TOMORROW X TOGETHER、最新作が世界的ヒットに 大躍進をサポートしたサウンドメイクの変化
SOOBIN、YEONJUN、BEOMGYU、TAEHYUN、HUENINGKAIの5人からなる韓国発のボーイズグループ・TOMORROW X TOGETHERの勢いが止まらない。
2019年のデビュー以来、数々のチャートを賑わせてきた彼らだが、特に今年に入ってからの活躍は目を見張るものがある。1月に発売した日本1stアルバム『STILL DREAMING』が、米ビルボードのメインアルバムチャート「ビルボード200」にランクイン。K-POPアーティストが日本アルバムでこのチャートに入ったのはBTS以来2度目となり、国内外で大きな話題を集めたことは記憶に新しい。そして6月、韓国で2枚目となるフルアルバム『The Chaos Chapter: FREEZE』が、同チャートの5位に登場した。これはデビュー3年目のK-POPグループの成績では歴代最高記録。彼らが所属するBIGHIT MUSICの先輩にあたるBTSが切り開いた道を着実に進んでいて頼もしい限りだ。
さて、今回のアルバム『The Chaos Chapter: FREEZE』だが、TOMORROW X TOGETHERの人気が急上昇中に出した作品とはいえ、なぜここまでヒットしたのだろうか。理由のひとつとして挙げられるのは、新しいシリーズの幕開けとなる本作への期待感の高さだろう。
TOMORROW X TOGETHERはデビューからしばらくの間、「The Dream Chapter」をタイトルに入れたアルバムをリリースしてきた。このシリーズは「夢を追う少年たちの成長物語」がテーマで、比較的ポップかつポジティブなイメージを前面に出していたように思う。しかしながら『The Chaos Chapter: FREEZE』から始まる新シリーズは、「The Dream Chapter」で登場した若者が自身と対立する世界を初めて認識した後の物語が描かれている。
リードトラックとなるのは「0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. Seori」。インパクトのある曲名だが、すべてがゼロ(0)の世界の中で出会った、魂に穴(0)が空いてしまった少年とひとり(1)の少女との出会いを意味しているという。表向きはラブソングとなっているものの、全体のトーンはそれほど華やかではない。サウンドは力強いドラミングと幻想的なコーラスがメインとなり、歌詞も“道がなかった”や“死んでもよかった”といった重めの言葉が並ぶ。
本作はこの曲を筆頭に、主人公の苦悩やいらだちが伝わってくる表現があちこちに散りばめられている。オープニングを飾る「Anti-Romantic」ではロマンチックなムードを漂わせながらも、“反ロマンス主義でごめんね/ロマンチックはもう信じない”と否定。“アイスクリーム/ユースクリーム”と楽し気に歌う「Ice Cream」でさえも、“心で密かに密かに/不幸を祈る yeah”といったフレーズが突如出てきて、どきっとさせられる。
ハードロック風の「Dear Sputnik」は、愛する人との輝かしい未来を望みつつも、今は“とても冷たい大気の中で狂った寂しさだけ”があると語り、70年代のディスコミュージックを意識した英語曲「Magic」でも、運命の人とめぐり合う前は“心が凍りついたような感覚で行き場がなかった”と振り返る。特にこの2曲に関しては、サウンド自体は明るく響いているだけに、歌のダークな面が際立つ。