BTS RMはJUNG KOOKにとってのヒーロー 新曲「Film out」にも繋がるイズム

 フィクションの世界観を歌いながらも、常に現実との共鳴を感じることができるBTSの楽曲。その根本となっているのは、BTSが生まれたきっかけとも言えるRMの存在にほかならない。BTSが所属している事務所、HYBEのパン・シヒョク代表は、アメリカ『TIME(タイム)』誌のインタビューで、BTSの始まりは「RMのデモテープ」だったと明かしている。

 そんなRMを見て、事務所に入ろうと決心したのが、JUNG KOOKだった。JUNG KOOKはこれまでことあるごとにRMへの憧れを語っており、ライブ配信のときには「RM兄さんの脳と自分の脳を交換したい」と話していたほど。2020年9月の『GQ』公式YouTubeに掲載されたインタビューでは、JUNG KOOKにとってのヒーローはRMだと発表していた。

BTS (방탄소년단) Breaks Down Their Style Heroes | GQ

 RMとの出会いにって、自分の中に潜在していた何かを探せたような気がすると語るJUNG KOOK。音楽的にも、そして考えや、話し方、行動についても、最も多くを学んだ人として、RMは彼のヒーローと呼べる人だと言うのだ。そのRMが見せてきたイズムが、JUNG KOOKとback numberとのコラボを通じて、2021年の空気感をまとったような「Film out」という新たな作品に繋がっているのかもしれない。

 そんな黄金マンネ(末っ子)・JUNG KOOKからリスペクトされ続けているリーダー・RMが率いるBTSは3月30日、公式Twitterを通じ「#STOPASIANHATE」「#STOPAAPIHATE」のハッシュタグと共にアジア人差別に反対する声明を発表した。その言葉に、かつてRMが語っていた「世の中を変えることができる方法」を思い出す。

 RMの語った「世の中を変えることができる方法」の1つ目は革命家になること、2つ目は世の中を肯定的に眺めることだった。RMは、そのどちらもやり遂げたいと話し、そして努力を続けてきた。2018年9月にはニューヨーク国連本部で開かれた国連児童基金(ユニセフ)の会合で「Speak Yourself」のメッセージを送った姿も、彼を象徴するシーンだ。

 かつて「リーダーであるべき人」とJUNG KOOKが話したように、RMのメッセージは、いつだって明確だ。小難しい言葉よりも、ストレートに。否定ではなく、肯定を。新たな傷を作るのではなく、今傷ついている人に寄り添うところから始めていく。

 今回のアジア人差別反対の表明文も、「あなたと私、そして私たち皆は尊重される権利を持っています。共に立ち向かいましょう」という肯定的な文章で締めくくられているのが、印象的だった。

 RMが、そしてBTSが音楽で伝えてくれるのは、誰もが自分が自分を愛することのできる世界。そして、その権利を誰も脅かすことのない世界。スポットライトが当たるほど、痛みを経験してきた彼らだからこそ、その現実と向き合う強さを持っている。きっと彼らなら、本気で何かが変えられるはず。「世界のBTS」と呼ばれるのは、何かが変わっていくことを、世界が期待しているからかもしれない。

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