『僕等はまだ美しい夢を見てる ロストエイジ20年史』クロスレビューVol.5:西村仁志(FEVER)「早くライブハウスで会いたい」
自分が好きになるアルバム(音源)は時間を忘れてあっという間に聞ける。あっという間に終わっている。
本でもそういう感覚がある、というのを久しぶりに経験した。あっという間に読めた。
最初の数ページでもう泣けた。第一章前半は特に泣けた。文字の力強さを感じたのも久しぶりだった。たまに出てくる五味兄貴の言葉か、石井さんの言葉か絶妙に分からない(おそらく両者とも使っていると思う)少しダーティな言葉が、文章のアクセントになっていると思う。音楽で言うシンガロングパートなのか、変拍子なのか分からないが、なんというか自分が好きなヤツなのは間違いない。
この本の面白さはいろんな方がSNSであげたり、他のレビューで皆さまが書いていて、兄貴のことは本でもメインで書かれているので、兄貴以外の自分が好きなLOSTAGEエピソードを2つ。
自分がスタッフをやっているバンド Crypt Cityのライブが数年前に名古屋であり、対バンのLOSTAGEから名古屋に向かってる途中に連絡が。
「車の単独事故を起こしてしまいましたが、今向かってます」
怪我はなかったが、車が駄目になってしまったのでレンタカーで向かっている、とのこと。車が動かないぐらいの事故を起こしたら怪我がなくとも出演はキャンセルするだろうと思うのだが、そこは岩城くんが「怪我もしてないし、行くで」の一言で事が進んだらしい。やっぱ岩城くんだよね、というのは本を読んでもわかるだろう(家族や各所連絡を取って納得の上で来てくれたのでした)。
拓人くんが兄を慕い、兄も弟を想うことが、この本でかなりリアルに書かれている。実際拓人くんがオーナーのKore Karaができる前に兄貴は、「拓人を(仕事の面で)どうにかしてあげたい」と自分にも話してくれたし、親しいバンド仲間にも相談していた。2020年にBandcampで発売された『7 -Live at Juso FANDANGO-』冒頭のMC部分、お客さんの「アニキー!」という歓声に「お前らの兄貴ちゃう、俺の兄貴や」と言う拓人くん。笑いが起きている状況ではあるが、自分はこのMCを何回聞いても泣いてしまう。
最近LOSTAGEを知ったお客さんも多いと思う。今の状況や流れがすごくいい感じなのは近くにいてとても感じるが、少し前のベースをぶん投げて(文字通り本当に投げていた)、オーディエンスに叫ぶオルタナ一直線のLOSTAGEを求めてしまうのは、自分だけではないのではないか。
なにはともあれ、たくさんのお客さんとLOSTAGEのライブを見たいです。
早くライブハウスで会いたいですね。
■西村仁志
10代にライブハウスに魅せられ、19歳で下北沢SHELTERにアルバイトとして採用、その後店長+ブッキング業を約10年続ける。2008年に独立、2009年に新代田にてLIVE HOUSE FEVERをオープン。
■書籍情報
タイトル:『僕等はまだ美しい夢を見てる ロストエイジ20年史』
著者:石井恵梨子
ISBN:978-4-909852-15-1
発売日:2021年2月25日(木)
価格:2,500円(税抜)
発売元:株式会社blueprint
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新代田FEVER 公式サイト:https://www.fever-popo.com/