『Vivy』の音楽はなぜアニメとマッチする? 神前暁×新人シンガーの化学反応が生み出す楽曲群

 『Vivy』の音楽の魅力は、すでに有名な人気アーティストではなく、あえて未知数の可能性を持ったシンガーたちを起用したことにもある。例えばヴィヴィの歌を担当した八木海莉は、2年ほど前からYouTubeにアコースティックギターの弾き語り動画をアップしており、Vaundy、My Hair is Bad、ヨルシカ、相対性理論、ずっと真夜中でいいのに。、美的計画などをカバーしてセンスの良さを感じさせる。儚さを携えた透明感のある歌声は聴く人の琴線に触れる魅力があり、2019年12月にアップしたYOASOBI「夜に駆ける」のカバー動画は、当時まで無名だったにもかかわらず現在までに72万を超える再生回数を記録している。

 彼女が歌った「Sing My Pleasure」は、アップテンポのリズムに乗せた、流れるようになめらかな歌い回し、少し鼻にかかった感じのファルセットと、地声に移り変わる時のかすれ具合が絶妙。Spotifyバイラルチャートでは、5/10付けデイリーチャートで初登場1位を獲得後そのまま現在も1位をキープ、ウィークリーチャートでも5/13週から3週連続で1位を続けている(※1)。

【期間限定公開】TVアニメ「Vivy -Fluorite Eye's Song-」ノンクレジットオープニング映像|「Sing My Pleasure」ヴィヴィ(Vo.八木海莉)

 ほかにもエステラ(CV:日笠陽子)の六花、エリザベス(CV:内山夕実)の歌を担当した乃藍、そしてオフィーリア(CV:日高里菜)のacane_madderと全員が逸材。なお、6月30日には劇中歌収録アルバム『Vivy -Fluorite Eye's Song- Vocal Collection~Sing for Your Smile~』がリリースされ、ヴィヴィが最初に歌った「My Code」や第3話のオープニングテーマとして使用された「A Tender Moon Tempo」、宇宙ホテル「サンライズ」の燃える船内でエステラとエリザベスが歌った「Ensemble for Polaris」など、もう一度聴きたい、フル尺で聴きたかった歌が収録されている。

【期間限定公開】TVアニメ「Vivy -Fluorite Eye's Song-」4話 劇中歌映像|「Ensemble for Polaris」エステラ(Vo.六花)・エリザベス(Vo.乃藍)

 神前暁と新人シンガーたちのタッグによって生み出された幾多の化学反応。それが今、ジワジワと音楽シーンに広がり始めている。

※1:https://realsound.jp/2021/06/post-782733.html

■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる