ドラマ『君と世界が終わる日に』挿入歌、安田レイ「Not the End」が果たす役割

ドラマ『君セカ』挿入歌が果たす役割

 日本テレビとHuluが共同製作したことでも話題のドラマ『君と世界が終わる日に』(毎週日曜22時30分)が現在放送中だ。本作は、地上波ゴールデン帯の連続ドラマとしては日本初となる本格ゾンビサバイバル。“生ける屍”が街にあふれ、突如として死と隣り合わせの世界へと変わり果てた現代を舞台に、生き残りをかけて戦う人々の姿を描く。竹内涼真が主人公の自動車整備工・響を、恋人の来美役を中条あやみが演じ、混乱のさなか離れ離れになったふたりのラブストーリーも展開。なぜゾンビは現れたのか、世界はどうなってしまったのか、謎が謎を呼ぶ物語は回を重ねるごとにヒートアップしている。

 そんなドラマの挿入歌が今話題になっている。この挿入歌の安田レイ「Not the End」が毎回、各話のクライマックスに流れ、シーンを盛り上げるのに一役買っている。楽曲はドラマのための書き下ろされた曲で安田自身が作詞を手がけた曲。制作にあたって安田は「日常を奪われた私たちの今の毎日は、不安で、孤独で、悪夢のよう」と、コロナ禍で生活が一変した現在に触れ、「その感情は、このドラマの物語ともとてもリンクする部分が多いと思います」とコメント。登場人物たちの過酷な運命と終わりの見えない感染拡大の中を生きる私たちの姿を重ねて書いたことを明かした。その上で、「たくさんのものを奪われて、色んな物の本質が見えてきました。素敵なお家がなくても、この仕事がなくても、私たちは生きていけるけど、大切な存在がいなくなったら、私はどう生きていけばいいかわかりません。それこそが本当の悪夢」と語り、「怖いけど、大切な人と共に生きていきたい。そんな強いメッセージを届けたいです」と熱い決意をにじませる。数年前には想像もつかなかったような事態が世界中で起こっている今と、ドラマの中の終末的な世界観が不思議なシンクロを生み、楽曲の強度を高めたかたちだ。

 〈Tell me this is Not the End〉という歌い出しからすでに、緊張感に満ちたハスキーボイスが耳を貫く。印象的なストリングスの旋律が導くメロディは、時に静かに時に激しく緩急を伴って展開し、その歌声を一層印象的なものにしている。安田レイの歌声というと、躍動感と生命力にあふれたパワフルさがひとつの魅力だが、本作ではそれに加えシリアスさが増し、孤独な世界で大切な人を思って叫んでいるかのような切実さに満ちている。そしてそれは、極限の状況下に置かれた登場人物たちの心情にも重なる。中でも〈願いが一つだけ 叶うなら 怖くても守りたいよ 君との優しい明日を〉というサビの歌詞は、響と来美の葛藤そのものだろう。しかし、楽曲に表れているのは決して絶望だけではない。安田が語るように、かすかな希望を手に力強く明日に進もうとする決意もしっかりと込められている。それは楽曲が終盤に差し掛かるにつれ高まり、聴く者の胸にも迫ってくるかのようだ。ひとつの曲の中で揺れ動く感情を見事に表現し、物語の世界観を表現した「Not the End」は安田レイというシンガーの真骨頂とも言える。

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