほんの少し儚さを感じさせる不思議な楽曲だ。
10年後に思いを馳せる歌詞は、10周年イヤーに突入したばかりのキスマイのリリースとしてもぐっとくるものがあった。配信ライブのアンコールで共に見上げた、あの夜空を思い出すファンも多いのではないだろうか。
先日『2021 FNS歌謡祭 夏』(フジテレビ系)でも披露した「Luv Bias」は2021年2月24日にリリース。玉森裕太が出演した1月期ドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系、以下『ボス恋』)の主題歌として、作品を大いに盛り上げた。ストーリーに沿った歌詞や、劇中に流れるピアノバージョンの美しさ、楽曲が流れる絶妙なタイミングも話題となった。
思いを告げる覚悟を決めた潤之介(玉森)がヒロイン・奈未(上白石萌音)のもとへとバイクを走らせるシーンでは「Luv Bias -another-」が使用され、玉森がソロで歌いあげる〈愛してる〉のフレーズに多くの視聴者が感動し、胸をときめかせた。「Luv Bias」は『ボス恋』ヒットのひとつの要因といっても過言ではない名曲だ。
そしてこのたび、北山宏光が主演を務める『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京系)の主題歌として書き下ろされたのが、新曲「Fear」である。衝撃の問題作として、視聴者およびメディア間で早くも話題を集めている同ドラマ。なかでも北山演じる柿野正隆は、キャラクター設定が原作とは若干異なっている。様々なことを拒絶し、諦めしか映さぬ冷めきった瞳の一方で、苛立つ心はくすぶり続け、今にも着火寸前ーーやさぐれ、捻くれてしまった正隆だが、そうなるに至った辛い過去を抱えていた(とはいえ許されないこともあるが)。
過去の自分を知らない世界へと逃げ込みたかったのか、それともただの火遊びか。正隆にとっては“たかが不倫”でも、夏川萌(萩原みのり)にとっては“恋”だった。
どれほど関係が冷めきっていようと、食卓はともにする「形だけ」の夫婦の違和感、正隆の機嫌を損ねないよう神経を張りつめる妻・柿野雪映(中村ゆり)のヒリヒリ感、仄暗い映像、断片的に「おそらく最悪の結果」を告げる予告ーーすべてに不穏な空気が漂う本作。
「Fear」が使用されているのはオープニングだ。語りかけるようなイントロが、サスペンスフルな世界へ誘う。静かに迫り来るように刻むピアノは、美しいからこそ切なく脆く響く。