『恋落ちフラグ』インタビュー
松井珠理奈がSKE48として残すラストメッセージ 11歳デビュー、青春捧げたアイドル人生の成功と挫折を語る
「玲奈ちゃんがいてくれると安心感があった」
ーーどんな思い出も楽しいことばかりではありませんが、珠理奈さんの場合抱えているもののスケールが大きいぶん、ダメージも大きかったのではないかと思います。取材する側としては、2015年、松井玲奈さんが卒業を発表した頃も辛そうでした。
松井:いやあ……すごく辛かったです。近くにいる方たちは一番思っていたかもしれないですね。あのときは、自分の半分が無くなったみたいな感覚だったんです。玲奈ちゃんがいることでライバルという構図になって、意識されて辛いときもあったけど、自分が出られないときに玲奈ちゃんがいてくれると安心感があったんです。それをこれから全部で背負っていかないといけないのか。勢いが落ちたと思われたらどうしようと不安ばかり抱えていました。あとは、玲奈ちゃん、誰にも相談していなくて。それが悲しかったのもあります。
ーー同期でやってきたけれど。
松井:確か、卒業発表の前日に連絡がきたんです。1期生のLINEに。明日発表する予定だったけど新聞の記事が出ちゃうからという連絡で、そこで私がうえー! って泣いて、「なんで! なんで言ってくんなかったの!」って大泣きして子ども過ぎて(笑)。それも悲しかったなっていうのもありました。
ーーどんどん痩せていったし、はたから見ていても当時の記憶ってあるんだろうかと思うくらいでした。
松井:あ、あんまりないかもしれない、そういえば。完全に心ここにあらずでした。MV撮影のときもダメダメで、(牧野)アンナ先生に「しっかりしろ!」と叱られたのは覚えています。
ーーそんなふうに、辛い状況も多々あった12年だったと思います。その都度、どうやって乗り越えてきましたか? お母さんの言葉も大きいとは思いますが。
松井:それはやっぱり、SKE48が好きという思いがあるからです。それが一番ですね。あと、誰が卒業しても残っているメンバーがいるし、ちゃんと継承していかないといけないなと思っていたので。グループとしての愛があるから、グループにできることまだあるなって。そこが根っこにありますね。
ーーあとは、ファンのみなさんの存在も強いですよね。珠理奈さんは。
松井:そうですね。昔はファンのみなさんに甘えられなくて弱音を吐けなかったんですけど、そんな私を見てファンのみなさんが「僕たちに甘えてください」「何でも聞くから頼って」と言ってくれるようになって。弱みを見せることってあんまり恥ずかしいことじゃないのかなと思わせてくれました。だから……うん、そういう言葉をかけてくれたファンの方がいたっていうのは大きいですね。ファンの方とも一緒に私自身やSKE48を作り上げているんだなと感じています。
ーーそれに、「好き」とちゃんと伝えてくれるファンがいるのは、嬉しいだろうなと。
松井:確かに! みんな、すごく優しいんですよ。恋人みたいに見ている人もいるかもしれないけど、私のファンの方って家族目線で“見守ってくれている人”が多いんですよね。
ーー2020年は交流する機会がガクンと減ってしまいました。久々に会えたときはどうでしたか?
松井:久々に顔を合わせたのがオンラインだったんですけど、握手会や公演が減って「生きる活力が無くなった」と落ち込んでいる人が思っていた以上に多いんだと気づきました。ただ、それを知ったことで改めてそんなに私たちのことを思ってくれていたんだって愛がわかりましたね。寂しい思いをさせてしまったのは申し訳なかったけれど、それが伝わったのは嬉しかったです。「やっぱり生で会えるほうがいいわー」とも言ってましたけど(笑)。
ーー以前の距離感で触れ合える日が早く来てほしいです。その日がもし来たら、どんな姿を見せたいですか? 例えば、コンサートで。
松井:できる限り、一人ひとりの顔を見たいですね! ファンのみなさんには気づかれているんですけど(笑)、普段は前方の席にいる方たちではなくて後ろのほうにいる方たちを見るように心がけているんです。前に座っている人って、前というだけで嬉しいと思うから。だけど、今度は前の人たちにもちゃんとレスを送って(笑)。見てるよ、みんな見てるよって言う気持ちで臨みたいです。
後輩に残したい格言は「誰かが必ず見てくれているよ」
ーー最近の珠理奈さんは、後輩メンバーとの交流が増えていると感じます。以前も喋らなかったわけじゃないけれど、そこまで多くなかった気がしていて。
松井:そうなんですよ。「『珠理奈さん』じゃなくて好きなように呼んで」と伝えたら、「おじゅり」とかいろんな呼び方をしてくれる子が増えて、そこから距離が縮まりました。あと、以前はアドバイスのための会話が多かったんですけど、プライベートや楽しい話をする機会は少なかったんです。それだと距離が縮まらないよな、距離が近いほうがアドバイスも響くよなと思ってからはだいぶ会話が増えたと思います。
ーー卒業を前に、後輩たちに伝えたいことは伝えられましたか?
松井:そうですね! ほぼ伝えられたと思います。センターをやってほしいと思っている子が今何人かいるので、そういうメンバーには思いを伝えたりもしました。「もしなったら、こういうところに気をつけてほしい」とか「もっとガンガンいってもいいんじゃないの?」とか(笑)。
ーー頼もしいです。そんな珠理奈さんに、改めて聞きたいのですが12年間で培った“珠理奈イズム”って何ですか?
松井:なんだろう? 「いつも本気」かな。
ーー根本はそこですね。珠理奈さん自身に変化はあったけれど。
松井:そうですね。なんでも本気です。遊ぶときも真面目にやるときも本気。プラス、楽しむことも大事ですかね! 最近だと。私は頑張りすぎて辛い思いをしてしまったので、楽しむことも大事だと今は思っています。
ーーでは、そのイズムを継承して欲しいメンバーというと?
松井:一番継承できそうなのは熊ちゃんですね! ファンの人が見えない部分なんですけど、リハーサルやレッスンのとき、熊ちゃんは絶対に手を抜かないんです。それでいて、抜けているところもあるじゃないですか。滑舌が悪いところとかすごく可愛い。そういう、真面目な部分もあるけれどいてくれると和む存在感がいいなと。SKE48らしい元気でパワフルなところもありますからね。
ーーこれからの熊崎さんも楽しみですね。
松井:ただ、熊ちゃん含めメンバー全員に言いたいのは、「良いと思うところは真似して、嫌だと思うところは真似しないで、自分らしくオリジナリティ出してやってほしい!」ということ。誰かの真似をすると二番煎じになりそうと思うかもしれないけど、それぞれのいいところを真似して学ぶってすごくいいことだと思うんです。オリジナリティはその上に成り立つはずです。
ーー最近のことについては、とくに明るく話してくださった印象です。それだけ、今のSKE48の雰囲気がいいのでしょうね。
松井:はい。「恋落ちフラグ」のMVもそうでしたけど、みんな全力で踊るんですよ。それを見て、私泣いちゃったんです! 「これだよな、SKE48!」って。そう、久々に思えたのでいいタイミングだったのかなと。これを機に、ますますまとまってくれたらいいなと思います。
ーーそんな後輩たちに、珠理奈さんが残したい格言は?
松井:わー難しい!! 難しいけど……やっぱり「誰かが必ず見てくれているよ」ですかね。「努力しているのになかなか前に行けない」とネガティブに考えがちだけど、頑張っている姿は必ず誰かが見てくれている。なので、諦めずに頑張ってほしいです。
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