BUGSとTSUBAME、コラボ作で伝える音楽を楽しむフィーリング 2人の間に飛び交う新鮮な感触とは?

BUGSとTSUBAMEの新鮮な感触

 TOKYO HEALTH CLUBのトラックメイカーとして、そしてソロとしてもアルバム『THE PRESENT』のリリースや、外部アーティストのプロデュースワークも手掛けるTSUBAME。福岡を地場に活動するユニット・週末CITY PLAY BOYZのラッパー/トラックメイカーとして活動し、ソロ作もリリースするBUGS。この二人がタッグを組み、アルバム『HELLO NEW WORLD』をリリースした。

 TSUBAMEがトラックを、BUGSがラップを手掛けるというアプローチで構成され、AAAMYYY、荒谷翔大(yonawo)、MANON、Calli Stephusを客演に迎えた本作は、ロックやオルタナティブなどの感触を、現在進行系のポップスやヒップホップと交配させた、異種を生み出すような意思を感じる作品だ。しかし、気負って特異な作品を生み出すといった欲望や力みはなく、それよりも日常に溶け込むようなスマートさと自然な感触と侵食を感じさせる。その意味でも、この作品を通して、徐々に音楽の風景は、知らず知らずのうちに変わっていくかもしれない。(高木”JET”晋一郎)

ラッパーがいかにもなラップをすることに飽きてる部分もあった(TSUBAME)

ーーTSUBAMEはリアルサウンド初登場ですが、キャリアも長くなり、所属するグループ:TOKYO HEALTH CLUB(以下、THC)のアルバム『4』などのリリースインタビューや結成に関する内容はネットにも多く載っているので、そこはググッっていただくとして今回は端折ります。「TOKYO HEALTH CLUB 高木JET」で調べれば僕のインタビューが出てきます(笑)。一方、BUGSくんの所属する週末CITY PLAY BOYZ(以下、週末)はメディア露出がそこまで多くないので、軽くにはなってしまいますが、プロフィール的な部分を伺えればと。

BUGS:週末は福岡をベースに動いてるユニットで、メンバーはBUGS、pen public、north NADO、bill marcosの4人です。自分たちで立ち上げてる<CCS records.>というレーベルもあって、週末の他にpen publicとnorth NADOのやってるcheapっていうアパレルやグラフィック部門だったり、ビートメイク部門としてMellow Fellow Botanica、それから神奈川には『ABNOVICE』っていうブランドがあったりします。沖縄にはバリスタがいたり。

ーーバリスタ?!

BUGS:プロのバリスタがいるんですよ(笑)。

TSUBAME:今年、THCから僕とJYAJIEが沖縄に引っ越したんですけど、その近所でカフェをやってて。

BUGS
BUGS

ーーつまり、クリエイターコングロマリット(クリエイターの集合体)のような形で<CCS records.>があると。

BUGS:色んな切り口の出来るクルーとして動いてます。

ーーしかもその拠点は福岡に限らないんだね。

BUGS:そうですね。週末の地場は福岡だけど、週末として色んな地方に行ったり、つながりが増えていく中で仲良くなった人たちがいっぱいいて、そういう人たちが<CCS records.>に参加してくれて、いまの形になりました。

ーーなるほど。週末の1stアルバム『Tonight.』は、TSUBAMEくんの手掛けるレーベル<OMAKE CLUB>からのリリースでしたが、そのきっかけは?

TSUBAME:JABBA DA FOOTBALL CLUBのNOLOVから「九州にめっちゃオモロい奴がいる」って紹介されて、まずSoundCloudに上がってる音源を聴いたんですよね。

BUGS:その当時は、自分たちで作った音源を友達に聴いてもらうプラットフォームぐらいの気持ちでサンクラを使ってて。

TSUBAME:音も格好いいし、楽曲もラップもいい、ノリも今っぽくて面白いなって。それでよく調べたら、アパレルやデザインも手掛けてるのが分かって。<OMAKE CLUB>のスタンスとして、ただ音楽をやってるだけじゃなくて、そこにプラスされた要素を持ってるアーティストに興味があったし、それにもフィットしたから、まず東京での僕らのイベントにライブゲストとして呼んだんですよね。それでCDをリリースしないか、っていう話をして。だからいつもの<OMAKE CLUB>の方式です。「まずウチから一枚出してみない?」って(笑)。

ーー自称「踏み台レーベル」として(笑)。気負わない、自由闊達なスタイルはこれまでのOMAKEのアーティストに近い感触があったんだけど、週末はより垢抜けた感触があって……っていうと、それまでのアーティストが垢抜けてないみたいになっちゃうけど(笑)、でも「シティボーイ」感は一番強かった。

TSUBAME:イケてる感がありますよね。うちのレーベルって、やっぱり文系感があったと思うんです。でも週末はストリートでイケてる感もあって。

ーー偏見込みな表現になっちゃうけど、OMAKEの「美大生っぽい感じ」に、不良的ではない「ストリート感」がハイブリッドされた感触は新鮮に感じて。

TSUBAME:そういうタイプを手掛けてみたいなと思ってたところだったんで、週末がリリースを快諾してくれてラッキーでしたね。

ーーTHCも音楽と同時にデザインやアパレルも手掛けてるから、週末との親和性は高いよね。

BUGS:機能的には似てるのかなと思いますね。

TSUBAME:モテなさそうなサイドがTHC、モテそうサイドが週末(笑)。

BUGS:そんな風に思ってたんですか(笑)。

TSUBAME
TSUBAME

ーーなんともコメントしにくいけど(笑)。そして週末としては『Tonight.』の次作となる『SHE IS ALIEN』も今年3月にリリースされて。それから間を置かずにBUGS × TSUBAMEとして『HELLO NEW WORLD』がリリースされましたが、このタッグ作が制作された経緯は?

BUGS:2020年の7月に、僕が2ndソロ『jodi is mine』をリリースしたんですね。その楽曲をTSUBAMEさんに送ったら、「俺もいまこういう楽曲がやりたいモードなんだ」って。

TSUBAME: THCではクラシックなスタイルをやって、僕のソロ『THE PRESENT』ではもっとジャジーな感触の作品を作ったんですけど、それとは違うものを作りたいと思ってたんですよね。そう考えてたときに『jodi is mine』を聴いて、こういう曲がちょうどやりたいと思ってたところだったから、このテイストで一緒に作ってみない? って誘って。

BUGS:僕自身、『Tonight.』を作ってたときとは違うアーティストに影響を受け始めていて、その上で作ったのが、『jodi is mine』で形にしたような、トラップ的なビートの打ち方だったり、ギターの音色、浮遊感のある上モノを基調にした音感だったんですよね。そうしたらTSUBAMEさんもちょうどそういうサウンドを作り始めてたっていうので「ヤバ!」と。

ーー新しく目指す音楽の方向性がシンクロしたと。今回の『HELLO NEW WORLD』は、週末の『SHE IS ALIEN』と、TSUBAMEくんがプロデュースしたJUBEE「Spotlight feat. BIM」が決着した地点にあるような感触を覚えて。

TSUBAME:そう感じてもらえたり、その導線がうまくいってると嬉しいですね(笑)。「Spotlight」もJUBEEくんと「こういうサウンドって誰もやってなくて面白いよね」っていうところから始まったし、そういう「誰もやってない」「これから流行るかもしれない」みたいなサウンドについて、BUGSともよく話してて。それが繋がったのかなって。

ーー「Spotlight」はいわゆるインディロック的なアプローチだったと思うし、『HELLO NEW WORLD』に収録された「CHERRY PIE」などは、例えばHappy Mondaysとかマッドチェスター的な流れが、00年代にリバイバルしたときのようなサウンド感があるなって。

TSUBAME:全体的に00年付近のレイブだったり、オルタナティブみたいな感触があると思いますね。

ーー前述の3作に共通する音色として「ギター」が挙げられると思うんだけど、その音自体、ノイジーなエフェクトが掛かってたり、ファンクギターのようなブラックミュージックの流れを感じるものじゃなくて、プレーンなエレキギターの音、ギターポップ的な音なのがすごく意外で。そもそも、TSUBAMEワークスでそういうギターの音ってほとんど使ってないよね。

TSUBAME:おそらく使ってないですね。しかも、ああいうギターの音、特に「ザ・ロック」みたいなギターの音って苦手だったんですよ。

ーーギターポップとか、ロックとして聴くなら違和感はないんだけど、ダンスミュージックとかヒップホップに入ってくると、凄く違和感を感じるタイプの音だよね。

TSUBAME:それなのに何でいまはその音を使って曲を作ってるんだろうって(笑)。でも自分にとってそれが新鮮だったんですよね。

BUGS:僕にとっても新鮮でしたね。しかも、これが一番新しいだろうっていう感触もあって。

TSUBAME:僕が30代中盤、BUGSが20代中盤で、10歳ぐらい年の差があるんですね。だから、僕としてはこういうサウンドは自分が経験してきたものを再確認する感じなんですけど、BUGSからすると全く知らない音楽なんですよね。JUBEEくんもそうなんですけど、「The ProdigyとかUnderworldってヤバいっすね!」って言われて、みんなショックを受けるっていう(笑)。

ーーリアルタイム世代からするとそれは当たり前のことなんだけど……。

TSUBAME:下の世代にとっては当然だけど新鮮なんですよね。BUGSも2000年代初期の曲を聴かせたら「今っぽいっすね」って反応が返ってきたり。

BUGS:The Chemical BrothersとかFatboy Slimって、もちろん名前は知ってるんだけど、ちゃんと聴いたことがなかったんですよね。それで改めて聴いたら「こんなに格好いいんだ」って。

ーーTSUBAMEくんが勧めたThe Chemical Brothersって『Exit Planet Dust』とか『Dig Your Own Hole』の時期?

TSUBAME:そうですね。The Prodigyもカニのやつ(『The Fat of the Land』)で。

ーーなるほど。Cornershopの「Brimful of Asha (Fatboy Slim Remix)」も勧めてるんじゃないかな」とか、手にとるように浮かんでくる(笑)。

TSUBAME:そういう曲をBUGSが新鮮に感じて、それが作品に落とし込まれるっていうのが面白いんですよね。THCだとメンバーの年齢も近いし、付き合いも長いんで、共通言語がありすぎて、制作はスムーズだけど刺激的かと言われるとまた違うんですよね。その意味でも、BUGSとは制作自体が新鮮だし、その楽しさで制作欲が湧いてきたって部分がありますね。

ーー若い子と話さないと年取っちゃうみたいな話になってきたね(笑)。

TSUBAME:年寄りで固まると老害になっちゃうんで(笑)。あと、ラッパーがいかにもなヒップホップトラックで、いかにもなラップすることにちょっと飽きてる部分もあったんですね。そういう感覚で制作を進められれば、新鮮な作品が作れるかなって。

ーーちなみにBUGSくんの音楽的な原体験ってどんなものになるの?

BUGS:元々ダンスをやってたんですよね。スタイルとしてはポップダンスで、その流れでDax Ridersとか、もっと古いオールドスクールなエレクトロなんかも聴いてて。中学校の頃はファンクとかトークボックスにハマって。

ーー『SHE IS ALIEN』収録の「ROSS」でG-FUNKっぽいノリがあるのは、そういう部分の影響かな。

BUGS:そうかもしれないですね。高校に入るとYouTubeが僕の文化圏にも届いたんで、それで色んな音楽をYouTubeで漁るようになって。ただ体系的に音楽を聴いたりはしてこなかったですね。

TSUBAME:BUGSはダンサーの経験なのか、フィジカルに音楽を聴いてる感じがありますね。あんまりジャンルとか理屈で音楽を聴いてないよね。

BUGS:そうですね。気にしたことはなかったと思います。一つのアーティストやジャンルをめちゃくちゃ聴くっていうよりも、色んなものを雑食に聴いて、それを吸収していった感じだと思います。

TSUBAME:それが今っぽい感じがするんですよね。サブスクで聴く感じというか。

BUGS:サブスクのカタログにあれば、全部の音楽と並列に出会えるじゃないですか。週末のメンバーの聴き方自体もそういう感じなんですよね。週末はもともとみんなダンサーなんですよ。だけどジャンルが違うから、そこで音楽の趣味も変わって来るんですけど、それぞれ「いまこれがヤバい」って音楽を聴かせ合ったりして。

TSUBAME:スクールカーストの上の子たちがやるやつじゃん。

ーースクールカーストの概念が歪んでるよ!(笑)。

BUGS:そこでメンバー同士で情報交換した結果が、『SHE IS ALIEN』に繋がってると思いますね。それで結果、17曲という大ボリュームになっちゃって(笑)。

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