宗像明将のチャート一刀両断!
V6、未完成の自分を歌う強さ 深みのあるグルーヴィーなナンバーにも注目
参照:https://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2021-06-14/
2021年6月14日付のオリコン週間シングルランキングで1位を獲得したのは、V6の『僕らは まだ / MAGIC CARPET RIDE』。V6にとって通算33作目のオリコン1位獲得作品となりました。
両A面の1曲である「僕らは まだ」は、セカイイチの岩崎慧が作詞作曲編曲を担当。想像していたような大人になれなかった「未完成」の自分を歌うミディアムナンバーです。Bメロの穏やかなメロディも大きなポイントになっていますが、驚いたのは1番と2番で楽曲の構成が異なることです。現在のJ-POPでは「Aメロ→Bメロ→サビ」という構成が一般的ですが、2番ではサビの前に新たなDメロが登場しており、楽曲にさらなる広がりを生み出しています。
また、サビの1カ所をアカペラで歌うアイデアも大胆。ボーカルグループとしてのV6の強さを見せる部分です。その歌声に、室屋光一郎のアレンジによるストリングスが寄り添っていきます。
MVの冒頭では、メンバーのアップが続きます。すでに大人になっているV6の「現在」を描き出すかのようです。
両A面のもう1曲である「MAGIC CARPET RIDE」は、80年代を彷彿とさせるディスコナンバー。カッティングギターや、動きを抑えたフレーズを弾くベースも実に心地良いです。note nativeの田尻知之、本澤尚之が作編曲を手がけたメロディとサウンドの上で歌われる歌詞を書いたのは土岐麻子。ほぼラップであるBメロでの譜割りと日本語のスリリングな関係性には、思わず息を呑むものがありました。
通常盤のカップリング曲「95 groove」では、23歳のラッパー・Rin音が作詞作曲(作曲はTaro Ishidaとの共作)を担当しています。V6のメンバーのラップが、スウィング感を含んだトラックのグルーヴをつかんでいることに驚きました。
そうしたグルーヴィーな楽曲も収録しつつ、シンプルなジャケットやアーティスト写真、海辺で撮影された「僕らは まだ」のMVによって、V6の「深み」を浮きあがらせているシングルが『僕らは まだ/MAGIC CARPET RIDE』です。
■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter(@munekata)