安田レイ、milet、Uru……ドラマを彩る女性シンガー 共通点はトレンドだけで語れない実力
今、注目を集めている話題のドラマ挿入歌がある。毎週日曜、22時30分から放送中の日本テレビ×Hulu共同製作連続ドラマ『君と世界が終わる日に』の挿入歌、安田レイ「Not the End」だ。このドラマと挿入歌のマッチング、そしてなんと言っても流れるタイミングが抜群に素晴らしいのだ。ドラマは、未知のウイルスに感染した人間がソンビ化し人を襲い、ソンビ化を免れた人間同士でさえも争いが起こるというサバイバルヒューマンドラマ。その中で人はどう生存していくのか、どう人間で在ることを維持していくのかが描かれていく物語。初回放送終了後からSNSでは「救いがなさすぎる」「今の世界に重なって、見ているのが辛い」という赤裸々な感想が目立っていた。しかし放送回を重ねるにつれ「絶望の中でも支え合える人がいるのが救い」「諦めない姿に勇気をもらえる」といった意見も徐々に増えていった。この変化には、ストーリーと音楽の親和性が影響していると思う。その証拠にドラマ放送終了後、YouTubeで公開されている安田レイ「Not the End」MVのコメント欄に次々とドラマの感想コメントが寄せられている。2月28日に放送された第7話では、こんなシーンとともに「Not the End」が流れた。
ゴーレムウイルスに感染した大切な仲間を救うため、治験中のワクチンを手に入れようとする主人公・響(竹内涼真)が、傷を負いながらも仲間の元へ向かう。サビの〈Don’t say bye bye bye この手は繋ぎ合うため〉というフレーズも含め、ミディアムバラードの楽曲の世界が、見事に映像とリンクしていた。
ここ数年、テレビドラマ主題歌などへの起用をきっかけに先に歌声を認知され、その実力で世に名を馳せ、音楽シーンにしっかりと定着する女性シンガーが出てきた。最近で言えば、前述した安田レイ、milet、Uruなどが挙げられるだろう。
安田レイは、英語と日本語が堪能なバイリンガル。先日発売されたばかりの「Not the End」は、彼女の15枚目のシングルだが、驚くのは、これまで全シングル曲を含め、29曲がタイアップに起用されていることである。そのジャンルも実に幅広いが、とりわけ今回の「Not the End」は注目度が高い。この結果は、それだけ彼女の歌声がマジョリティなものである証拠とも言えるだろう。彼女の歌声の魅力は、異なるファクターをワンフレーズで聴き手に感じさせるところだと思う。例えば、儚さと力強さ、孤独と包容力など。さらに、意識的にか無意識かはおいておいても、言葉の発音により声音までも変えられるところも、他人にはなかなか真似できない大きな武器だろう。
miletを世の中に浸透させたのは、2019年の日本テレビ系連続ドラマ『偽装不倫』の主題歌に起用された「us」だろう。楽曲により、異なる表情を見せる彼女の歌声は、包容力というよりはつい引き付けられるような吸引力を持っている。1曲の中に、声だけで陽と陰のコントラストが感じられるのも個性だ。
Uruは、ドラマ『コウノドリ』主題歌「奇蹟」、ドラマ『中学聖日記』主題歌「プロローグ」で認知されると、2020年“日曜劇場”として放送された『テセウスの船』(全てTBS系)で主題歌「あなたがいることで」を担当し、知名度を一気に上げた。彼女の歌声は、声質はクリアで優しいが喉の反響がドシンと響く珍しいパターンだ。何といってもその魅力は倍音のバランスだろう。低音、中低音、高音……と、水面に水滴の輪が広がるように綺麗な倍音を響かせることが出来る。繊細に囁くように歌うパートでも、倍音が響くのである。