『Vivy』の音楽はなぜアニメとマッチする? 神前暁×新人シンガーの化学反応が生み出す楽曲群

ヴィヴィ(Vo.八木海莉)「My Code」

 自律人型AIのヴィヴィ(CV:種﨑敦美/Vo.八木海莉)を主人公に、彼女が歌う音楽がストーリーと絶妙にマッチしていると話題のTVアニメ『Vivy -Fluorite Eye's Song-』(TOKYO MXほか、以下『Vivy』)。ヴィヴィが歌うオープニングテーマ「Sing My Pleasure」は、Spotifyのバイラルチャートでも1位を獲得。5月26日には同楽曲を表題としたCDがリリースされ、同日に開催されたCD購入者限定オンラインミニライブには、八木の生歌を聴くために多くのファンが詰めかけた。クライマックスに向けてどんな展開を迎えるのか、ますます話題の『Vivy -Fluorite Eye's Song-』の物語を彩る劇中音楽の魅力とは?

物語とシンクロした劇中歌の在り方

 本作は、歌で人々を幸せにすることを使命として与えられた人型AIのヴィヴィが、100年後の未来から来たAIのマツモト(CV:福山潤)と、100年後のAIの反乱を止めるため「シンギュラリティ計画」を遂行していく物語。計画は成功したように思えたが、5月29日放送の第10話ではついにAIの反乱が起きてしまったところまで描かれた。なぜAIは反乱を起こしたのか、なぜヴィヴィたちは動けるのか、さまざまな謎をはらみながら物語はラストを迎えようとしている。

 物語の謎を解く鍵となっているのが、ヴィヴィたちAIが歌う音楽だ。同じ曲でも流れるシーンによって細かな違いがあるなど、音楽がAIたちの心情や成長を表し、伏線ともなっている。第1話の冒頭で流れたAIが反乱を起こした時のシーンでは、汎用型歌姫AI(Vo.コツキミヤ)が歌う「Happy Together」が流れ、楽しそうな曲調がかえって恐ろしさを増幅させた。第6話の戦闘シーンでは、グレイス(CV:明坂聡美/Vo. 小玉ひかり)が歌う「Sing My Pleasure」が使用され、グレイスがヴィヴィを導いているかのように感じた人も多いだろう。

【Vivy】Happy Together/汎用型歌姫AI(Vo.コツキミヤ)【Official Lyric Video】

 また第7話では、ヴィヴィの記憶を失ったディーヴァが歌う「Galaxy Anthem」がオープニングテーマとして使用され、バックに流れる大量生産されるAIの映像が異なっている部分など、意味ありげな演出も気になった。さらに、第1話からエンディングテーマとして流れていたピアノのインスト曲は、第10話でヴィヴィが作った曲だということが判明、エンディングのテロップでは作曲者・神前暁と共にヴィヴィの名前がクレジットされていた。

 決まったオープニングテーマとエンディングテーマはあるものの、ヴィヴィの状況やエピソードに合わせて変化していることから、『Vivy』という作品にとって音楽がいかに重要な位置を占めているか分かるだろう。

神前暁と八木海莉が生み出した化学反応

 「Sing My Pleasure」をはじめ、劇伴など『Vivy』における音楽のほとんどを手がけているのが、神前暁だ。

 神前の名前を一躍知らしめたのが、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(TOKYO MXほか)だ。同作の音楽を手がけ、涼宮ハルヒ(CV:平野綾)が歌った劇中歌「God knows…」や「恋のミクル伝説」などを手がけた。その後『らき☆すた』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマ「もってけ!セーラーふく」など数多くのキャラクターソングの作曲・編曲を担当。『化物語』シリーズでは、千石撫子(CV:花澤香菜)が歌う「恋愛サーキュレーション」など名曲を生み出した。

 手がけたアニメのイメージから、神前暁=萌えソングというイメージを持つ人も多いだろう。しかし決してそればかりではなく、美しいピアノの旋律、胸を揺さぶるようなコード進行、ドラマチックに転調するサビなど、エモーショナルな楽曲という一面も持つ。例えばWake Up, Girls!に提供した疾走感あふれる前向きソングの「タチアガレ!」や、西川貴教に提供した壮大でパワフルなバラードの「awakening」などがそうだろう。ゲーム『初音ミク -Project DIVA-』のオープニンング「The secret garden」や『Animelo Summer Live 2018』テーマ曲「Stand by...MUSIC!!!」は、ピコピコとしたエレクトロの要素が『Vivy』のイメージにもつながるだろう。

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